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人造勇者の理想郷  作者: 鈴花雪嶺
第三章 人造勇者の理想郷
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出会いはどこにでも

 熱い……体が焼けるように熱い……同時に体の深い部分がどんどん冷たくなっているのを感じる。俺の目に映るのは、ボロボロになった俺の姿。あぁ、これは夢なんだ。理解はできるが目を覚ますことは出来ない。ここで起きたらまた激痛が襲ってくるだろう。それなら、いっそこのまま眠り続けるのもいいかもしれない。


 夢の中の俺も意識を手放そうとした時、体が少し楽になる。なんだ……?


 辺りの状況を探ろうとしてみると、話し声が聞こえる。話し声……?こんな魔界の結界の外に?


 これくらいのことには気づけるくらいには体も良くなってきた。


 周りの状況を確認しないと……。こんなところで死んでられない。ユエナを残していくことは出来ない。骨折?打撲?知るかそんなもん!これくらいどうにかできなければ女の子一人守れない!


 バッ!と目を開けて飛び起きようとしたが……


 「あぁぁぁああ!?いっっったぁあ!?」


 体が悲鳴を上げて起き上がれなかった。激痛を体中で感じながら視線だけであたりの状況を探る。


 タープのようなものが幾つも張られ、周りには軍人のような人が結構な人数いる。周りには血の跡と魔物の死体がたくさんあり、この場所で何度も戦闘があったことを物語っていた。


 「おや、起きましたか?」


 俺に話しかけてきたのはどこかの国の騎士団のような服を着ている若い男。見た感じは人間に見えるが、ここは魔界だ。人間がいるわけがない。痛みに悲鳴を上げる体を無理やり起こし、拳を握って構える。


 「お前たちは何者だ。人間ではないだろ」


 「ははは……お見通しですか。そういうあなたは人間のように見えますが……本当に人間ですか?」


 こいつ……できるな。俺が人間でありながら普通の人間ではないということに気づいていやがる。こっちが情報を出すのを待ちつつ向こうからは情報を出す気はない。それに、俺を警戒しているし、それを解く気もないときた。


 俺は弱いし、ただでさえ手負いだ。情報を与えなければどうなるかわからない。


 その時になって初めて気が付いたが、俺の体に包帯が巻いてある。少し楽になったように感じたのはこれか?


 「これ……おま……あなたたちがやってくれたんですか?」


 「えぇ、まぁ」


 「あ、ありがとうございます」


 「堅苦しいのはいいですよ。素で大丈夫です。もっとも、私にはこれが染みついてしまっているのですが……」


 苦笑いしながら答える男。まだ警戒はされているが、初めよりは良くなった、か?


 「では遠慮なく。俺は柏木勇也。柏木が家名だ。あんたの言う通り普通じゃないが一応人間だ。今はここで三日間生き残るっていう試練を与えられてる。俺を見つけてから何日たった?」


 簡単に現状を説明してみる。


 「そうですか。私はアリス・ウォーカーと言います。あなたの言う通り人間ではなく魔物……アンデッドです。一応ゾンビになります。ここにいるものも皆私と同じようなものです。あなたを見つけてからはまだそれほど時間が経っていません。それと……この武器はあなたの物ですか?」


 男……アリスの指さす先には俺がばら撒いていた武器の山があった。


 「あぁ。そうだ」


 「そうですか。では、お返しします。これからどうするんですか?」


 「また戦いに行くかな。自分の力を示さないと」


 「その体で?」


 「それくらいできないと惚れた女一人守れないだろ」


 「ワイバーン四体倒せるだけでも十分だと思いますが……」


 「とにかく、世話になったな。ありがとう」


 「いえ。縁があれば、また」


 俺は武器を収納魔法にしまうと魔人の街に向かった。ここからそんなに離れてはいない。目と鼻の先だ。


 体が痛むが、ここが踏ん張り時だ。


 あの男……アリス・ウォーカーとか言ったな。お互いにまだ思うところや聞きたいことがあったが、今はあれくらいが限界だろう。


 あいつの言った通り縁があればまた会うことになる。というかあそこから俺がどこにいるかなんて丸見えだしな。


 まあいいや。あんまり遠くには行きたくないし、最初と同じように村の前にいよう。


 ギャァァァァァ!


 額を冷や汗が伝う。


 記憶に新しいこの声はワイバーンだろう。


 バウバウ!


 何か犬のような鳴き声も聞こえる。


 戦いはまだまだ終わらないようだ。

今回も読んでくださりありがとうございます。高評価、ブックマーク登録もありがとうございます。いつも励みになっています。

次回は金曜日の18時に投稿します。

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