勇也VS皇帝
「さあ、皆さん、お待たせしました!皆さんお待ちかね、今年のギルド帝国武術大会、決勝戦を行います!それでは、選手に入場していただきましょう!まずは、本大会の主催者であり、これまで一度も優勝を逃したことのない無敗の王者、ギルティーゼ陛下!」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉお!!」
これまでの比ではないほど会場が大きく盛り上がる。
「対するは、今回初出場にして一度も負けることなくここまで勝ち続けた期待の新星にしてダークホース、カシワギユウヤ!」
「おぉぉぉぉぉぉぉぉお!!」
またしても会場が沸きあがる。
「よぉ、カシワギ。お前の話を聞いてからずっと戦いたいと思ってたんだ。楽しみでしょうがないぜ」
「御託はいい。ぶっ潰してやる」
「あれ?俺なんかしたか?」
「自分の胸に聞いてみろ」
皇帝を目の前にしたら忘れかけていた怒りが蘇る。
だが皇帝は何のことかさっぱりわからないといった様子だ。
そんな俺たちの心境なんて知らない審判は関係なしに試合開始を告げる。
「それでは、両者武器を構えてください。準備はよろしいですか?それでは、決勝戦、始め!!」
「わぁぁぁぁぁぁ」
審判が開始を告げた瞬間会場はさらに盛り上がった。
「いくぜぇ、カシワギィ!」
これまでの試合と同じように開始直後に一気に距離を詰め、大剣を思い切り振る。
「何回もやってる攻撃が当たると思うなよ!」
強化された身体能力を全開にして突っ込んでくる皇帝の上を飛び越えて避ける。それだけではなく頭上を通る瞬間に風の弾丸を二発打ち込む。当たれば俺が強めに殴った程度のダメージが入るはずだ。それだけでも普通の人間ならば気を失うか、少なくとも戦いの続行は出来なくなるだろう。
「甘いぜぇ!」
だが、皇帝はユエナのカウンターを防いだのと同じ方法で俺の魔法を防いだ。
「チィッ!なかなかやるじゃねえか。今度はこっちの番だ!」
俺の攻撃を防いだ皇帝は木の大剣を盾のように構えながらこちらに向かって走ってくる。
「甘いのはそっちだ!くらえぇっ!」
それを正面から迎え撃つように俺は木剣を構え、思い切り向かってくる皇帝めがけて振り抜いた。
カァァァン!
乾いた木同士がぶつかる音が辺りに響き渡る。直後、ベキィ!という音とともに俺の木剣がへし折れた。
「なんてパワーだ!やっぱり勝負はこうでなくっちゃなぁ!カシワギィ!」
それはこっちのセリフだ!俺は心の中で悪態をつきながら腰に挿していた予備の木剣を抜く。俺のパワーに一瞬でも押し負けないなんて、こいつほんとに人間か!?
だが、それがどうした。俺はまだ高機動モードも使っていないし魔法も使っていない。まだまだ本気は出していない。どうとでもなる。
「俺は戦いに楽しさなんて期待してないんだよ!」
そう言い放つと、俺もう一度魔法を発動させた。今度の魔法は相手に感覚までも忠実に再現した恐怖体験を脳内で体験させてあげるものだ。
今回皇帝に体験していただくのは薄暗い闇が立ち込める虚無の空間で俺に視認もできないような速さで体中を切り刻んでは再生し、切り刻んでは再生しされるものだ。
「————!!」
皇帝の動きが止まった————かに思えたが、一瞬で剣を持ち直しこちらに向かってきた。
何なんだよもぉ!またかよ!こいつほんとのホントに人間か!?
もう手加減はしない。俺の私怨の前に倒れろ。
俺は高機動モードに入ると皇帝の後ろに回り込み、背中に一撃を入れようとして……弾かれた。
なぜだ!?高機動モードは人間の動体視力では対処できないはず!
「なぜこの速さに対応できる!?」
「見えてなんかない!勘だよ!戦士の勘ってやつだ!」
なにぃ!?勘なんかで対応されてたまるか!
攻めの手を緩めることはしない。俺は高機動モードのまま、今度は皇帝が大剣を握っている右手を攻撃し、大剣を落とそうとする。
ように見せかけて背中に一発叩き込んだ。
「チィッ!間に合わねぇ!なら!」
一発は入った。だが、皇帝は俺の攻撃が自分にあたることを理解したうえで、大剣を手放し攻撃を喰らいながらも回し蹴りを繰り出してくる。
こいつは人間とか人間じゃないとかの次元では言い表せないところにいる気がする。こいつは……戦いに関する天賦の才があるのだろう。
そっちが肉弾戦ならこっちもそれで対応してやるよ。もともとそっちの方が俺も戦やすい!
高機動モードで相手が対応できないほどの速さで連続で拳を叩き込む。
「それ、お返しだ」
止めに皇帝の鳩尾に強めの一発……ではなく四発を叩き込む。
これは俺の勘だが、一発では起き上がってまだ戦っていた気がする。
まだ、動くか?
…
……
……………
皇帝は、動かない。どうやら気は失っていないようだが立ち上がれないようだ。
「そこまで。勝者……カシワギユウヤ!!」
勝利の宣言。その瞬間、これまでに聞いたことのないような大きな歓声が会場から沸きあがった。




