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人造勇者の理想郷  作者: 鈴花雪嶺
第三章 人造勇者の理想郷
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マジ話は幸せの後に

 「ユウヤ君。君に見せたい……いや、見せなければいけないものがある。ユエナと結婚するからには君にもこの家の……ユグド家の者だけが知り、守り抜く秘密を知らなければならない。ついてきなさい」


 「はい」


 これまでとなんだか雰囲気が違う。あったばかりは親の仇でも見るような視線を向けてきて、試練を中断されたときは柔らかい雰囲気になって、今は真剣で緊張感のある雰囲気だ。


 アルベルトについていく。


 家を出て、敷地内を通り、家の横の道から森の中に入っていった。


 魔界は空も赤く、全体的に赤みがかったように見えるが、そんな魔界にも植物が生えているということに驚いた。


 「こんな世界に植物が生えていることに驚いたかい?」


 「え?は、はい……」


 「人間たちの世界から比べたらこっちの世界は荒れているかもしれない。結界の外に出たら命の保証はない。でも、意外といいところなんだ」


 「はい。皆さん愛されていましたね。人が……あたたかかったです」


 「そうか」


 アルベルトはどこか嬉しそうだった。


 魔界の森は赤黒い魔界の土から紫色の木が生えており、木の葉も紫色だった。ところどころに枯れたような色合いで枯れたようにしなびた草が生えている。


 しばらく進むと、葉の無い木が出てきた。それは進むごとに数を増やしていく。


 「着いたぞ」


 そこは、泉だった。円形に開けた場所の真ん中に泉があり、その真ん中には小島のような陸地があり、そこに何かがある。小島に続く橋のように地面が続いていた。


 「これは……」


 「ここはユグドラシルと呼ばれている。我々ユグド家の者しか立ち入ることが許されない、この世界の全てがある場所だ」


 「ユグドラシル……」


 話しながらもアルベルトは浮島へと近づいていく。


 近づくにつれて浮島にあるものがはっきりと見えてきた。


 それは、紫色の水晶だった。浮島の中心で浮いているそれは異質な雰囲気を放っているが、俺の右目の魔力可視化には俺と同等かそれ以上の魔力が目の前の水晶にあることを示していた。三十センチくらいの大きさなのにこれだけの魔力を含んでいるなんて……これが魔界の全てということは間違いではないようだな。


 「使い方を教えよう。君ももう使えるはずだ。何かあったときは君も使うかもしれない。よく覚えておきなさい」


 アルベルトが水晶に手をかざすと水晶が紫色の光を放ち、魔界の様子を映し出した。


 「これで映し出された場所を好きなように変化させることが出来る。想像するだけでいい。ユグドラシルは自分が思った通りの動きをしてくれる」


 水晶に映る景色が新幹線の車窓から見る景色のように速く移り変わっている。


 「このように街や街の周辺の様子も確認することが出来る」


 なるほど。これで俺の試練の様子を確認していたんだな。あれ?ということは、これを使えばのぞきなんて簡単に……いや、やめよう。変なことは考えるものではない。


 「まあ、こんなところだ。この水晶は世界の全てであり魔界の核だ。これが壊れたらこの世界も一緒に消滅し、この世界の生物も消える。しかも、これは誰にでも使えるのだ。もう使える、とは言ったが、別段資格は必要ない。だから、私たちユグド家が守り、管理しているんだ。君にも手伝ってもらうぞ」


 「はい」


 帰り道、アルベルトはユグドの家について話してくれた。


 はるか昔、この世界が出来た時は街などなくユグドラシルのあるあの空間と荒廃した大地しかなかった。


 そこに、魔物が生まれた。その魔物は生存競争を勝ち抜くために、厳しい状況で生き抜くために、強い力をつけていった。


 そんななか、ある魔物が新たな進化を果たした。その姿は異界の人間という生物のようで人間のような言語を使い、文字を使い、文明を築いた。


 その進化した魔物たちはあるときユグドラシルの真実を知り、この場所を守ろうと街を作り、ユグドラシルを守りながら数を増やしていった。


 創設メンバーはあれにユグドラシルという名をつけ、そこから取り、ユグドと名乗った。


 その最後の生き残りの末裔が今もユグドラシルを管理している。


 だが、進化した魔物がユグドラシルの存在に気付く前にそれに気づいた魔物たちが、世界を超えて別の次元に住み着き進化した。それが、人間の世界にいる魔物……かもしれない。


 ……ということらしい。


 なんかすごい話を聞いた気がする。


 ここまで言われたら……俺も、隠し事はできないだろうな。

今回も読んでくださりありがとうございます。高評価、ブックマーク登録もありがとうございます。いつも励みになっています。

次回も金曜日の18時に投稿します。

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