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人造勇者の理想郷  作者: 鈴花雪嶺
第三章 人造勇者の理想郷
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試練は続く

 家に着くと、エレナさんがポーションを飲ませてくれた。飲んだ瞬間傷が体の内側のものまで全て回復したので相当高価なものだろう。


 「ユウヤ……なんで……?」


 うまくは言い表せないが、なぜこんなけがをして帰ってきたのか、という意味以外にもいろいろな意味が含まれていそうだな。


 ユエナの今にも泣きそうな表情が今の心情を如実に表していた。


 「ユエナが言うには君は化け物レベルに強いらしいが……そうは見えないな。ユエナがウソを言っているとは思えない。なぜ手加減した?」


 アルベルトがキツい視線を向けながら聞いてくる。ウソは許さないというように、全てを見透かすように。


 「俺は……ユエナにいつも言ってるけど本当に弱いんです。あれが俺の本当の実力なんですよ。俺の強さは言ってしまえば装備の強さのようなものなんです」


 「では、なぜ無理難題を吹っ掛けられたのにその力を使わなかったんだ?」


 「惚れた女の子との結婚を許してもらうための試練で、装備の力に頼りたくなかったんです。これは俺の実力を測るための試験だと思ったから……俺の本来の力で、死ぬギリギリまでなんとかしてみたかったんです」


 「ユウヤ……」


 ユエナには……いや、ほかのみんなにも心配をかけたかもしれない。でも、俺はこの力に頼らないと女の子一人守れないような男にはなりたくない。


 「そうか……。少しずれている気がしないでもないが、そこまで真剣にユエナのことを考えてくれているとは……」


 「なにか?」


 「いや、なんでもない」


 アルベルトがなにかぶつぶつ言っているように聞こえたが、何と言っていたのだろう。こういうのってなぜか気になって忘れるまで時間がかかるんだよな……


 そんなどうでもいい思考をぶった切るようにアルベルトからお誘いがかかった。


 「外へ出ろ」


 「え?」


 「自分で言ったんだろ?力を測るための試練だったと。あんな戦いじゃ全然力が測れん。お前の素の力なんてどうでもいい。武器も含めて持っている力だ。お前の本気を見せてもらう」


 「わかりました」


 家に戻ってからは力を全て開放してある。あの傷も魔法で直せって?尾の戦いで負った傷は魔法で直したくなかった。全て……傷の治癒まで全て自分の力でやりたかった。でも、あんな考え方はなかったな。この力も俺の力……か。


 「おいどうした!行くぞ!」


 「は、はい!今行きます!」


 俺とアルベルトが向かい合って武器を構えているのは屋敷の裏庭に作られていた稽古場という名の広い空き地だ。アルベルトは剣を。俺は手首にある爪刃を構える。


 「お前の体……どうなっているんだ?」


 「実は自分でもよくわかってないことの方が多くて……」


 「よくわからんが……準備はいいか?」


 「はい。いつでも」


 「全力でかかってこい」


 「もちろん」


 これは俺の全力……能力を含めたすべてを見せるための戦いだ。すべては見せられなくても、俺の力の一端だけでも全力で見せなければいけない。


 審判はユエナがやってくれる。


 「用意できた?じゃぁ、よーい、始め!」


 ユエナの合図でアルベルトは剣に黒い炎を纏わせ構え、指をクイックイッと動かした。そっちからこいよ、ということだろう。だが、それでは一瞬で終わってしまう。全力を出せない。


 俺も指をクイックイッとやってアルベルトに行動を促した。


 アルベルトはニヤッと面白い、とでも言うように笑うと、剣をその場で降り下ろした。


 剣の黒炎がこちらに迫ってくる。だが、避けない。避ける必要がない。これは魔法だ。魔法じゃなかったら何なのだろう。俺と俺の装備には魔法無効、物理攻撃無効、攻撃無効、魔法強化、状態異常無効、再生が付与されている。俺の体内にもそこらの武器より硬い金属板が入っているので魔法付与がなくても基本どこを攻撃されてもダメージはない。仕組みはよくわからんが、普通に血は出るんだけどな……。いや、深く考えるのはやめよう。なんか怖くなってくる。


 「ユウヤさん!」


 「お母さん、大丈夫。ユウヤは強いから」


 エレナさんの心配する声が聞こえる。ユエナはそんなに心配してないな。さすが、俺のことをよくわかってる。


 俺の体を黒炎が包み込む。炎はすぐに収まり、周りからも隠れていた俺の姿が見えるようになる。


 「驚いたな。傷一つないとは」


 「もう終わりですか?」


 「ほざけ」


 今度は接近戦だ。行動予測にはアルベルトが一気に距離を詰め、黒い炎を纏った剣で連続で切りつけてくるのが見える。それを強化された身体能力をフルに使って全て避ける。


 「はぁっ!!」


 アルベルトが鋭い突きを繰り出すが、それもバックステップで避ける。だが、剣の先から纏っていた黒い炎が伸びてきて俺を襲う。だが、それも含めて行動予測でバレバレだ。


 右手の爪でその炎を切りつけ、それと同時に魔法で黒い炎を全て一瞬で消し飛ばした。


 アルベルトは距離をとらず、更に距離を詰め、一瞬で剣に黒炎を纏わせ直し、さらに剣戟を繰り出す。


 今度はそれを避けずに全て受けるが、周りから見たら棒立ちの人間を容赦なく攻撃するヤバイやつにみえるだろう。


 ひとしきり攻撃して全く効果がないことを理解したアルベルトはバックステップで距離をとる。


 「もういいだろう?そっちの攻撃も見せてくれよ」


 そう言われては仕方ない。


 高機動モードに入り、一時的に爪に一切のダメージを与えられなくする魔法をかけ、人間の動体視力を超える速度で背後に回り込み、連続で切りつける。


 「がぁぁぁぁぁあ!……あれ?切られてない?」


 「魔法でダメージが入らないようにしました」


 「そんな魔法本当にあるのか?」


 「いろんな魔法が使える装備みたいなものがあるんですよ」


 「はぁー」


 アルベルトは大きなため息を吐くと、どこか満足したような顔を浮かべる。


 「負けだ負け!私の負けだ!降参するよ。ユエナの言う通りだな。ユウヤ君、君は強い。認めよう」


 「ありがとうございます!」


 「ユウヤの勝ちだね」


 ユエナも近づいてきた。


 「ということは……」


 「あぁ。もう私からは何も言うまい。娘を、頼むよ」


 「ありがとうございます!」


 「あらあら。結婚式の準備をしなくてはならないわね」


 「お母さん……」


 晴れて俺とユエナの結婚が認められた。うれしい。こんなにうれしいと感じたことはこれまでにない。


 抱き着いてきたユエナを優しく抱き返す。俺は今、幸せだ。

今回も読んでくださりありがとうございます。高評価、ブックマーク登録もありがとうございます。いつも励みになっています。

あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!今年最初の投稿です。去年は不定期投稿から定期投稿に変えた年でもありました。このまま進化し続けていきたいです。

次回も金曜日の18時に投稿します。

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