試練再開
今の状況を簡単に説明すると、死ぬ。絶体絶命なんてものじゃない。
数えてはいられないが、先程よりも多いワイバーン、首か二つある黒い犬……オルトロスと、それに付き従うような黒い犬……ヘルハウンド。さらに球体状のものにたくさん人間のような顔が付いているカーススピリッツ。何よりも数が多い。
どんどん集まってくる。能力を制限していたら到底太刀打ちできないだろう。だが、同時に俺は思い出した。ユエナと特訓した日々を。
なぜ初めから気づかなかったのだろう。体は痛む。動きも鈍い。でも、やるしかない。ここでやらなきゃいけない気がする。
収納魔法に入っている武器を全て地面に落とし、短剣を二本拾い、構える……のを待たずに周りのモンスターが突っ込んできた。
モンスターたちは俺を喰おうとしてほかの種族と争っている個体もいる。こちらにとっては好都合だ。
短剣を拾いつつ体を回転させ突っ込んでくるモンスターの攻撃の威力を押さえつつ攻撃を入れる。
やはりダメージは入らない。魔界の魔物は相当固いようだ。だが、俺にダメージは入らない。
いける!これならいける!
攻撃をいなしつつカウンターを入れ、短剣で切るのではなく短剣をたたきつけるように使いながら、時には殴ったり蹴ったりして戦う。
何とか持ちこたえているが、体力の消耗が激しい。怪我が余計に体力を奪う。
「グッ!?」
いなしきれずに攻撃が腕をかすめる。その影響で動きが鈍り、もう一撃を受ける。
そこからはどんどん態勢が崩されていった。
だが、このままでは終わらせない。攻撃を喰らいつつも攻撃を捌くことはやめない。
「うぉぉぉぉぉお!!」
全力の先の全力、超全力を出し切るように雄たけびをあげ、魔物の群れに突っ込んでいこうとした時、目の前が黒で塗りつぶされる。
なんだ?
黒いものの飛んできた方を見ると黒い炎を纏った剣を構えたアルベルトさんが立っていた。
一撃であの量の魔物を消し飛ばす威力なんて……これが魔界で一番偉い?人の力なのか……?
救援?がきたことで力が抜けその場で気絶しそうになるが、まだ一日も経っていない。それなのに助けられた挙句即気絶なんてしたら結婚なんて到底させてもらえないだろう。
「きたまえ」
アルベルトさんは俺の腕をつかむとよろけながら歩く俺を引っ張りながらユエナの家へと向かった。
歩く途中、アルベルトさんが質問をしてくる。
「いろいろと言いたいことはあるが……まず、一つだけ聞かせてくれ。君が使っていた剣術は私が編み出した我が家の剣術だ。なんで人間が使って……いや、知っている」
不正をしたらわかるというのはどうやら本当のようだ。
「ユエナさんに教えてもらったんです。この通り、私は弱いですから。少しでもユエナさんを助けられるようにと」
「そうか」
それ以上は何も聞いてこなかった。ただ、家が近くなってきた頃にポツリ、と一つだけこぼした。
「少しは肩の力を抜け。普段人に接するように接してくれればいい。そうでないと……私が悪人みたいではないか」
そう言ったアルベルトの顔は柔らかい笑顔を浮かべていた。
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次回も金曜日の18時に投稿します。




