表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人造勇者の理想郷  作者: 鈴花雪嶺
第二章 モンスターキャッスル
15/63

遭遇

 ユエナは強かった。俺はてっきりあの魔法しか使えないのかと思ってたけど。……これってだいぶ失礼だよな。後で何か埋め合わせしよう……。俺の気がすまないし……。


 そう思いながらユエナの戦いを見守る。正直、一方的だった。圧倒的に数が多い相手の攻撃をものともしていない。たまに俺の方に向かってくるやつもいるが、そういうやつは俺が殴って倒しておく。


 このままユエナの圧勝かと思ったのだが……。


 一匹のキラーバットがユエナの背後から襲いかかっているのが目に入った。


 これはまずい。流石に手を出してもいいだろう。


 「吹き飛べぇっ!!」


 気合を入れて拳を突き出す。だが、当然のように拳は当たらない。距離がありすぎるんだ。だが、それを補うのがさっき気合を入れた声と一緒に発動させた魔法だ。その魔法師より、キラーバットは大きな拳に思いっきり殴られたかのように思い切り吹き飛ぶ。


 「!?ごめん、ユウヤ。ありがとう」


 それに気づいたユエナがこちらを振り返り礼を言った。だが、それを見逃してくれるほど魔物たちは甘くない。その隙を逃さないとでも言うように一斉に襲いかかってくる。素人の俺にもわかる。これは形勢逆転だな。


 形勢が変わり、ユエナだけではもう逆転することはできないと判断し、収納魔法から魔力銃を二丁取り出し、高機動モードと行動予測を使いながら両手の魔力銃で襲いかかるキラーバットを撃ちまくる。


 「戦ってるときに集中しないのはだめだよ」


 「むぅ〜。ユウヤだって話してるじゃん。それに、手は出さないでって……」


 「ユエナだって最初はいい感じだったじゃん」


 「ユウヤが言うと皮肉に聞こえる……」


 「ほら、ここまで間合いが空いたらまたユエナが活躍できるだろ?あとは任せた」


 そう言うと俺は銃撃をやめ、ユエナと選手交代する。ユエナはなんとも言えない表情をしていたが、すぐに表情を引き締めて残りの敵を倒し始めた。


◉ 


 ユエナはすぐにキラーバットの群れを片付けた。それはもう、見事としか言いようがないほどに美しく、無駄がない動きだった。


 キラーバットを収納魔法に回収し、俺たちは更に先へ進む。


 「ユエナって強かったんだね」


 「私なんか全然……ユウヤのほうが強いじゃない」


 「俺は……本当は弱いんだよ。すごく……弱い。俺は力を使ってるんじゃなくて使われてるんだよ。俺なんかより、ユエナのほうがずっと……。それに、強すぎる力はいつか身を滅ぼすってよく言われるから……。俺だって、いつか……」


 「そんな事言わないで。ユウヤは弱くないよ。もし弱くて戦えなかったら……私がユウヤを守るから」


 「……ありがとう……」


 なんとなく気まずい空気の中、モンスターキャッスルを進んでいく。だが、魔物との遭遇でその空気も壊された。俺は魔力銃を構える。


 「任せて」


 「無理はしないでね」


 ユエナが前に出て、俺は後方から援護するように照準を定めた。



 キラーバットに遭遇してからは度々魔物と遭遇するようになった。


 くすんだ白色の狼のような魔物や……


 「任せて」


 ゴブリンやオークのようなよくいる魔物


 「任せて」


 キラーバットと再び遭遇したり……


 「今度は失敗しない」


 青色の普通のスライムや……


 「スライムは強い打撃が効かないし斬撃でも倒しづらいし窒息させてくる。魔法なら効く。ここは任せる」


 体を編みのように変形させてこちらを捕獲しようとする黄緑色のスライムや……


 「ここは任せて」


 深緑色の毒を持つスライム(体液は一応回収した)。


 「こんなのもいるのか」


 「任せる」


 体から湯気が出ていて一目で熱いとわかるスライムや……


 「……」


 「……」


 昆布のような匂いがするスライム……


 「…………」


 「…………」


 体液に薬効がある黄緑色のスライム(普通に襲ってきた。なお、体液は回収した)…………


 「…………また?」


 「…………まただな。任せて」


 カチカチに凍っているのに何故か動いてこちらを襲ってくるスライム…………


 「どんだけスライムでてくんだよ!?おかしいだろ!?」


 「さすがにおかしい。なにかありそう」


 ある一定の場所を超えてからスライムばかり出るようになった。これではモンスターキャッスルというよりスライムキャッスルだ。


 「どう思う?」


 「わかんない」


 「だよなぁ」


 なぜこんな事になっているのか俺たちにわかるわけもなく、モヤモヤした気持ちで先に進む。魔物に遭遇していないときは、俺たちはこの現象の原因について話し合った。


 「魔物がスライムになったとか?」


 「スライムが突然変異したのかも」


 「スライムが魔物を食べてこうなったとか?」


 「逆に魔物が突然変異してこうなったのかも」


 どの説も絶対になさそうだとわかってはいたが、他愛もない話をしているこの時間は俺にとってとても輝いているように見えた。


 「ねぇ、あれなんだろう」


 しばらく二人で話しながら進んでいると、急に魔物が出現しなくなった。そして、眼前にはうごめく黒い物体。黒くてどろどろしていてもぞもぞと動いている。まるで……、まるでスライムのようだ。


 「さぁ……俺はわからないな……スライム……じゃない?」


 そう。()()()()()のだ。世界中のあらゆる知識……もちろん魔物についての情報も記憶させられた。そんな俺がわからない。別に傲っている訳では無いが、これが導き出す結果は……


 「新種……か……?」


 俺の右目のカメラの機能である望遠機能を使い、更に別の機能であるサーモグラフィーを使う。どうやら動いている物体の温度は低いようだ。


 ……サーモグラフィーであまり情報が得られないのなら、別の機能で情報を手に入れればいい!右目の更に別の機能である魔力を可視化する機能を使うと、あの物体にはどうやらかなり魔力が含まれていることがわかった。


 ……チラッ。


 ユエナをチラ見してみる。


 「えっ」


 思っていたよりも多い……というかかなり多い(人間基準で)の魔力を持っていた。これが魔人の中ではどうなのかは分からないが、俺の持つ情報では少ないらしい。なんであいつらは人間や魔人、他の種族の魔力の平均所持量なんて知ってたんだろうか。そんなことを考えながら、俺はユエナの個人情報(?)を勝手に見た挙げ句また失礼なことを考えていたことで心を痛めた。


 「なに?どうしたの?」


 こちらを向いて声を上げた俺に向かってユエナが何事かと聞いてくる。ヤバい。罪悪感が……。


 「ごめん……」


 「え?急にどうしたの?」


 「いや……その……」


 「ん?」


 言いよどむ俺の顔を覗き込むようにユエナが俺の顔を見てくる。可愛い女の子にじっと見つめられるだけでも目をそらしたくなるのに罪悪感で余計に……。しかも俺は謝ろうと言うときにこんなことを考えるなんて……更に罪悪感が……。


 「ごめん!俺、ユエナの魔力量勝手に見ちゃった!しかもユエナは勝手に戦えないと思ってたし、魔力量も少ないと思ってた!ごめん、勝手に酷いこと思って……」


 「そうやってわざわざ言ってくれるんだ。ユウヤってよく不器用って言われない?」


 「……ごめん」


 「気にしないで。それくらいでユウヤのこと嫌いになったりしないから」


 「……ごめん」


 「謝らないでよ。あれ、なに?今はそれに集中しよう?」


 「……うん」


 気分は沈んだが、目の前の黒い物体に向き直り、こういうときに便利な魔法、アナライズを使おうと思ったとき……急に黒い物体の動きが早くなり、形を変えていく。


 「なに、あれ……」


 「ッ!?」


 目の前の異質な光景にユエナは恐怖しているようだ。俺は魔力銃を構える。


 その間にも黒い物体はぐねぐねと動き変形し、ついには……


 「うそ……」


 「人間……?」


 人間の形をとった。身長(?)は百七十五センチほどだろうか。顔はなく、人間の形と言ってもマネキンに近い。


 俺の機器感知機能が反応している。それもとても強く。これほどの反応はあの化け物と戦ったとき以来だ。


 俺に恐怖にも似た危機感のような形容しがたい感情が溢れ、それに突き動かされるようにほとんど反射的に必殺の一撃を叩き込んだ。


 ガキガキンッ!!という音とともに右手首から二本の爪のような形状のナイフを展開し、強化された身体能力を全開にして地面を思い切り蹴り、それに合わせて足裏から爆風を圧縮して噴射し加速、更に背中からも圧縮した爆風を噴射し更に加速。右手のナイフを突き刺す瞬間に肘からも圧縮した風を噴射し、極限まで威力を上げる。そんな必殺の一撃が、いま、放たれた!!


 コンマ秒の速さで一気に距離を詰め、思い切り腕を突き出し、目の前の得体のしれないモノにナイフを突き刺した。


 ガキィィィィィン!!


 「なぁっ!?」


 「え!?」


 俺とユエナから驚きの声が漏れる。


 それもそのはず。普通の生物を一撃で、オーバーキル気味に倒すことができる、文字通りの必殺の一撃。


 それをモロに食らったはずの目の前のモノは先程までの柔らかさからは想像ができないほど硬く、直撃の瞬間に金属同士が強く打ち付けられたような音を響かせた。俺のナイフは刃先が数センチ刺さっただけであまりダメージは入っていないように見える。


 俺が次の攻撃を仕掛けようとした瞬間、目の前のモノは腕を大きくしならせながら伸ばし、鞭で辺りを薙ぎ払うように俺を攻撃した。


 「グゥッ!」


 俺の腕から赤い液体が流れる。こんな時だし今更だが、今も自分に赤い血が流れていることに驚いた。


 ……だが、俺がユエナに言ったように戦闘中に注意をそらすのは厳禁だ。


 今度は鞭のようにしならせた腕を頭上から振り下ろしてきた!!


 それを機器感知と行動予測で直前に察知した俺は高機動モードでその攻撃を避ける。


 攻撃が外れて黒いやつの腕は地面に食い込んだ。それは、まるで鋭利な刃物のように。


 「分析(アナライズ)!!」


 今更だがアナライズを使う。


 ――― unknown ―――


 「はぁあ!?」


 アナライズで調べられない!?こんなこと一度もなかったぞ!?この結果から導き出されることは……


 「逃げろ!!」


 俺は叫ぶと同時に高機動モードに入り、ユエナを抱えてアナライズで出したモンスターキャッスルの地図を駆使して一目散に脱出した。

今回も読んでくださりありがとうございます。高評価、ブックマーク登録もありがとうございます。いつも励みになっています。

不定期投稿ですが、次回も読んでくださると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ