表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/8

02 観察対象


 フェティローズ・アルモンドは、逃げていた。

 

「待ってくれフェティ。今日こそ聞かせてくれ、なぜあなたが俺から逃げるのかを」


 ────観察対象(ザロヴィア)から。


(待って待ってイヤ来ないでぇえ!!)


 どれだけ早く歩いたところで、足の長いザロヴィアが引き離されるわけがない。あっという間に二人の距離が詰まっていく。

 フェティローズの素晴らしいところは、どれだけ心中が乱れていても表情には一切出していないことだ。今だって周りの生徒から見ると「あなたのことなんてこれっぽっちも興味ございませんわ。おほほ」という感じに見える。生徒たちは「やっぱり不仲なのか?」と囁き合っていた。


(わたしだって叶う事ならザロヴィア様と普通にお話ししたいのよ!)


 だというのに、神様は意地悪だとフェティローズは唸る。


(だってザロヴィア様とお話しすると、わたしすっごい興奮しちゃうし……ザロヴィア様に引かれるのが目に見えてるもん)


 実際、初対面だって引かれていた。

 以降フェティローズは、彼を眺めるだけにしようと心に決めたのだ。

 それだけで幸せなのだから。


 しかし、ザロヴィアにも意地があった。ザロヴィアからすれば、昔はあんなに楽しく喋ってくれていたのに、どうして……という思いである。フェティローズが編入すると聞いて、ザロヴィアはとても嬉しかった。これからは毎日一緒にいられると思っていたのに、目の前に現れた婚約者が冷たい女性になっていて、しかも話しかけようとすると逃げるのだ。


(今日こそフェティの考えを聞き出す)


 いつの間にかフェティローズとザロヴィアは校舎の壁際に来ていた。

 追い詰められたフェティローズに、ザロヴィアの逞しい体が迫る。壁にドンっと手をつかれて、逃げ場を失った。


(ま、ま、睫毛ながぁ…………)


 フェティローズは感嘆した。

 意思の強そうな切れ長の碧いの瞳。

 陽光を受けてキラキラと輝く黒い髪。

 厳しい剣術の稽古を繰り返し、逞しく引き締まった体つき。


(あぁ……っ、萌え)


 とっさに鼻周りを手で隠す。

 鼻血が出そうになっているのだ。

 しかしその行動を、ザロヴィアは別の意味だと解釈した。


「そんなに俺に近づかれるのが嫌ですか、フェティ」


 ふるふると首を振る。


「俺の前では一言も喋らないですよね。昔は……っ、昔はあんなに楽しそうに喋ってくれたのに」


(だって興奮し過ぎて鼻血が出そうになるしザロヴィア様だってあのときは若干引いてたし)


 一応、フェティローズはふるふると首を振る。

 ザロヴィアは、ぐぐっと顔を近づけた。


(顔が近いぃ! 死んじゃうぅ……!)


 興奮度Max。

 いや、限界突破して──


(あ、死ぬ)


「フェティ? おい大丈夫か、フェティッ!?」


 フェティローズは気絶してしまった。


「血が出てる!? やっぱりフェティ、まだ体が……ッ!?」


 フェティローズが急に倒れた理由に、ザロヴィアは心当たりがあった。

 初対面のときも急に血を吐いて倒れたことがある。フェティローズの両親も、持病があるわけではないのにと気にしていた。原因不明。医師も吐血の理由は分からなかった。


(もしかして……実はフェティはとても病弱で、俺に心配かけないようにしているのか?)


 ────いや、ただの鼻血だが。


(周りに体が弱い事を悟られないように、無理をして冷たく見せているんじゃ……)


 ────いや、ハイテンションを隠すためだが。

 フェティローズが起きていればツッコミが入るところだが、あいにく気絶している。


 ザロヴィアはフェティローズを抱き上げ、保健室へと急いだ。












 New! フェティローズに病弱設定が追加されました!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

↓ポチッと押してくれたら感謝感激雨あられ↓

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ