開戦
「というか、なんでここにいるの?」
「それはな…………―――という感じでここにいる」
という会話がモンスターキャッスルの前で繰り広げられていた。それに対する勇也の反応は……
「軽すぎない?」
これから死ぬかもしれない人間の会話ではない。
「だからこそだよ。ビクビクしてたら実力も出せないってもんだろ?」
「そうかも知れないけど……」
「話していないでそろそろ覚悟決めますよ?もしかして怖気付いたんですか?ここに来て?しっかりしてくださいよリーダー」
うっわ、言い方キツッ!
「ごめんてぇ〜わかってるよ。それじゃ、行こうぜ」
「やっとですか」
「やってやりましょうよ!」
「ああ!」
四人の冒険者が中へ入ろうとした瞬間、俺がそれを引き止める。
「まてよ」
「なんだよ、せっかくいい雰囲気だったのに」
「お前ら、名前は?」
「……ルキアだ」
「レイハ」
「カルロです」
「エイトだ」
おっさん戦士のリーダーがルキア。小盾と剣を持った戦士の青年がレイハ。爽やかな狩人がカルロ。あたり強めの魔法使いがエイト……この名前は忘れないだろう……忘れないようにしよう。
「俺は柏木勇也だ」
チラッと俺の後ろに隠れるように立っているユエナに視線を向けるとユエナも自己紹介した。
「……ユエナです」
全員の自己紹介が一通り終わると俺たちはモンスターキャッスルに今度こそ入っていった。
六人が扉を開けて中に入る。通路の幅は六人横に並と狭いので俺とユエナは四人よりも前に出た。
しばらくは全くと言っていいほど魔物が出てこなかった。だが、俺たちは警戒を緩めない。
すると、眼の前に既視感のあるシルエットが五つ見えてきた。ちょうど前回ソレと遭遇舌場所と同じくらいのところだろう。
「!?一体じゃないのか!?」
「俺にもわかんねぇよ!」
驚くルキア達。それは俺とユエナも同じだった。俺たちはすぐに武器を構える。それと並行して伏兵の警戒とダンジョン把握のために俺はこのダンジョン内にいる魔物の位置をダンジョンマップに表示させる索敵魔法を使う。
「はぁ!?」
危機的状況にも関わらず声が出てしまった。ダンジョン内に魔物が六体しかいないのだ。それが意味することは一つ。このダンジョン内でなにか異常事態が起こっているということだ。
「どうした!?カシワギ!!」
「このダンジョン、こいつらの他に魔物が一体しかいない!」
ブラックスライムたちはこの数秒間こちらを見つめて動かないでいる。品定めでもしているかのように。
これから戦いが始まろうとしているときに、ルキアたちがアイコンタクトをとると、うなずきあった。その後、ルキアが口を開く。
「……カシワギ、お前達、先に行け」
「は!?お前なに言って……」
反論しようとするが、ルキアはその言葉を遮るように言葉を被せてきた。
「この先にどんなやつがいるかもわからねぇ。ここで全員で戦ってブラックスライムが奥にもいたらそれこそ全滅かもしれねぇ。ここは任せろ。お前たちは行け」
覚悟を決めたというような鋭い表情で四人がこちらを見ている。
「わかった」
俺が走り出そうとするが、ユエナはその場を動こうとしない。
「ユエナ……?」
「私もここに残るよ。相手は五人だし」
その表情はルキア達と同じように鋭く引き締まっていた。
「わかった。すぐ戻る」
俺はそれだけいうと五人に向かってニカッと笑って見せる。最後の別れが暗い顔なんて嫌だ。
五人は俺に笑顔を返してくれる。俺は前を向くと走り出す。普通に走るだけでも車くらいはスピードが出るが、それじゃあ遅すぎる。これからみんなはいつ死ぬかわからない戦いをするんだ。できるだけ早く戻ってこないと。
俺は高機動モードでブラックスライムたちの間を駆け抜ける。
死ぬなよ、みんな……
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。もう年明けからかなり時間が経ってしまっていますが……。なかなか投稿できませんでしたが、新年一発目の投稿なのでこちらでもご挨拶させていただきます。挨拶が長くなってしまいましたが、今回も読んでくださりありがとうございます。高評価、ブックマーク登録もありがとうございます。いつも励みになっています。不定期投稿ですが、次回も読んでいただけると嬉しいです。




