新たな冒険の始まり
あの時の少女……ユエナとともに旅を始めてはや数日。現在俺たちは地図上ではサムマジスの魔術側の手前にある宿場町ルスキヤに来ていた。
ここに来るまでに野宿をしたり、風呂代わりに川で体を洗ったり、ユエナの距離がたまに近かったり、途中の村で宿泊するときに同室がいいと言われたり……まあ色々あったのだが、それはまた別の話だ。
ルスキヤはサムマジスのように石畳というわけでもなく、規模が大きく店や家が多い村という感じだ。サムマジスに来る旅人やサムマジスから出てきた旅人はよくここで休むらしい(ルスキヤもサムマジスに所属している)。
俺たちは今、噴水の縁に腰掛けて昼ごはんを食べていた。メニューは露天で売っていたサンドイッチだ。ユエナは美味しそうにもむもむと口を動かしている。俺も味わいながらのどかな風景とともに食事を楽しんでいる。
こうしていると、すぐ近くの街で大惨事があったとはとても思えない。
今、あの街はどうなっているだろうか……。俺はあの惨劇があった場所(サムマジスの王都だったらしい)を思い出しながら、王都の方角を眺めていた。
「どうしたの?」
「ちょっとね……。サムマジスが気になって」
「きっと大丈夫だよ。ユウヤがあんなに必死に守ったんだから」
「うん……そうだね」
不安そうな顔をしながら話しかけてきたユエナ。励ましてくれたのか……。だめだな。この娘の方が不安なんだ。知らない場所でいつ嫌なことをされるかわからない……。俺がこんなんじゃダメだ!
パン!と頬を叩いて気持ちを切り替える。
「……大丈夫?」
「うん。……行こうか」
まだどこか不安そうだが、少し表情が明るくなった気がした。
「ねぇ、どこに向かってるの?」
昼ごはんを食べていた噴水がある広場を出て、俺たちは大通りを歩いていた。目的は装備を整えることだ。
「服がボロボロになっちゃったから買い換えようと思って」
そう言って眼の前の服屋の扉を開ける。ユエナは興味津々といった様子で俺のあとについてきた。
「服って意外とするんだな……」
「でも、似合ってるよ?」
「ありがとう。ユエナも似合ってるよ」
服屋から出てきた俺は、予想以上に服の値段が高かったことにげんなりしつつ、褒められたお礼も兼ねて素直な感想をユエナに述べる。
俺たち二人はこの服屋で服を一新した。
俺は以前のボロボロになった服に似たデザインの黒のTシャツとズボンを何着かと、同じくボロボロになった外套の代わりにフードとポケットが付いた紺のコートを購入した。ファッションや流行には疎い方だったので、当たり障りないような無地の物を選んだ。
ユエナは以前は茶色のロングスカートに白のブラウス、その上から茶色のベストのようなものを着ていて、普通の(いい意味で)町娘のようだったが、今はフリルの多い白のブラウスに黒のスカート。頭には大きな黒のリボンが付いていた。あまり異性に耐性がない俺が直視するのが難しいくらいには可愛かった。控えめに言って、すごく可愛いし、似合ってる。
ユエナは目のことを気にしていたが、俺がそんなことは気にしなくていいと言ったら、おずおずと、今の服を選んだのだ。ユエナも似たような服を何着か購入し、服屋での買い物は終わった。
俺がコツコツと貯金をしていた為、二人分の十分な衣類を購入しても経済的にはまだ余裕がある。
……そうだ、武器はどうしよう。今は魔力銃しか武器がないからもう少し別のベクトルの武器も欲しいな。とりあえず、剣くらいは作っておくか。
俺たちは人気のなさそうな空き地に移動して、戦争のときに回収しておいたロボットの残骸を取り出して吸収し、一メートルくらいの長さのシンプルなデザインの剣と反りが入った片刃の剣……刀を作った。刀にはちゃんと刃文も入っている。
刀と剣を二振りずつ。それからそれぞれの半分くらいの大きさの短剣も二振りずつ作った。
それらの武器に魔法強化と魔力を込めている間切れ味が鉄を簡単に着ることができるくらいには良くする魔法をかける。
「……よし!」
俺はイメージ通り作ることができた武器と残りのロボの残骸を収納魔法にしまう。
「さっきの剣、なんか変わった形だったね」
「アレは刀って言って俺のいた国の剣なんだよ。切れ味が良くてすごい剣だったらしいよ?」
「ふ〜ん。初めて聞いた……」
ユエナはさっき見た刀を思い出すように目を細めた。
装備は整ったし、これからまた冒険が始まるのか。俺は少し気を引き締めながら、ユエナと冒険者ギルドへと向かった。
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