スライム討伐会議
「はい!集合!!」
「なんだよ~」
「どうしたんですかー」
「いいか、よく聴け?このパーティーは財政難である」
「「はぁ」」
「はいそこ!他人事みたいな反応するな!」
「といわれても、実感湧かないし」
「これからの食事が霞になるかどうかの瀬戸際だぞ!」
「固形物すら買えないんですか......?」
「ああ、そうだ!底辺のさらに底辺の生活を送ることになる!」
「やっべぇじゃん」
「やっべぇんだよ!だから、作戦会議すんぞ!」
「なんの作戦です?」
「スライム討伐作戦だ」
「はっ、スライム~??あの最弱のモンスターに作戦とかいらないっしょ!」
「そうですよ~!最弱モンスターランキング殿堂入りのスライムですよ!そんなのに作戦立てるとか、私たちクソザコ過ぎません?」
「クソザコだろうが!!思い出せ!現実逃避するな!俺たちは、スライムに!勝てないんだ!新人冒険者が必ず勝てるはずの最弱モンスターに勝てないんだよ!」
「な、なにいってんだよ、そんなはずないだろ!」
「昨日もコテンパンにやられただろうが!」
「そ、そんなわけないじゃないですか」
「じゃあ、昨日なにしてたんだよ、記憶喪失か!あぁん!?」
「ドラゴンを倒しに]
「夢だ、永眠しろ」
「魔王を倒しに」
「脳の病気だ、土に還れ」
「辛辣すぎませんか?」
「わかったわかった、悪かった、冗談だ。俺たちは底辺オブ底辺のクソザコパーティーだ」
「そうですね、現実をみましょう」
「お前らが言うのは釈然としねぇが、話を進めるぞ」
「あー、スライム討伐作戦だっけ?」
「そう、スライムだ。
スライムさえ倒せれば、おれたちのランクもあがって高額報酬のクエストが受けられるようになる」
「そうだな!スライムが倒せれば...」
「そうですね!スライムが倒せれば...」
「「倒せねぇよなぁ」」
「諦めてんじゃねぇよ、バカ二人!」
「だって、バカ一人」
「だって、バカ一人」
「「あぁん!!」」
「まず、現状確認だ」
「スルーしたぞ、あいつ」
「ええ、そろそろ真面目にやりましょうか」
「職業いってみろ!」
「勇者でーす」
「賢者でーす」
「なんでお前らスライムに勝てねぇんだよ......!!」
「「さぁ?」」
「さっきから、ちょくちょくハモるのやめろぉ!腹立つ!なんかそれ腹立つ!」
「「仲良しなんで」」
「それやめろぉ!!」
「まぁ、勇者であるこの俺がスライムに勝てない理由は簡単だ」
「一目瞭然ですよね」
「だよな、だって、おれの装備、ヒノキの棒と鍋の蓋だぜ?」
「もっといいもの装備しろよぉぉぉ!!!」
「いや、俺だってそうしたいよ?そうしたいけどさ、魔王の呪いでこれしか装備できねぇの」
「意味分からん呪いをかけてんじゃねぇよ、クソ魔王が!!!!」
「魔王に故郷を滅ぼされた人みたいな顔してますよ」
「しかもこれ、四、五代前の勇者様の呪いを受け継いでる形だから、実質、俺関係ねぇよな」
「さっさと解呪しろや!」
「いや、これ、相当高度な呪いらしくて解呪不可らしいんだよ。しかも、命に別状ないってことで、ほっとかれたみたいだから、録に研究されてねぇし」
「生活費の危機なんですけど!命に別状ありますけど!?」
「巷で噂の棒切れ勇者とは俺のことだぜ!」
「ひゅーひゅー、かっくいいー!」
「羞恥心思い出せ??」
「ふっ、そんなものとうに捨てたわ」
「手遅れだった」
「私がスライム倒せないのはですね、当たり前の話なんですよ」
「なんか語り出しだぞ」
「だって、前衛が棒切れ勇者ですよ?そんな貧弱な壁で後衛に何ができるというんですか?詠唱が終わりませんよ」
「いいたいことは、分かる。
だが、相手はスライムだ。
魔法が弱点で、数秒の詠唱で終わる下級魔法で倒せるんだ。
それを踏まえて聞こう。
お前に非はないか?」
「ええ、全て棒切れ勇者が悪いのです」
「こいつぁマジだ。
本気で自分が悪くないと思ってる。勇者の俺が断言する。
見てみろよ、この澄んだ瞳を」
「この世の邪悪を煮詰めた瞳にしかみえない」
「よせやい」
「どこに照れる要素があった?」
「というか、なんでいっつも長文詠唱なんだよ。
完成したとこみたことないけど、どれくらいかかんの?」
「五分ぐらいですかね」
「モンスター相手に五分棒立ちは死ぬ」
「というか、あれ発動したらどうなんの?」
「下級魔法のファイアーボールが発動します」
「なんだって!?超高密度の魔力をぶつける、基本にして究極の技、フールオブマジックだって!!」
「落ち着け、戻ってこい。現実をみろ」
「だって、だって....!!」
「まぁ、聞いてくださいよ。長文詠唱の理由は、魔法バカだったご先祖様が関係しているんです」
「またかよ!また前の世代からの負の遺産かよ!!」
「簡単にいうとご先祖様と悪魔との契約の代償ですね」
「おぉ、結構えげつないことやってんな」
「しかも、魔女狩り全盛期の時代ですからね。気合い入ってますよね~」
「...........悪魔との契約の代償っていったか?」
「ふっ、勘がいいですね。そう、契約です。呪いと違ってこっちは取引なんですよ。デメリットだけの契約なんてありえないでしょう?」
「まさか!」
「そう!この契約のメリットは!!」
「メリットは!?」
「全てご先祖様に持ってかれました。子孫にはデメリットしかないです!!」
「そんなことだと思ったよ、コンチクショウ!」
「はっはっは、うける」
「黙れ、棒切れ勇者!!」
「一旦、私たちの戦力を整理しましょうか?」
「ヒノキの棒と鍋の蓋装備の勇者と」
「五分かけて下級魔法を発動する賢者と」
「「ツッコミ」」
「ハモんな!というかツッコミは職業じゃねぇよ」
「じゃあ、なんですか」
「生き様」
「かっけぇ」
「キュンときた」
「というか、マジでどうすんだよ?
俺の職業、荷物もちだぞ?」
「いつもお世話になってます!」
「あざます!」
「うるせぇ!
荷物もちが必要なほどの旅もしねぇし、
そもそもお前らの荷物少ないから、俺ほぼ手ぶらだわ!」
「その他諸々の雑用してくれるじゃねぇか」
「荷物もちよりマネージャーっぽいですよね」
「お前らが何もしねぇからな!」
「落ち着けよ、血圧上がるぜ?」
「誰のせいだと思ってる!」
「というか、なんでお前が戦わねぇの?」
「そうです、そうです。サポート職だからといってスライムには勝てるでしょう?」
「いや、それはだな...」
「っは!スライムにしか興奮できない異常性癖の持ち主....?」
「なるほど」
「なるほど、じゃねぇわ!!!」
「え、違うの?」
「違うわ!!」
「あ、ゴブリンの方?」
「モンスターから離れろ!俺の性癖はノーマルだ!!」
「お前、このまえ美女の膝の裏に挟まれたいとか言ってなかった?」
「それはノーマルだろ」
「ちょ、急に狂うの止めて貰っていいですか??貴方がいないとこのパーティー詰むんですけど」
「流石、ギルドの問題児を寄せ集めたパーティーだな。お前にもなにかあると思ってたんだよ」
「え、俺、性癖だけでお前らに並ぶ問題児だと思われてんの??」
「まーまー、それで結局なんでスライムを倒さないんですか?」
「.........お前らと一緒だよ」
「「??」」
「俺もやっかいな呪いがあんだよ!!」
「やっぱりなんかあったな」
「ですね」
「それでどんな異常性癖なんだ?」
「呪いだっつってんだろ!?」
「いやでも、性癖も呪いみたいなもんじゃないですか」
「話が進まねぇから!頼むから!性癖から離れて!?」
「しょうがない」
「ええ、そこまでいうならしょうがないですねぇ」
「はぁ、俺は武器が持てないんだよ」
「なんでまたそんなことに?」
「家は代々鍛冶に携わってる家系なんだが、そんなかでも、まぁ神具とかそんな感じの神様に納める道具を作ってたんだ」
「あ、なんか展開読めたわ」
「私も」
「そーだよ!!ご先祖がやらかして天罰くらってんだわ!!」
「仲間だったか」
「早くいってくださいよ、呪われ仲間じゃないですか」
「いやだー!こんな仲間に入りたくない!」
「パーティー組んでおいてなんて言い草」
「まぁ、私たち余り物ですしね。消去法消去法」
「うぅ....どうしてこんな目に」
「......あ、思い付きました」
「お?どした?」
「人の悲しむ姿から思い付かないで貰えます??」
「スライム討伐作戦」
「嘘でしょ?思い付く要素あった?」
「賢者、嘗めないでください!」
「なんで堂々とそんなこと言えんの?」
「過去の失敗など秒で忘れます」
「覚えてよ、覚えて反省しよ?」
「それでどんな作戦?」
「取り敢えず、討伐にいきましょう!」
「そんで、スライムの森にきたけどどうすんの?」
「いいですか?
実は私たち、スライムを倒せる力はあるんです」
「ないです」
「真顔で言わないでくださいよ。めっちゃ怖い」
「確かに、賢者の魔法が当たれば倒せるはずだよな」
「非戦闘員を抱えながら、ヒノキの棒と鍋の蓋でモンスターを相手にし、攻撃に五分かかるという前提があるけどな」
「実は私、魔法を待機状態で維持出来るんです」
「つまり、発動準備をすることで詠唱を短縮することが出来ると」
「そうです!一発しか放てないという欠点がありますが!そこは勇者さんに頑張ってもらいましょう!」
「ふっ、任せとけ」
「お、おぉ!ちゃんとしてる!ちゃんとしてるぞ!!」
「伊達に賢者名乗ってませんよ」
「巷で噂の無駄飯ぐらいの駄賢者、通称、駄賢は、ちゃんと賢者だった!」
「そんな犬みたいな呼び方されてるんですか!?」
「仲良くしようぜ、駄賢!」
「棒切れ勇者に仲間意識持たれました!こいつ自分と同類みて安心してます!!」
「いいからやろうぜ!」
「むぅ、分かりました。いまから詠唱しますんで、完成したらスライム探しにいきましょう!」
「おう!」
「世界の理に記せれた、五大元素の灯火よ。火を司る偉大なる大精霊イフリートとの誓約の元、我、幻界から力の奔流を求める」
「いっつも思うだけどさ」
「どしたん?」
「あいつの詠唱おかしくない?」
「そうか?普通じゃね?」
「うんらいまーつ、ふうらいまーつ、かきくうところにいうところ」
「やっぱりおかしくない!?」
「そんなもんだろ」
「くっそ!少数派かよ!」
「ん?なんか聞こえないか?」
「変な詠唱じゃなくて?」
「違う。やっぱり聞こえる。なんか、移動してる音、スライム?」
「は?確かにスライムの生息圏だけど、ギリギリ外だぞ?」
「いや、これ、間違いない。スライムがきてる」
「なんで.....あ?」
「なんか気づいた?」
「スライムって魔力に集まる習性があるよな」
「スライムが集まるほどの魔力って....あ、賢者か」
「待て待て待て!スライムの数は!一体ならどうにかなる!むしろ、詠唱が進んでる分いつもより勝率は高い!!」
「二桁はいるな」
「賢者ぁぁぁぁ!!!」
「りんご、ごりら、らっぱ、ぱらそる、るーる」
「詠しょ、しりとりしてない?」
「おぉ、後半の詠唱ってあんな感じなのか」
「ともかく!詠唱中止!!退却!すぐ逃げる...あ、やべ、きた!」
「殿はこの勇者にまかせ..........うぼぁ!!!」
「勇者ぁぁぁぁ!!!
くそ!賢者!取り敢えず、その詠唱した魔法を使って時間を稼げ!」
「生麦生米生卵、隣の客はよく柿食う客だ、赤巻き紙青巻き紙黄巻きがみゅ....あ、噛んじゃいました。最初からです」
「嘘だろ!?」
「五分待ってください」
「待てるか!逃げるぞ!勇者は俺が持つ!」
「よっ!流石、職業荷物もち!」
「張ったおすぞ!?
ちくしょう!スライムに勝てねぇ!!」