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1-1 異世界召喚



自転車が好きだ。


日常にありふれ過ぎた二輪の軽車両、その存在はもはや生活の基盤ともなっている。

自転車が好きだ、ずっとずっと昔から。

だから俺は”この世界”でも自転車と共にありたいと願うのだ。

俺達の本来住む世界ではない、この異世界であっても。







チャプター01


異世界召喚






それは学園の教室、昼の事だった。

俺『ワグルマ テン』は二人の友人と机を合わせていつも通りの昼食をとっていた。


「――ははっ、テンは本当に自転車以外に興味ないんだね」


彼女とかいらないの? と言われても興味のわかぬ俺を、

テンらしいね、と笑うのは赤髪が特徴の『ケンム ヒィロ』。

その横でテンは顔だけはいいんだから、と笑う青髪の『コウマ ヨツナ』は。


「チャリならチャリで、可愛い女の子とサイクリングとかやってみたいと思わないワケ?

 17歳の枯れっぷりじゃないわよ? フフン、なんならあたしの友達を紹介してあげよっか♪」


またその話か。ヨツナは最近になって随分と色恋沙汰を俺に押し付けてくるな。

チラリと見やる視線の先には、クラスメイトの黒髪の女子。

名前は確か……『マレジキ ナナミ』だったな、を気にしているように見える。

マレジキと目が合い、頬を染めてさっと逸らされた。


「俺に、お前らみたいなスキンシップを期待するな」


こんな教室の中でも暑苦しいぐらいに身を寄せ合ってお揃い弁当をつつくヒィロとヨツナ。

微笑ましくはあるし応援もしているが、俺がそんな事をする姿が想像できるのか?

まぁヨツナの事だ、自分とヒィロが共に在ることで得られる幸福を俺にも感じて欲しいのだろう。

余計なお世話とまでは言わないが、あまり押し付けられるのも億劫だ。

なおも続く恋愛のススメに、はやく予鈴が鳴らないかと俺が時計に視線を向けた、その時だった。


突然、教室全体が光に包まれた。


なんだなんだと教室に居たクラスメイト達が慌てふためき。

次の瞬間、周囲には見知らぬ光景が広がっていた。

高さ3メートルはあるだろう巨大な女神像がそびえたつ広間に、

教室に居た24人のクラスメイトとロッカーに机に椅子。

教室の内側だけをくりぬいてこの場に持ってきたような光景だった。

その周囲を囲む白い服の怪しい連中。

中でもひと際目立つ金色の法衣を纏った老人が声をあげた。


「よく来た! 我らポーラン聖王国を救うために招かれた勇者達よ!」


俺の対人経験上、人に理解をされる前に自分の要件を口にする人間に良いイメージはない。

俺の前でヒィロとヨツナも当然頭の上にハテナを浮かべており。

クラスメイトの一人、委員長のメガネ男子がまず第一声。


「あの、これはいったい、何事でしょうか?」


当然の質問で、この場全員の共通認識。

そこから説明をされた内容は、なんとも荒唐無稽な話だった。

この世界は俺達の居る世界とは全く違う世界であり。

いま居るポーラン聖王国は魔王と呼ばれる悪者の攻撃を受け、このままでは滅亡する。

それらに対抗するために別の世界から勇者と呼ばれる戦力を召喚した。

それこそが、今ここに居る俺達だというのだ。

冗談じゃないと、クラスメイトの女子グループが抗議する。


「ふざけんじゃないわよ! 元の世界に帰しなさいよ!」

「アタシ、今日カレピとデートの約束あんだけどぉ?」

「このような狼藉、許される事ではございませんわ」


クラスメイト達は一同にそうだそうだと同調するが、さきほど神官長と名乗っていた老人の答えは。


「諸君らを元の世界に戻す事はできん。

 見事魔王を討伐し、役目を果たせば女神シチーセブン様が元の世界に帰還させてくれよう」


無論、巻き起こるブーイング。

悪びれもなにもない、ただの誘拐事件だなこれは。

さて、俺の隣にいるヒィロとヨツナはというと。


「はぁ、まいったねこれは」

「夢ってわけでもなさそうだし。ううん、これが異世界召喚ってヤツかー」


困っているが、なんとなく状況を受け入れつつある友人。

”イセカイショウカン”というのはなんだ?


「こういう事はよくある事なのか?」

「あはは、ゲームやマンガなら、ね」

「昔から使い古された話よ。

 まさか現実になるなんて思いもしなかったけど」


ふむ、少しでも知っているというのなら、確認したい事がある。


「その異世界というのは、自転車はあるのか?」


苦笑いを浮かべるヒィロ。

盛大なため息をつくヨツナ。


「じ……自転車は、異世界モノでもみないか……な」

「こんのチャリバカは、どこであっても健在ね」

「そうか、自転車はないのか……」


見知らぬ世界の自転車があるのならば是非拝んでみたかったのだが。

俺がこの世界に意味も興味を失うのには、十分すぎる返答だった。


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