今更だが、ここは異世界だった
「これ、どうしよう」
俺は自分の手を見て呟いた。今、俺の体内にはさっき吸収した枷(遠隔爆破装置など)がある。アナライズで確認したが、俺にとって不利益な改造は完全に吸収しきったようだ。それを確認する時に俺に施された他の改造のことも確認したのだが……それについてはまた後で触れるとして、今は吸収した不利益な装置をどう使うか考えよう。
吸収したものをどう使おうか悩んでいると、頭の中にどれくらいの大きさのものなら作れるかが漠然と浮かんできた。どうやら今回吸収したものでは手のひらサイズより一回り大きいくらいの物しか作れないようだ。この能力は吸収したものと同じくらいの体積のものしか作れないらしい。
手のひらサイズより一回り大きいくらいの物か……うーん、なかなかいい案が浮かばない。
そういえば、本当に、ほんとぉぉぉに今更だが、ここは異世界だった。今まで二人組の男に誘拐されて人体実験されたり(実験中の記憶はないが)、自分の体を操られていつでもお前を殺せると脅されたり、自由を勝ち取るために頭をフル回転させながら心理戦?をしたりと現実味がないことが多すぎて今ふと思い出したのだ。
実感はないが、落ちた時普通に痛かったし、妙なリアリティがある。意識ははっきりしているしまるで現実のようだ。何より、脅されたときに感じた死の恐怖は本物だった。
明晰夢でもなければ、こんなことはありえない。実感は湧かないが、これは現実でここで死んだら本当に死ぬと思って行動しよう。
異世界ってことは、魔物とかいるよな。ならば、この素材を使って武器を作るのはどうだろうか。うむ。実にいい考えだ。
一人で考え一人で納得すると、俺は作るものの形をイメージする。
「――ッ!」
気合を入れて右手を前にかざし、手から自分の体にあるものを放出して形を作っていくイメージで。
すると、かざした手から破片のような、粒子のようなものが放出され、それがイメージ通り形を構成していく。
イメージは銃。シルバーカラーの銃身は一般的な拳銃に比べて長く、それ故に高威力を出すことができる。モデルはオートマグⅢ。以前ネットで目にしてかっこいいと思ったのでこの銃をモデルにしたが…………、
「かっけぇ」
普通にできてしまった。今、俺の手には銃が握られている。圧倒的な力で敵をねじ伏せる最強の武器が。
「…………あ」
ここで俺は気付いた。弾丸がないから撃つことができない、と。第一、弾丸があったとしても銃の仕組みなんて分からないのでどちらにせよ撃つことができない。
さて、どうしようか。そういえば、若い方の男が俺は魔法を生み出せるとかなんとか言ってたな。やってみるか。
「付与・魔力弾丸!」
イメージは転写。俺の脳内のイメージを浸透させるように付与する。そのイメージを補完するためにそれっぽい詠唱を魔法名だけだがやってみる。
なにかの力が働いた気がした。魔法が成功していれば所有者の魔力を消費して消費した分の魔力に比例して威力が上がる魔力弾を撃てるはずだ。
そこで気がついた。これまた今更だが、魔力とはなんだろうか。今までなんとなくで魔法を使っていたが、そもそも魔力をどのようにして魔法を使っているのだろうか。
こんな時は便利魔法アナライズだ。解析項目は俺の魔力に関することだ。
「うっわ」
いかん。声が漏れてしまった。どうやら俺はみぞおちのあたりに魔力が無限湧きする魔石(魔石がどういうものかは詳しく知らない)が埋め込まれているらしい。意識を集中させれば魔力の流れがわかるそうだ。その流れを操作し、形を作り、放出するものが魔法らしい。
なるほど、なんとなく分かった気がしなくもない。でも、なんか、行ける気がする!と気合を入れて、目を閉じ、集中する。
「これか?」
すぐに体中を流れる力のようなものを感じ取る事ができた。今度は目を開けたまま、右手をかざし、魔力の流れを操作してかざした手から放出する。直後、ゴゥッ!という風切り音とともに風のような圧力のような力が前方に放出され、地面を抉り取った。
なるほどな。魔力の使い方をなんとなくだが掴めた気がする。こんなに簡単に魔力を感じたり扱ったりできるのは俺が改造されたからだろう。
と、そこで俺は思い出す。手にオートマグⅢが握られていることを。とりあえず前に構えてみる。構えた先にある地面に穴が開くのをイメージし、引き金を引く。パァン!という発砲音とともに、光り輝く弾丸(の形の魔力)が発射され、地面に穴を開けた。
イメージ通りの威力だ。うまく行ったことでテンションが上がってくる。オートマグⅢだと長いから今日からこいつを魔力銃と呼ぶことにしよう。
そういえば、俺にはまだやらなきゃいけないことがあったな。
思い出したように俺は来た道を引き返した。
今回も読んでくださりありがとうございます。今回は説明多めの回でした。柏木君の能力はまだあるので今後もこのような回が出て来ると思いますが、最後まで読んでいただけると幸いです。不定期投稿ですが、次回も読んでくださると嬉しいです。




