勇ましき者達
冒険者ギルドルスキヤ支部……ダンジョンNo.1324(通称モンスターキャッスル)を管理し、ダンジョン探索が主な収入源になっている世界でもそこそこ有名な冒険者ギルド―――
そのギルドでは今、小さな騒ぎになっていた。
「おい、なんだよあいつ!魔人と一緒にいやがって!」
「国家反逆罪じゃねぇか?」
「あの魔人の女の子、可愛かったなぁ……」
「バカ言ってんじゃんねぇ!殺されるぞ!」
「怖かったよぉ〜」
「お疲れ様。あの冒険者の相手したんでしょ?大丈夫だった?」
「うん……。意外と紳士的だったよ?一人の女の子のためにあんなことするなんて……ちょっと羨ましいかも」
「確かに……あの人結構タイプかも?」
「えぇ〜ほんとにぃ〜?」
今日も今日とてにぎやかな冒険者ギルド。厄介事や問題、喧嘩や犯罪の噂さえも笑い話にして酒を飲む。それが冒険者という生き物なのだ。受付嬢やギルドスタッフは現状を冷静に見つめながら対処法を考える。
今回も魔人を連れた強い冒険者に対してどのような対処をするかをギルドマスターを始めお偉いさん方でプチ会議を開いて話し合っていたところ……
バァァン!!
という大きな音を聞き、会議を一旦中断し、メインフロアに降りたのだ。
そこにいたのは……
「大変だ!」
と大声で叫んだ例の冒険者だった。
◉
俺はユエナを抱えて冒険者ギルドまで戻った。
蹴破るように冒険者ギルドの扉を開け、中に飛び込む。ギルド全体の視線が俺たちに集まった。ロフトのような二階の手すりからは冒険者ギルドの制服を着た人間たちがこちらを覗いている。噂好きの冒険者たちにとって自分たちをボコボコにしたやつが満身創痍の表情でなにかに戦慄しているような表情をしているのは、それはもう興味をそそられるだろう。ちなみに、腕の傷はロボットの残骸で修復済みだ。
つい半日ほど前、余裕綽々といった様子で大勢の冒険者たちを一瞬で戦闘不能に陥れた人間とは思えない様子の俺の次の行動に冒険者ギルド内のすべての人間が注目している。
俺は受付に向かうと今日見たことを全て話した。
魔物を多く倒したこと。途中からスライムが多く出てきたこと。黒い魔物に遭遇したこと。勝機を見出だせず逃げてきたこと。
あまり大きな声では話していなかったのだが、普段の喧騒からは想像できないほど冒険者ギルド内は静かで、ほぼ全員に会話の内容が聞こえていただろう。話し終えて冒険者ギルドを出ようとしたときに見たその場の人間の表情は絶望に染まっていた。
「ねぇ」
「ん?」
「どうするの?」
「あの黒いやつのことか?」
「ユウヤでも倒せない?」
「あれは厳しいかも」
「無理ではないんだ?」
「たぶん……できないことはない……と、思う……」
「あの人達に任せるの?」
「…………」
「助けたいのは私だけ?」
「…………」
あれを倒すには何かしらの対策が必要だ。俺に秒……瞬殺されたあの冒険者たちでは相手にならないだろう。俺の全力の攻撃でほとんどダメージを与えられなかったのだ。良くは見えなかったが、あいつは俺の攻撃で受けたダメージを一瞬で再生していたような気がする。果たして俺はあいつを倒せるのだろうか……
「ユウヤはどうするの?私はどっちでもいいけど」
「俺は…………」
◉
「……」
「やさしいね」
「俺は別に……」
「今だってここにいるでしょ?」
「別に……くだらない理由だよ。本当に……」
俺たちが冒険者ギルドに戻った翌日。
現在俺たちはモンスターキャッスルの入口前に来ていた。
一日宿屋でゆっくりと休み、武器などを作り、新しい魔法のアイデアと黒いアイツ……(呼称:ブラックスライム)を倒す方法を考えていた。
ここに来たことに後悔はない。むしろ清々しさすら感じている。
「さぁ、行こうか。ユエナは後ろを警戒してて」
「まかせて」
いざ決戦へ!!
……という雰囲気を出して俺たちがモンスターキャッスルに乗り込もうとしたその時……
「おいおい、お前たちだけにゃぁかっこつけさせねぇぜ」
そう言いながら四人の冒険者が現れた。
「な!?なんであんたらがここにいるんだよ!死ぬかもしれないんだぞ!?」
「馬鹿にするな!自分たちの街の運命を見ず知らずの他人に任せてられるかよ!」
「俺たちだって腐っても銅ランクの冒険者で街一番の冒険者だ!一流の腕を見せてやる!」
「僕もこう見えて結構戦えるんだよ?ただの狩人と思ってもらっちゃ困るな」
「私だって中級魔法を三属性扱える。ここまでできたら十分凄腕だ。舐めるな」
冒険者たちは次々と決意を伝えるが……でも……だとしても……
「死んだら……元も子もないじゃないですか」
そう。死んだら元も子もない。そこで終わり。立派な志も、街一番の地位と名誉も、夢も……
「死ぬかもしれないなんてわかってんだ。それでも、俺たちはここにいる。……それじゃ……だめなのか?」
「……行くぞ」
見ず知らずの他人でも目の前で誰かが死ぬのは見たくない。目の前じゃなくても、戦いが終わったあとに「死んでいた」なんて言われたくない。
俺がここに来た理由には、仁義も正義も大義もない。
あるのはただの自己満足とユエナの好感度が上がってほしいという下心だけだ。でも……ここに来たからには、動機が何であれ絶対に勝つ。誰も死なせたくない。ここにいる全員生きて帰るんだ。俺の力ならできるはずだ。
なんのための力だ。力は使い方次第なんだろ?なら、俺はたくさんの人を殺すために与えられたこの力でたくさんの人を守ってやる。
―――決戦が、始まる
今回も読んでくださりありがとうございます。高評価、ブックマーク登録もありがとうございます。いつも励みになっています。
不定期投稿ですが、次回も読んでくださると嬉しいです。




