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人造勇者の理想郷  作者: 鈴花雪嶺
第二章 モンスターキャッスル
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クリスマス特別編最終話 二人の聖夜

 夜。街が闇に包まれ、一部の店と民家から漏れる明かりが街をぼんやりと照らす。この時間に外を歩いているのは帰宅途中の人間か不審者かごく少数のその他だろう。そんな時間帯の街を歩く影が一つ。


 「はぁ、はぁ、はぁ。すっかり遅くなっちゃった。ユウヤ、きっと待ってるよね……。急がないと」


 黒髪黒目の少女はきれいに包まれた包を抱え、街の外へとつながる門へと駆け足で向かっていた。


 門をくぐると一面の平原が見える。その平原の上に広がる空にはきれいな星がいくつも輝いていた。あたりに強い光を放つものがないからこそこんなにきれいに星が見えるのだろう。


 そんな夜空を眺めながら街の外側の門に寄りかかる少年が一人。雪が積もっている中薄いコートしか着ていないにも関わらず、寒そうな素振り一つせず夜空をボーッと眺めていた。


 「ごめんなさい、ユウヤ。遅くなっちゃって……」

 

 「ううん、俺もいま来たところだし、いつの間にか時間が経ってた感じだから全然気にしないで」


 「うん……」


 少女……ユエナの表情がわずかに曇る。眼の前の少年……柏木勇也に自分の心情を悟らせまいとしているようだ。少年もそのことに気がついているようだが、どう言葉をかけていいかわからないようだ。


 「向こうに行こう。そこでプレゼント交換しようよ」


 勇也は街から少し離れた平原を指さしながら言った。


 「うん……」


 ユエナは歩き出した勇也についていくようにあるき出す。


 「じゃあ、俺から渡すね」


 そう言うと勇也は手に持っていた袋から小さなラッピングされた箱を取り出した。


 「……開けていい?」


 「もちろん」


 ゆっくりと噛みしめるように、味わうように、丁寧に箱を開けていく。


 「これ……髪飾り?」


 箱の中に入っていたのは小さな髪飾りだった。小さいと言っても安っぽいものではなく、キラキラ輝いていて、それなりの値段がするようだ。


 小さな薄桃色の花の髪飾り。


 「うん。ユエナはこういうの持ってないんじゃないかと思って……。気に入ってくれるといいんだけど……」


 「キレイでかわいい……。うれしい。ありがとう」


 ユエナは嬉しそうに目を細めて勇也からもらった髪飾りを眺める。


 しばらく愛しいものを見つめるような眼差しで髪飾りを見たあとに、ユエナは今つけている黒いリボンはそのままに、髪にもらったばかりの髪飾りをつけた。


 「どうかな?」


 「よく似合ってるよ。かわいい」


 「……ありがと」


 ユエナはまさかこんなに直球に褒められるとは思わず、頬を赤らめた。その反応を見ていた勇也も自分が言ったことの意味を理解した途端羞恥心が溢れ出し、顔を赤くする。


 「わ、私からも渡すね」


 ユエナは恥ずかしさを紛らわすように「はい」と言いながら大きな包みを勇也に渡した。


 「開けていい?」


 勇也が聞くとユエナはこくりと頷く。


 勇也が丁寧に包みを開くと、中には服とマフラーが入っていた。


 「これ……」


 「ユウヤいつも同じ服ばかり着てるから……。気に入ってくれるかわかんなかったけど……。それにいつも寒そうな格好してたから……」


 理由を聞いた勇也はニコリと笑うと「ありがとう」と素直にお礼を言った。


 勇也はすぐに収納魔法から棒と布を取り出し即席の更衣室を作り、もらったばかりの服に袖を通した。


 ユエナが買った服は落ち着いた紺で統一されていてどこで着ても違和感はなさそうだ。


 襟やボタンがついていて今までの飾り気のない服に比べたらずっと人間らしさが出ている。マフラーをまいて更衣室を収納魔法にしまうと、勇也はユエナに向き直った。


 「どうかな?」


 ユエナがそうしたように、けれどユエナよりも少し悪戯っぽく訪ねた勇也にユエナは少し頬を染めながら言った。


 「に……にあってる……」


 そのユエナの様子に頬を緩ませながら、勇也は優しく微笑みながら収納魔法から椅子と机を取り出しつつ、ずっと置いてあった箱を持ち上げた。 

 

 「実は……さ、もう一つプレゼントがあるんだ」


 「え?」


 「これ……作ったんだ。一緒に食べない?」


 勇也が箱の蓋を取ると、その中には色とりどりの果物が乗ったケーキが入っていた。


 「これ……すごい……」 


 驚いた様子のユエナを見て作ってよかったと思いつつ、皿やグラスを用意していく。


 最後に勇也はユエナの髪に優しく触れると、それと同時にユエナに魔法をかけた。


 「あれ……?寒くない?」

 

 「魔法で温度を調節したんだ」


 「ありがとう……」


 また気遣わせてしまったと顔を曇らせるユエナに、勇也はそんなことは関係ないとでも言うように言う。


 「ほら、座って。綺麗な景色を見ながら一緒に食べよう?夜はまだまだ長いから、一緒に楽しもう?」


 「うん…………うん!」


 気分を切り替えたと元気よく頷くユエナと、綺麗な星空を背に笑っているユエナを愛おしそうに眺める勇也。


 二人の夜は、まだまだ続く。

ここまで読んでいただきありがとうございました!クリスマス特別編はこれで完結になります!別行動している二人を書いているときはいつもとはまた違った楽しさがありました。「たまにはこういう話もいいな」と思っていただけると嬉しいです。

拙い文章で投稿も間隔が開くことが多いですが、これからも読んでいただけると嬉しいです。これからもよろしくお願いします!

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