修羅場にならないことを祈りたい
「ただいま」
「帰ったぞ」
「お、お邪魔します……」
ユエナの家に入ると、白髪紅眼の綺麗な女性がこちらに走ってきた。顔立ちがユエナに似ている。この人がユエナの母親だろう。
「ユエナ……」
「お母さん、ただいま!」
ユエナは勢いよく母親の胸に飛び込んだ。父親は本当に良かったとその光景をしみじみと眺めている。こういう時って俺みたいな部外者って気まずいよね。気まずくて目を泳がせることしかできない。
「そちらの方は?」
ユエナとの再会をかみしめた後、ユエナの母親が俺に向かって聞いてくる。
「初めまして、柏木勇也といいます。柏木が家名です。ユエナさんと旅をしていました」
「あら、そうだったんですか。こんなところではなんですから、上がってください」
「お邪魔します」
俺はソファとテーブルが置かれているくつろげる場所に通された。今この場にいるのは俺、ユエナ、ユエナの両親だ。
「改めまして、ユエナの母のエレナです。こちらは旦那のアルベルトです。ユエナを今まで守ってくださり、ありがとうございました」
「いえ、私もユエナさんにはいつも助けられているので」
「あら、そうなんですか?ところで……」
「な、なんでしょう……」
「なぜユエナはユウヤさんにべったりなのかしら?」
そう。今俺たちは机を挟んでユエナの両親と向かい合って座っている。俺の隣にはユエナがいつのだが……俺にぴったりとくっついていた。
「ユウヤは私の婚約者だから」
「あら!まぁまぁそうなの?」
女性陣は楽しそうだが、お父さんはこの話題になる度に表情が険しくなる。ユエナが俺にくっついている今はずっとだ。正直生きた心地がしない。胃が痛い。
「おい」
「はい!」
突然、これまで黙っていたアルベルトさんが口を開いた。
「お前、本当にユエナと結婚する気があるのか?」
正直、ユエナと結婚出来ればうれしいし、いつも一緒にいてほしいし、一緒にいると安心する。もしユエナがほかの男と結婚すると言ったらきっと嫉妬するだろう。これが好きということなのだろうか。だが、ユエナがあそこまで言ってくれたのだ。ここで答えなければ男が廃る。
「はい。ユエナさんと結婚したいです」
「ユエナのことが本当に好きなのか?」
「愛しています」
「……」
しばらく部屋が静寂に包まれる。俺はアルベルトさんの目をしっかりと見据える。視界の端に映ったユエナの顔は、これまでに見たことがないほど赤くなっていた。何この子。めっちゃ可愛い。そんな思考を壊すようにアルベルトさんが口を開く。
「外へ出ろ」
◉
俺たちは集落の外に来ていた。
「このお前たちが魔界と呼ぶ空間はそこかしこに強力な魔物がうじゃうじゃいる。この街は結界で守られているから魔物は入れないが、外は違う。この街を囲っている柵が結界のある場所だ。ここから外に出たら命の保証はない。ユエナと結婚したかったらこの結界の外で三日間生き残って見せろ」
「アル!それはいくら何でもユウヤさんが!」
「お母さん、大丈夫。ユウヤは強いから」
「やるのか、やらないのか、どっちなんだ?」
「やります」
俺はゆっくりと結界の外に出た。
「結界の中に入ったら俺たちにはすぐにわかる。くれぐれも、インチキはしないようにな」
そう言い残すと、アルベルトさんはユエナたちを連れて帰っていった。
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