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人造勇者の理想郷  作者: 鈴花雪嶺
第一章 戦争での出会い
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テンプレだらけの冒険譚

 木の枠に漆喰のような壁。大通りに面した家々の前には数々の露店が並んでおり、それぞれの露店の店主が大声で呼び込みをしていた。食べ物、武器、装飾品。様々な商品が並ぶ道を俺こと柏木勇也は歩いていた。


 俺が目指しているのは冒険者ギルドだ。雑用からモンスター駆除まで何でもこなすところというイメージがあるが、同時に実力至上主義というイメージもある。まあ、俺は改造で強くなったわけだし多分大丈夫だろう。


 俺が召喚されたこの国――――――科学魔術国サムマジスは科学と魔術の両方が栄えている国で、この異世界で唯一科学という概念がある国らしい。その科学力は現代日本を遥かに超えている。


 この国は魔術を研究する魔術側と科学を研究する科学側があり、両方に王がいるが、彼らは兄弟らしい。元々は仲の良い兄弟で、科学側と魔術側も研究や開発などを手を取り合って行っていたらしいが、数年前に魔術側と科学側を分けるように大きな谷ができてから、科学側と魔術側の仲が急激に悪くなって現在冷戦状態らしい。まあ、これも改造のときに得た知識なのだが。


 冷戦状態とは言ってもいつ戦争になるかわからない。そんな中俺が召喚されたということは、その時はもうすぐそこということだろうか。


 考え事をしながら歩いていると案外すぐ時間はすぎるもので、俺は冒険者ギルドにたどり着いた。


 なんとなく科学側には行きたくなかったので魔法で谷を超えて魔術側のギルドまで来たのだ。世界中の一般的な知識を得た俺は迷うことなくたどり着く事ができた。


 ギィィィィ、という音を立てながら扉を開くと、チラリと大勢が視線を向けてくる。それだけなら普通だ。人間は音がした方を気になって見てしまうものだ。だが、ここは泣く子も黙る冒険者ギルド。これだけで終わるはずがない。


 「おおぉい、がきぃ!ここはお前が来るようなところじゃあねぇぞぉ!」


 顔を真っ赤にしてベロンベロンに酔っ払ったおっさん冒険者がテンプレなセリフを吐いてきた。思わず「うわぁ」と声が出てしまう。あまりにもテンプレすぎるというのもあるが、真っ昼間から飲んだくれているし、酒臭かったというのもあるだろう。


 「ああぁ!てめぇなにさまじゃごるぁ!おもてでろやぁ!」


 イントネーションがおかしい気がするが、俺は言われた通り外に出る。『あいつ、終わったな』という視線を感じながら入ってきたばかりの扉から外に出る。


 「ここは冒険者ギルドです。腕っぷしがないやつはきちゃいけない場所ですよね?」


 「よくわかってるじゃねえか!おまえがまだここにくるべきじゃなかったということを身をもって教えてやる!」


 ただの飲んだくれかと思ったが、流石はプロの冒険者だろうか。雰囲気が変わった。おっさんは腰に下げていた刃幅の大きめな剣を鞘に収まったまま構える。対する俺は武器は魔力銃しかない(なんでもいくらでも入るような収納魔法にしまってある)。あれは殺傷能力が高すぎるためボクシングのように拳を構える。


 「舐めてんのかガキ!」


 叫びながら男が踏み込んでくる。一瞬で距離を詰めつつ、肩上に振り上げていた剣を一気に振り下ろしてきた!―――――――のを軽く躱し、すれ違いざまに背中にチョップを叩き込む。右目に埋め込まれたカメラが相手の筋肉の収縮、視線、呼吸、空気の流れなどから未来予知とも言える行動予測をしたからだ。


 「グハァ!?」


 おっさんは地面に倒れ込んだ!


 何が起きたのかわからないといった様子の男に向かって、


 「ギルドが弱肉強食の世界なんてこと分かってんだよ。分かってて来てんだ。そう簡単に死ぬつもりはねぇ」


 男は「そうか」とだけ言うと、ゆっくりと立ち上がり、装備を整え始めた。


 攻撃するときは軽くやったからおっさんは怪我の心配はないだろう。地面にぶつかったときに鼻血が出たくらいだろう。


 あのおっさん、俺が死ぬのを止めようとしてくれたのかな。なんてことを考えつつ、俺は再び冒険者ギルドに入る。


 さっきよりも多くの視線を感じながらカウンターへ行く。


 「冒険者登録をお願いします」

 受付嬢に来た目的を伝えると、丁寧に対応してくれる。


 「はい。新規登録ですね。では………」


 

 

 長かった。受付嬢から言われた話をかいつまんで言うと…………


 依頼を受けて完了したら報酬がもらえます。失敗したら違約金を払わないといけません。やらかしたら活動できなくします。冒険者どうしの争いはギルドが不利益を被るとき以外不干渉です。難しい依頼を達成すればするほどランクが上がります。ランクは紙、木、鉄、銅、銀、金の順に高くなり、金になるとなにか一つ特権を得られます。ギルドカード(登録したときもらった)をなくすと再発行にお金がかかります。


 といったことを言われた。まあ、テンプレ通りだろう。


 とりあえず依頼を受けてみよう。これまたテンプレの依頼コーナーに行き、コルクボードに貼られた依頼書を見る……が、ここにある大量の依頼を確認するのは面倒なので、ここは便利魔法(アナライズ)に頼ることにする。


 せっかくだから討伐依頼がいいよな。ついでに自分の実力も確かめたい。


 『解析(アナライズ)!』


 俺は無詠唱でアナライズを発動させ、解析結果を確認する。今回はパネルは出さずに俺の視界に情報を追加表示した。俺にだけ見える吹き出しのようなものだと思ってくれればいい。


 解析結果を討伐依頼に絞る。すると、半分ほどの吹き出しが消えた。更に、一番難易度の高いものに限定する。吹き出しが一つになった。


 アナライズを解除してその吹き出しが示している依頼を読んでみる。街から離れた場所にある洞窟にブラックスネークという体長二十メートルほどの黒いヘビが住み着いたので討伐してほしいというものだ。報酬は銀貨一枚(一万円くらい)。命をかける討伐で、ギルドで一番難しい討伐依頼なのに報酬がこの値段って割に合わなすぎだろ!と思いつつこの依頼を受ける。


 「この依頼受けたいんですけど」


 「はい。かしこまり……えっ!?これ受けるんですか!?あなたさっき冒険者になったばかりですよね?流石にこれは……」


 「だいじょうぶです。たぶん。いいからお願いします」


 半ば強引に依頼を受理してもらい、俺は脳内マップで依頼の洞窟を確認。その前に転移する。自重?知るかそんなもん。


 「へ?」


 転移の直前、間の抜けた声が聞こえた気がしたが、きっと気のせいだろう。




 街から離れたところにある洞窟。今回の討伐対象がいるこの洞窟の眼の前に転移した俺は、収納魔法から魔力銃を取り出し、警戒する様子もなく洞窟の奥へと進んでいく。入り組んだ洞窟の中を(アナライズでブラックスネークの場所を探したおかげで)迷うこともなく進んでいく。どうやら開けた場所に十体ほどが固まっているらしい。そこまで歩くのが面倒になり、俺はブラックスネークたちの眼の前に転移する。


 「!?キシャァァァァ!!」


 一瞬驚きはしたもののすぐに威嚇してくるヘビたち。そのうちの一体の眉間に容赦なく発砲する。パァン!という発砲音とともに一体のヘビが眉間に風穴を開けてその場に倒れ込む。


 それを見たヘビたちは「キシャァァァァァァア!!」と激怒した様子で一斉にこちらに向かってくる。俺は魔力銃を収納魔法にしまうと、向かってくるヘビをすべて殴り飛ばした。


 殴られたヘビたちは洞窟の壁まで吹っ飛んで、そのまま壁に激突した。


 「グギジャァァァァァ!?」


 と悲鳴を上げるヘビたち。その後ろから残りのヘビたちが襲いかかってくる!それを右目の行動予測で避けつつ、右手首にある折りたたまれたツメのような形の二本の刃を出し、迎撃を試みる。


 俺は関節に仕込まれたローラーのようなもので、生物の動体視力を超える超スピードで動くことができる高機動モードに移り、ヘビとの間合いを一瞬で詰め、その首を言葉の通り目にも止まらぬ速さで落としていく。


 その間に動けるようになった殴り飛ばされたヘビたちがこちらに向かってくる。


 「お前らから着想を得た魔法、試させてもらうぜ!」


 俺は冷静に振り返り、向かってくるヘビたちに向かって手をかざし、魔法名を叫び、魔法を発動させる。


 「猛毒の大蛇(ヴェノム・サーペント)!」


 かざされた手から紫色の全身猛毒でできた大蛇が襲いかかってくるブラックスネークと同じ数出現し、正面からぶつかり合う!――――――ように見えたのは一瞬で、紫の蛇に触れた黒い蛇は一瞬でその体を骨も残さず溶かされた。ヘビを溶かし尽くした紫の蛇は壁にぶつかって壁を溶かす前に霧散する。


 


 依頼を達成した俺は冒険者ギルドの中に転移した。


 「依頼終わりました」


 「えぇっ、もうですか!?何かの間違いのはず……あれ!?依頼書が反応しない!?なんでぇ!?不正できないような魔導具になってるのに!」


 「いやぁ、なんでと言われましても……。そういえば、倒した魔物の素材って売れますか?」


 「え?まあ、売れますけど……」


 「じゃあ、これお願いします」


 売れると言われたので収納魔法にしまっていた数体のヘビをだす。 


 「えぇぇぇぇぇぇえ!?な、な、な、なんですか!?なんなんですか!?」


 「これはどういうことだ」的な事を言われまくるが、ガン無視して「早く買い取ってくれ」と急かす。


 受付嬢はまだ何か言いたげだったが、諦めて買い取りを担当している鑑定士を呼んだ。


 「これはまた……すごいですね。ここではあれなので裏庭に行きましょうか。ついてきてください」


 現れた鑑定士は二十代後半のように見えるが落ち着いているので実際の年齢はもっと上かもしれない。


 ギルドの裏庭に着くと早速鑑定が始まった。収納魔法からヘビを出す。ふむふむ、おぉ、なるほど……、などと言って鑑定している鑑定士。


 「これ全部で銀貨八枚ですね。でも素材にならない肉などの引取と素材剥ぎ取りの手数料と人件費を差し引いて……銀貨三枚になります」


 まるごと買い取ってくれるわけではないのか。なら……。


 俺は鑑定してもらったヘビたちを全て取り込み、素材になるものとならないものに分けて再び出す。これは魔法ではなく機械が行っているので明確なイメージができなくても十分な働きを見せてくれる。改造さまさまだ。


 「おお、これなら銀貨八枚、いや、九枚で買い取りましょう!」

 

 思ったより状態が良かったのか買取価格が上がった。これを断る理由はない。


 「売った!」


 俺は、初めての依頼でいきなり小金持ち(主観だが)になった。

今回も読んでくださりありがとうございます。不定期投稿ですが、次回も読んでくださると嬉しいです。

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