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1-5 ナリテ村




チャプター05


ナリテ村







王都とナリテ村との街道で誰ともすれ違わない。

昨日だけというのならばまだ偶然で済んだ話だが、次の日も、となれば話が変わる。

ナリテ村に到着する10Kmほど手前、もう一息で村に着く距離ではあったが、

その日は村に近づきはせず、日が昇るのを待ったのも危険を察知したからだ。

寝泊まり用のプレハブ小屋を金属錬成で分解してから、出発の準備を整える。

改めて皆に確認と、ヒィロが話し出す。


「さて、ナリテ村で何かが起きてると考えたほうがいいかもね」


今この世界では人類と魔族の戦争中だという。

そんな状況で、王都と資源の重要拠点から何の行き交いが無いとは考えられない。

もし村に辿り着き、杞憂だったならばそれでいい。

だが、用心するに越したことはない。


「……テン、あまり気は進まないけど、戦う事になるかもしれない。

 君に剣を作って欲しいんだ」


わざわざ俺が武器を作ることに気を遣うヒィロ。

俺は別に平和主義者ではない。

そんな事を気にするな、と俺は剣を錬成してヒィロに渡す。


「ありがとうテン。……ねぇ、ところでこれ、見た事がない金属な気がするんだけど?」

「ああ、前に二人がゲームで一番レアな金属と言っていたオリハルコンという物で作ってみた」


軽いのに超硬度だったので剣には最適な材質と言えるだろう。

ただ硬すぎて普段使いの自転車には不向きだったので、フレームに使うならピストバイクぐらいがいいだろうか。

ヒィロの顔が、苦虫を噛み潰したようになっている。


「ねぇテン、オリハルコンの価値って……知ってる?」

「ん? 高いのか?」

「いや、高いなんてモンじゃないよ……。けどありがとう、使わせてもらうよ」


次はヨツナが、こちらは欲しい物の決めてあるらしい。


「テン、あたしも魔法を制御・増幅するための杖が欲しいな。

 ミスリルっていう金属製がいいんだけど。あと先端には宝石をつけてくれる?」

「わかった。ミスリル……というのはこれか」


魔力を含んだ銀、ミスリルという金属もあるのか。

特性としては、魔力に対する強い耐性があるようだ。

遠距離での魔法戦闘の際には、圧倒的に有利に立つ事が可能、という事か。

ミスリルはオルハルコンとはまた違う、ふわりと形容していい不思議な金属だ。

強度はあとで試すが、各種コンポーネントに採用しても面白いかもしれない。

作り出した杖の先端には要望通りに宝石を埋め込んでおいた。

ダイヤ、ルビー、サファイア、アクアマリン、エメラルドの5色もあれば十分だろう。

受け取ったヨツナはバトンよろしくくるくる回転させて試し。


「やった♪ こんな宝石、宝石商だってそうは持ち合わせてないわよ♪」


性能よりも宝石のほうに興味が惹かれているようだ。

まぁ、鉱物であればなんであっても作り出せる今、宝石の金銭的価値に興味はないが。


「それじゃあ出発しよう」


村までもうすぐ、ここから先は自転車を隠しおいて、歩いていくことになった。

相棒のXU1を置いていくのは不満だったが、

さすがに自転車で走るのは目立つのと、戦いになって壊されても困る。

盗難されないように念入りに隠蔽工作をしておいた。

木々の隙間を抜けながら少しづつ村へと近づいていくと。

村の周辺を哨戒中と思われる、緑色の肌をした小さな怪物が居た。

二本足で歩き、不格好な木の棍棒を握りしめている。


「なんだ、あの醜い化け物は?」

「あれはゴブリンだね。

 魔王軍の中では最弱に部類する戦闘力だけど、

 とにかく繁殖しやすいから偵察や数合わせの戦力に使われてるんだ」


俺の小声の問いにすぐに答えてくるのはヒィロ。

なぜ知っているのかと目で問うと。


「僕のスキル『大勇者』の力だよ。

 あのゴブリンを見たらすぐにモンスターのデータが頭に浮かんだんだ。

 それと急所の位置とこれからの行動予測もね」

「『大勇者』とは、完全に戦闘用のスキルというわけか」

「それと、ある程度の範囲なら感覚で索敵できるね。

 村の各所に上位モンスターも配備されてる。

 村人はいくつかの家に集められて監禁されてるみたいだね」

「あたしも魔力感知で索敵したけど情報は同じ。

 中央にかなり大きな魔力反応があるから、これが親玉っぽいわね」


戦闘特化のスキル持ち二人は顔を見合わせ頷く。

次の行動を決めたようだ。


「テン、マレジキさん、僕とヨツナでこの村のモンスターを倒す」

「元々人を助けるためにこの世界に呼ばれたわけだし、ゴムの木ついでにお役目果たしてくるわよ」


2人ならばそう言うとは思った、ならば俺もと言い出そうとしたところで、手で制される。


「あんたはナナミを守ってて」

「しかし――」

「こっちは戦闘職。あんた達にはここに来るまでに大分と頑張ってもらったんだから。

 あたしたちの役目ぐらい譲りなさいよ」


有無も言わさぬ、こういう時の二人の頑固さはよく知っている。

ゴムの木を欲したのは俺なのだから、些か納得しかねるが。

友二人の言い分もわかる。

それに、マレジキを守る事も大切か。


「わかった、だが、助けが必要ならばいつでも呼べ」

「お二人とも、ご武運を」


任せてと、戦いに向かう2人の背中が、とても頼もしく見えるのだった。






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