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人造勇者の理想郷  作者: 鈴花雪嶺
第二章 モンスターキャッスル
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クリスマス特別編 第一話 ある冬の日に

初めて予約投稿をしてみました。皆様がこれを読んでいるということはうまくいっているのでしょう。

 毎日肌寒いと感じ始め、空気が冷えて呼吸がしにくいときもあり、雪がちらつき始めた頃。俺とユエナはある街に滞在していた。これといった特徴のないいたって普通の街だ。


 ……俺はもう肌寒いと感じることも、空気が冷えて呼吸がしにくくなることもなくなったのだが。


 こういう事があると、自分がもう人間では無いということを改めて感じてしまう。いつまでも人間でいるために心だけでも人間であろうと何度目かの強い決意をしながらチラリと隣のユエナを見る。


 ユエナはふわふわのファーがついた薄茶色のコートを着て寒そうに手に息を吹きかけていた。今度手袋も買わないとな。


 この世界で初めて迎える冬だけど、案外ホームシックとかにはならないもんだな。


 ……考えてたらなんだか家が恋しくなってきたな。家族はどうなってるのかな。俺は行方不明とかになってるのかな。みんな心配してるかな……


 「だいじょうぶ?」


 不安が顔に出ていたんだろうか。心配させてしまったな。


 「いや、大丈夫だよ」


 「ほんとに?」


 「あぁ」


 ユエナに嘘はつけないな。何でもお見通しか。なにかあることをわかっててそれを聞いてこないなんて、毎回思うけど、本当にいい子だな。


 改めてユエナを大切にしようと考えつつ、雪がちらつく大通りを歩いていく。雪が降り出したにも関わらず、大通りにずらりと並んだ露店の周りは売り手と買い手の会話の喧騒に包まれている。このあたりはこの熱気で雪も積もらないんじゃないかというほど活気があった。


 その露店が並ぶ通りに入り、いい感じのものを見つけては買う。


 「買い物なんて珍しいね」


 「まあね」


 いつも食事は外食か食べ歩きで必要なものは服以外ほとんど物質変換能力で生成するからか、俺が買うものを興味津々といった様子で眺めているユエナ。


 「料理でもするの?」


 「まあね」


 俺が買ったものは鍋、包丁、牛乳、フルーツなど、料理に関係するものばかりだ。普段料理なんてしない俺がこんなものを買っているのだから疑問に思うのも当然だろう。


 だが、俺はこの話題を掘り下げる気はないので「まあね」の一言で話の流れをバッサリ切った。


 「ここでは冬になると開催されるイベントとかないの?」


 「……私、ずっと魔界にいたからわかんない……。魔界にはなかった」


 「ごめん…」


 「…………」


 「…………」


 やばい。空気が悪くなってきた。なにか話題を……


 「俺のいた村では冬には赤い服を着て赤い帽子を被った白髪白髭の恰幅のいいおじさんが煙突から家に侵入して子供にプレゼントを渡すっていう言い伝えがあったよ」


 「…………。なにそれ。不法侵入してプレゼントを渡すおじさん?……へんなの」


 クスッと笑いながら言うユエナ。良かった。笑ってくれた。


 「それにちなんで親が子どもにプレゼントをあげたり友達同士でプレゼントを交換したりするようになったんだ」


 「へぇ〜」


 その光景を想像しているのだろう。ユエナは見たことのない光景に思いを馳せている。


 「……ねぇ」


 「ん?」


 申し訳ないような表情で、言いにくいことを言うようにユエナが話しかけてきた。


 「その……」


 「??」


 口籠るユエナ。なんだろう。言っても大丈夫と言いたいけど、それだとセカしてる感じになっちゃうしなぁ……


 「プレゼント交換、してみたい……」


 俺がどう声をかけようか迷っているのを察したように、ユエナが言葉の続きを紡いだ。また気を使わせてしまったようだ。


 「もちろんいいよ」


 「ほんと!?じゃあ私買ってくるね!」


 やってもいいと言われた途端、ぱぁっと表情が明るくなり、今すぐ買いに行こうとするユエナ。


 「ちょっと待った!」


 急ぐユエナの腕をつかみ、駆け出していくのを止める。


 「なに……?」


 急に不安そうになるユエナ。


 「別に行くななんて言わないよ。はい、これお金。俺とユエナで稼いだお金だから半分あげる」


 「え?……ありがと」


 収納魔法から袋を取り出し、そこに俺の所持金の半分を入れてユエナに渡す。まさかお金を渡されるとは思っていなかったようで、ユエナは虚を突かれたような表情だ。


 「それと、おまじない」


 そう言うと俺はユエナの顔の前に手をかざし、「惑わせ」とつぶやく。


 「?何したの?」


 ユエナは俺の行動に疑問を口にした。魔法を使ったのはわかっているようだが、その効果を聞きたいということだろう。


 「はい」


 そう言うと、俺は収納魔法から鏡を取り出してユエナの顔を写す。


 「え?なに、これ……」


 そこに写ったユエナは肩の下まで伸びる綺麗な()と綺麗な()()をしていた。


 「染めたわけじゃないよ?幻影をまとわせただけ。これで他の人からは魔人とは思われないでしょ?あ、いつでも戻せるから!」


 勝手に見た目を変えたことを気にされていないか少し不安だが、来たばかりの街では俺たちのことを知っている人はあまりいないだろうし、交換するプレゼントを買いに行くなら別れていたほうがいいだろうし……。


 そんな考えもお見通しだとでも言うようにユエナは悪戯っぽく笑う。


 「怒ると思った?」


 「……」


 怒られるというよりは嫌だと思われると思ったんだけど……言えるわけがない。


 「……この髪と目、どう思う?」


 今度は恥ずかしそうに上目遣いでこちらを見て聞いてくるユエナ。ラノベとかでよくある上目遣いってこれか!?これなのか!?なんという破壊力!!こんなの可愛いと思わないわけないじゃないか!!


 ―――俺がそれを声に出すことができたらどんなに良かっただろうか。


 「……可愛いと思う」


 俺はそっぽを向いてそれだけ言うのが精一杯だった。顔が熱い。顔が赤くなっているのが自分でもわかる。


 「フフッ」


 ユエナの口から笑みがこぼれる。


 「じゃ、じゃあ分かれてプレゼントを探そうか。今夜門の前に集合!あんまり高いものは買わないこと!」


 「わかった」


 「じゃあ、また後で」


 「うん」


 半ば無理やり話題を変えて俺たちは別れた。俺はどんなプレゼントを用意しようか……。ユエナのプレゼントも楽しみだな。

クリスマスイブです!私からのささやかなクリスマスプレゼントとして本日と明日の0時と18時にクリスマス特別編を投稿したいと思います。時系列的にはどこに入っても問題がないように書いている(つもり)です。特別編、ぜひ楽しんでください!

特別編第二話は本日18時に更新です!

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