表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人造勇者の理想郷  作者: 鈴花雪嶺
第二章 モンスターキャッスル
14/63

少女の舞踏、刃の閃き

 ――――モンスターキャッスル――――


 それは、数百年前に廃城になった城に魔物が住み着いたことでできたダンジョンである。その最深部は未だ誰も知らない。果たして、そこに眠るのは輝かしい称号か、一生遊んで暮らせる財宝か。それとも……


 っていう感じの文章がゲームだったら流れてくるんだろうなー。なんてくだらないことを考えながら俺はユエナとモンスターキャッスルに向かう……というか、たどり着いた。


 それほど長くない距離を歩き、到着した廃古城の重々しい扉を躊躇なく開ける。


 開かれた扉の先からは石造りの建物特有のひんやりとした空気が流れてくる。廃城で魔物に占拠されているということもあり明かりはなく、少し先は暗黒が広がっていた。扉を閉めれば中は真っ暗になるに違いない。探索には明かりが必須だろう。


 「照らせ」


 一言。想像を補う言葉を発し、光を放つ球体を魔法で作り出す。


 ふわふわと辺りを漂い、俺たちの周りをある程度明るくできる位置に止まった光球を見て、ユエナは感心したような、少し悲しいような表情になる。


 ……俺の魔法に驚いているのと、自分が魔法に長けた魔人なのに一つの魔法しか使えないからだろうか。


 俺にはユエナの苦労や気持ちはわからない。……でも、彼女には笑っていてほしいな。


 ユエナの頭を軽くポンポンと撫でて、先へ進もうと促す。


 「行こうか」


 「うん」


 ユエナは嬉しそうに優しく微笑むと前を向いて歩き出した。


 俺は、ユエナが俺の慰めに気づいた上で、その優しさと気遣いに笑ってくれた気がした。


 「そういえばさ、ユエナは使いたい武器とかないの?」


 「なに、急に」


 「いや、ユエナは魔法で戦うけど、魔法が使えない時とか、魔力を温存しておきたい時とかあるでしょ?その時のための武器。何かない?」


 歩きながら俺はユエナと武器の話をしていた。


 ユエナの魔法は強力だけど連発できるわけではない。間に使う武器があったほうがいいだろう。


 「じゃあ……短剣をちょうだい」


 「短剣?ナイフみたいなもの?」


 「うん」


 俺は収納魔法の中にしまってある科学側の作ったロボットの残骸を取り出し、吸収、物質を変化させて形を形成し、シンプルなデザインのナイフを2つ作った。更に、そのナイフに魔法強化と切れ味強化の魔法をかけて性能を上げる。同じく残骸で作った鞘に入れてユエナに渡した。


 「ありがと」


 短くお礼を言ったユエナはナイフを装備できるようにつけておいたベルトを巻き、そこに鞘に入ったナイフを装着する。


 「どう?」


 「いつもと違って少し動きにくいけど……大丈夫」


 「そう?なら良かった」


 これでユエナの武器の問題はクリアできたな。前の化け物との戦いでは、自分の手数の少なさと火力の無さが問題だった。その問題を解決するためにもっといろいろな武器を作らないといけない。


 魔法はいいのかって?一応研究はしている。新しい魔法を思いついたら試してはいるけれど、俺は改造された影響で既存の魔法はもちろん、オリジナルの魔法も使うことができるから早急に準備すべきものは武器だ。


 新しい武器の構想を練りながら、思いついたらすぐに生産しつつ、モンスターキャッスルを進んでいく。光球は俺たちがちょうどいいと感じる明るさの距離を保ちながら俺たちと一緒に移動している。


 コツコツという足音とカチャカチャという金属音を響かせながら、たまに会話をはさみつつ、何度も分岐する長い廊下を適当に歩いていく。


 すでに入り口のような整備された古城という雰囲気はなく、いつの間にか四方は土に囲まれていた。どうやら地下に来ているらしい。通ってきた道の中には傾斜があったりガタガタしていたりした道があったから多分そのせいで現在地が地下になったのだろう。


 この城は外観が廃城になる前の城と変わっていないので魔物は地下に増築していったことになる。


 今俺達がいるのは歩いた距離的にまだ城の地下だと思う。モンスターキャッスルの中は迷路のように入り組んでいてぐるぐる曲がったり緩やかに道が曲がっていたりと距離感覚が狂うが、歩いた体感時間と勘はまだ城の下にいると言っている。


 初めてのダンジョンにワクワクして周りをキョロキョロ見回していたが、景色はほとんど変わらない。三百六十度土だ。だが、このワクワクは止められない!例え周囲の景色が変わり映えしないものだったとしても、周りを見回すことはやめられないのだ!


 と、興奮気味に歩いている俺の前に手を出してユエナが俺を制止した。


 「?どうしたの?」


 「魔物がいる」


 ユエナが小声で答えた言葉を聞いて、一気に頭が覚醒し、周囲を警戒しながら魔物の位置を探る。


 警戒しつつ周囲を見回すと、今歩いている通路(洞窟?)の天井に数十匹のコウモリがいた。


 一匹の大きさが三十センチくらいで鋭い牙と鉤爪を持つ。口から牙が四本見えており、その牙が赤いことがそのコウモリが魔物である見分け方だった。


 「キラーバット」


 「そうだね。じゃぁユエナは後ろで……」


 ユエナが魔物の名前を口にする。


 空を飛べる機動力と持ち前の速さをいかして立ち回り、鋭い爪や強力な顎で攻撃してくる。


 この魔物は吸血コウモリなので噛みつかれると吸血されるときもある。その吸血力も(普通の吸血コウモリがどのくらいかは知らないが)普通の吸血コウモリよりも強力だ……と記憶メモリにあった。


 だが、俺たちはここまでの旅ですでに何度もこいつらと戦っている。この世界ではよくいる危険度もあまり高くない魔物の一匹だった。


 いつものように俺が戦おうとすると、ユエナが俺の言葉を遮った。


 「私がやる」


 キラーバットを倒そうと前に出ようとした俺の前に出たユエナは腰の短剣を抜き、構えた。


 「でも……」


 「大丈夫。私だって戦える」


 そう言ったユエナの表情は覚悟を決めたような引き締まった、緊張したような、今までに見たことがないくらいに真剣な表情だった。


 「手は出さないで」


 短く言うと、ユエナは天井にびっしりととまっているキラーバットの方をしっかりと見据えて戦闘態勢に入った。


 準備ができたのか、ユエナが先に動き出す。キラーバットたちはまだこちらに気づいていないようだ。


 カンッ!カンッ!カンッ!


 突然ユエナが二振りの短剣を鞘から抜いて打ち鳴らし始めた。


 何やってんだ!?そんなことしたらせっかくの奇襲の意味がなくなっちまう!


 案の定一斉に天井にいたキラーバット達が一斉にこちらに向かって飛んでくる。


 俺は何があってもすぐに対応できるように拳を構える。


 と、その時、キラーバットの群れの中の一体がユエナに向かって噛みつこうと口を大きく開けて勢いよく飛びかかった!!

 

 俺がユエナの前に出てユエナを庇おうかと迷ったその時――――!


 ユエナが半歩身を引いた。そのせいでユエナを狙っていたキラーバットは狙いがズレてユエナの脇を通り過ぎて行ってしまう。そのすれ違いざまにユエナは拳を前に突き出すように短剣を振るい、キラーバットの半身を大きく切り裂いた。相手がかなりのスピードでこちらに向かってきていたのと、付与魔法で強化された切れ味のお陰でキラーバットは血しぶきを撒き散らしながら絶叫し、そのまま俺の横に落ちて絶命した。


 これは……杞憂だったかもしれない。


 その後もユエナは何十体と襲い来るキラーバットたちの攻撃をくるくるとダンスでも踊っているかのように躱しながら、すれ違いざまの一撃で次々と葬っていく。


 しばらく洞窟の中には短剣に反射する光がキラキラと輝いていた。

今回も読んでくださりありがとうございます。高評価、ブックマーク登録もありがとうございます。いつも励みになっています。

不定期投稿ですが、次回も読んでくださると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ