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人造勇者の理想郷  作者: 鈴花雪嶺
第一章 戦争での出会い
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自由、其れ即ち宝なり

小さなクレーターがある山の中、一人の少年が誰もいない中会話をしているという少年の正気を疑うような光景が広がっていた。その少年というのは言わずもがな、柏木勇也である。


 「改造…………?」


 『はい。あなたをこの世界に呼んだ目的は呼んだ人間を改造して兵器にするためですから。ああ、勘違いしないでくださいよ?心理戦は先輩ではなく私の約目ですから。貴方に同情しているわけでも、ましてや罪悪感なんかを感じているわけでもありません。分かったらこの状況にさっさと絶望してテロ活動をしてきなさい。』


 若い方の男は勇也が絶望するのに十分な情報を与えた。それも極めて冷酷な、冷徹な、冷淡な印象を与えるように計算しながら。


 実際、勇也の心は折れていた。いつでも自分を意のままに操る事ができる。それに、命令を聞かなかったらいつでも自分を殺すことができるのだ。

 

 さっき脳内に響いた声は自分に都合の悪いことだけを極めて冷酷に、冷徹に、冷淡に告げ、一方的に通信を切った。


 勇也は理解していた。先程の通信の内容が暗に人体改造するのは誰でもよく、今自分がこんな目にあっているのはただの偶然で運が悪かっただけだと言われたことを。


 この短時間で一方的に、だけども確実に心をおられた勇也はただ命令を遂行することしかできなくなっていた。


 どのくらい歩いただろうか。いや、走っていたかもしれない。すべてがどうでもいい。そんな無気力感を勇也は感じていた。


 眼の前には巨大な谷がある。幅は50メートルくらいで、底を見下ろしても見えるのは絶壁と闇のみ。そんな谷を前に、勇也はただ立ち尽くしていた。


 

 もはや勇也は自分で考えることを放棄していた。その様子を勇也の右目に埋め込んだカメラの映像で見ていた白髪の男と若い方の男はそんなことは関係なくマイペースに話をしていた。


 「おい、あいつ、さっきから動いてないぞ?壊れたんじゃないか?」


 「確かに……少しやりすぎたかもしれませんね。少し手助けをしましょうか」


 「こんなことなら最初から自我を消しておくんだったぜ」

 「そんな事言いながらやらないのが不器用な先輩なりの優しさなんですよね」


 「お前だってヒントを与えたりしてるだろ」

 

 「さあ、そのヒントを早速彼に渡してあげましょうか」

 

 「おい!話を逸らすな!…………まあいいか。そういうのは頼んだぞ?俺は新しい研究の続きをしてくる」


 さぁて、やりますか。と若い方の男は伸びをすると、勇也の頭の中に直接声を届ける機械のスイッチを押しながらマイクに向かって話し始めた。


 

 『貴方には既存の魔法をすべて使えるだけでなく、イメージできるのなら自分で新しく魔法を作ることだってできます。そんな谷は早く超えて目的を達成させてください』


 その言葉を聞いた勇也はどこか引っかかるような感覚を感じた。今の話に何か重要なヒントが隠されているような。だが、男たちに違和感を与えないようにとにかく谷を超えてみることにした。「魔法がある世界なのか」というツッコミをしている余裕は勇也にはなかった。


 「魔法って言ってもなぁ。イメージ……イメージかぁ……」

 

 ごちゃごちゃ言っても始まらない!と勇也はひとまず自分が浮かんでいるイメージをしてみることにした。


 目を閉じて、考える。


 ゆっくりと自分の足が地面から離れ、体全体が宙に浮く。そこで自分は鳥のように自由に空を動き回るんだ。


 その直後、足から地面の感覚が消えた。かわりに、感じたことのない浮遊感が体全体に伝わってくる。ゆっくりと目を開けると……体が地面から数センチ浮いていた。


 「!?」


 驚きのあまり声が出なかった。


 ……と、次の瞬間。


 「あぃたぁッ!?」


 落ちた。数センチ上空から落ちたときに着地をミスって盛大に尻餅をついた。だが、これで魔法がイメージ通りに使えることは分かったのだ。


 この時、勇也の目には完全に希望の光が宿っていた。


 まずは今の自分の状態を確認する必要がるな。俺はそう思い、新たな魔法のイメージをする。さっきはすぐに魔法が解除されてしまったので今回はそんなことにならないように詠唱をしてみる。

 

 「解析アナライズ!!」


 すると、眼の前に半透明の青いパネルのようなものが出現した。魔法名(自作)の詠唱だけでもだいぶ違うようだ。


 え〜っと……なになに……俺の誕生日……身長、体重……そんな情報じゃなくて俺が改造されたときについたやつが知りたいんだよ!そもそも、なんでそんな情報が出てくるんだよ!


 俺は心のなかでツッコミを入れた。すると、それに呼応するようにパネルに表示されている情報が変わる。


 『おい、なにしてる!』


 改造された影響を見ていると白髪の男の声が頭に響き渡った。まずい。ここで怪しまれる訳にはいかない。


 「これからテロを起こしに行くんですから、自分の能力を最大限に活かして相手側に与える損失をできるだけ多くしたいじゃないですか」


 ……これは無理があったか……?


 『そうか』


 ……え?それだけ?


 『………………』


 声は聞こえない。つまり乗り切ったと言うことだ。セーフ!セェェ―――――フ!!!俺は心のなかで叫んだ。


 こうなったらあっちが気づかないうちに目的を完了させなければ。


 パネルに目を通していく。じっくり見ている暇はない。いつまでも見ていると怪しまれる。


 ……ん?流し読みしていると、気になる項目を見つけた。どうやら俺は色々なものを吸収・分解して成分や形を再構築できるらしい。


 この時、俺の頭に電流が走った!これで迷惑な機能全部消してしまおうと。


 そうと決まれば早速実行。時間的にそろそろ怪しまれる頃だろう。急がなければ。パネルに移す情報を俺にとって不利益なものに限定する。ここからはスピード勝負だ。すべての位置を記憶し、分解能力を発動させようとする。

 

 が、それを黙って見ているほどやつらは甘くない。すぐに頭の中に白髪の男の声が響く。


 『何を見てる!妙な気は起こすな!今すぐやめろ!』


 そんな命令は無視だ。今、俺が自由になるか一生奴隷になるかがかかってる。返事をしている暇なんてない。頭をフル回転させろ!少しでも早く体を動かせ!自分の限界を越えろ!


 俺は自分を鼓舞しながら自分に向けて手をかざす。


 『おいよせ!やめ――――――ッ!」


 白髪の男が何か言いかけたがその声は途中で途切れた。俺が声を届ける機関を吸収したからだ。それだけではない。遠隔爆破装置や命令絶対遵守装置もだ。直感で分かった。自由になったんだと。


 この気持ちのなんと晴れやかなことか。すべての不安がなくなったような、青空さえも祝福しているように感じるような、そんな気持ちだ。端的に言うと、端的に言えないくらい舞い上がっていた。それはもう、言葉を発するのを忘れるくらいに。


 「自由って、素晴らしいな」


 しばらく喜びを噛み締めたあと、俺は一言呟いた。


今回も読んでくださりありがとうございます。

柏木くんが手に入れた能力については少しずつ出していきたいと思ってます。今後説明ばかりの回があるかもしれませんが、その時も最後まで読んでいただけると幸いです。

相変わらずの不定期投稿ですが、次回も読んでくださると嬉しいです。

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