襲撃
俺がこの世界に来てユエナと出会ってから何ヶ月たっただろう。一年はたっていないと思うが、どれくらい経ったかわからない。
久しぶりのサムマジスは、以前よりは格段に復興が進んでいたが、まだ元通りにはなっていないようだ。復興途中の家々とそれを助ける機械。さすがは科学魔術国だ。
アナライズで調べてみたところ、魔術側は壊滅状態で中枢を担っていた人たちがいなくなってしまったので、魔術側に住んでいた人たちも科学側に来て暮らしているようだ。現在は科学側と魔術側の人々がお互いの技術を使って手を取り合って復興をしているらしい。いずれは魔術側も復興させるつもりだとか。
この国は本当の意味での科学魔術国になった、と言えるだろう。
ユエナと街を歩いていると、急に周りの空気が変わったように感じた。これは……上か?
直感だが上に何かがあると感じた。見てみると、空に赤黒いポータルのようなものが浮かんでいた。
「ユエナ、あれ!」
「————ッ!?」
空に浮かぶポータルに気づいたユエナは驚いたような、悲しそうな、何とも言えない表情をしていた。
とにかく、これから何か良くないことが起きることは確かだ。
どうするかと考えを巡らせていると、そのポータルから人のようなものが次々と飛び出していった。
それを見たユエナの目からは涙が零れていた。
「お父さん……」
「!?」
ユエナの口から零れたお父さんという言葉。あの中にユエナの父親がいるんだろうか。
右目の望遠機能を使ってポータルをよく見てみると、ポータルから出てきている人影の目が全員赤いことに気が付いた。ということは……魔人か。
ユエナを悲しませるわけにはいかない。それに、ここ最近で魔人のイメージも改善されてきたんだ。とにかく誰かがなにかする前に、俺が全員捕まえる。
検索魔法のサーチを発動させて今回異界から侵略してきた存在の位置をリアルタイムで全部割り出し、脳内にマップとして表示する。
どうやらこちらに侵攻してきたのは魔人だけのようだ。
それを参考にしながら飛行魔法を使いつつ高機動モードでまずポータルの前に向かう。
「打ち止めだ」
魔人がこちらに来ることは止まったが、開きっぱなしのポータルを消滅させ、空中から右目の望遠を使いつつこちらに来た魔人の位置を確認し、ロックオンする。
「魔法鎖」
俺の周りに無数の魔法陣が浮かび上がり、黒い鎖が魔法陣から現れる。鎖は磁石に向かう鉄のようにロックオンした魔人たちに向かっい、拘束した。
魔人たちは必死に抵抗するが、魔法強化を施されたものと同程度以上の強度を誇るマジックチェーンの拘束を解くことは出来ない。
捕まえた魔人たちをとりあえずサムマジスの王城に連れていく。ついでにユエナも拾っておいた。
◉
城に行くと、案の定とらわれそうになったが、全て力でねじ伏せて地下牢を貸してもらった。
そうこうしているうちにサムマジス科学側の王、現サムマジス国王が現れた。
「こいつらが侵略してきたと聞いたぞ!お前が捕まえたんだってな。よくやった。礼を言う。こいつらは死刑だ!そうと決まれば……」
「黙れよ。こいつらは俺が捕まえた。順番守ろうな?まず俺が尋問するから」
「そ、そんなことは知らん!第一お前は……」
「お前みたいな馬鹿にもわかるように教えてやろうか?俺はお前らに勝手に体をいじられた人間兵器なんだよお前ならこの意味が分かるだろ?サムマジス国王様?俺には逆らわない方がいいんじゃないか?」
「わ、わかった。お前の言うことを聞こう……。ところで……なぜこやつらはずっと眠っておるのだ?」
あ、いっけね。麻痺魔法で気を失わせてたの忘れてた。
攻めてきた魔人たちの拘束と麻痺を解く。さっきは放っておいたあらユエナが叫んでいたからな。彼女に不利益を与えるわけにはいかない。
「……ん?ここは……?ユエナ?ユエナなのか?」
「お嬢!探しやしたぜ!」
「こんな檻、ぶっ壊してやる!」
「皆殺しだ!」
麻痺を解いた瞬間魔人たちが一気に騒ぎ出す。うるさいし、何かやらかしそうなので、速めに手を打っておこう。
「いい加減黙れよ。お前らが生きてここにいられるのは誰のおかげか考えろ。一瞬でお前らを拘束できる人間がこの場にはいるんだ。その意味をよぉーく考えるんだな」
「……ッ。ならば一つ聞かせてくれ。娘……ユエナはなぜ外にいるんだ?」
ユエナと同じ白髪紅眼の魔人が聞いてくる。この人がユエナの父親らしい。
「それは脅し……じゃなかった。力……でもない。えーっと、話し合い?で?」
「そうか。娘が無事ならそれでいいんだ。ところで……一つ聞いてもいいかい?」
魔人たちは俺の脅しで何かを察して静かになったが、この魔人はその中でも特に落ち着いているように見える。
「言ってみろ」
「ユエナ……この男は誰だい?」
えっ?そういう質問なの?これ、何て言われるか怖いな。あんまりひどいこと言われたら、俺、泣きそう。
「この人は……ユウヤは、私の、婚約者」
「は?」
「え?」
「ん?」
周りから間抜けな声が漏れる。
「えぇ————!?」
直後、大きな叫び声が地下牢に響き渡った。
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