表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

89/129

第88話 深淵にてロリ

 次にユタが何とか目を開けた時、自分が土の中に埋まっているのだと分かった。体の上には落石が積み重なり、一ミリたりとも体を動かす事が出来なかった。


 ―はあ、最悪だ―


 このシナナイ身体は爆発でできた穴の底まで落ちてくる途中に、また何度か死と復活を繰り返したようだ。だが岩に潰されたせいで、身体の形がところどころ変な風に成型されていた。左手なんかはもう既にちぎれかかっている。


 ―痛いっ こんな所はさっさと抜け出そう―


 だが、この場所がどこなのかも分からないままでは、クレア達の助けも期待できない。第一、こんなに積み重なった重い岩をどかすなんて、それこそ重機でもなければ不可能だろう。


 となれば、ここから抜けだす方法は今のところ一つしか思い浮かばなかった。空間魔法の空間転移(テレポレア)で、何処か別の場所に移動する方法だ。


 だがそれは、とても危険な選択でもあった。

 テレポレアの移動先にある程度の空間が無ければ、ユタの身体はそのまま地中で押しつぶされる事になる。そして一度死ぬと、復活する座標は固定されるため、その場で死のループを繰り返す可能性が高いのだ。


 そんな勇気はユタにはなかった。


 ―くそ、流石にそんな賭けは無理だ―


 だがこのまま時間が経っても、いつか積み重なった岩がズレ、今ユタがいる土の中の僅かな空間さえも消滅するかもしれなかった。


 ―何か、他にないか。せめてこの外の空間の場所さえ特定できれば―



 そして暗い闇の中。正確にはどれくらいの時間が経ったか分からないが、長い時間が過ぎだ。

 ユタはその異変に気付いた。自分の周りの岩が少しずつズレはじめて来ていたのだ。その音はどんどん大きくなり、近づいているようだった。


 ―きっと、上の方で岩が動いたんだ。ここもじきに揺れが伝わってきて潰されるぞ―


 ユタはずっと、ここから抜け出す方法が無いか考えていたが最後まで思いつかなかった。そこでついにイチかバチかの賭けに出る事にした。


 ―やるしかない。やらなきゃどっちみち死ぬ!―


 音はどんどん大きくなる。そしてユタは自分の口に土が入るのも気にせずに式句の詠唱を唱えた。


「グあッ ボごご…… 空間転移(テレポレア)!」




 ドンッ



 呪文を発動したと思った瞬間。突然すぐ近くで爆発音がしたと思うと、ユタの身体は得たいの知れない魔力波に包まれていた。そしてユタを押しつぶしていた周囲の落石はあっという間に塵となって消えていた。


「なんだ。またお前か」


 やけに高い声でそう言ってくるのが聞こえた。


 ユタは岩に潰され、奇怪な形に折れ曲がってしまった手足で立ち上がるのに苦労していた。そしてやっと立てた時に、その声の主が、大渓谷に来た時に一度会った女の子だと気づいた。


「お、お前は……」


「うっさい、死ね」


 すると幼女は、先ほどの魔力波をユタにも撃った。ユタの身体は驚く間もなく粉々に飛び散り死んだ。


 だがしばらくすると、ユタはその場で生き返った。


「…………いきなり何するんだよ!」


 自分を殺した女の子に対しユタは剣を抜いた。だが女の子はまるで赤子をあしらうかのように剣をはじくと、剣を奪いユタの足をひっかけて転ばした。


「一体だれのおかげで、また歩けるようになったと思っておるんじゃい」


「は?? …………お前、まさかっ 俺が不死身だって知ってたのか?」


 ユタは一度死に、落石に潰されてない状態で復活したおかげで、元の健康体に戻っていたのだ。


 ―あり得ない事だ。なんでコイツは、俺しか知らない復活条件までしってるんだ? それだけじゃない。コイツは前にも気になる事を言っていた気がする―


「お前、何者なんだ」


「うむ……ついて来るのじゃい」


 変わった話し方をする女の子はそう言うと、自分の後をついて来るようユタに示した。

 ユタは覚悟を決めると、その小さな背中を追い始めたのだった。

※連載中なので本編ページの上部や下部にある「ブックマークに追加」から、ブックマークをよろしくお願いいたします。またいいねもお願いします。作者への応援や執筆の励みになります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ