第70話 B級冒険者
フォレストモアに戻ったユタ達は、ギルド支部に行くと、そこで支部長のコリンズからそれぞれ新たに文字の刻まれたギルドタグをもらった。
「はい。それがB級に昇格した冒険者の証です。再発行は出来ないので無くさないでくださいね」
「え、それって……」
「はい、おめでとうございます。皆さんは試験に合格しましたよ」
…………
「「ええ!」」
フォレストモアに戻ってくる道すがら試験官はユタ達に散々不平を言っていたので、到底合格などという結果は予測できなかった。
なのでユタ達は驚いてそれきりしばらく声が出なかったのだが、ついにユタが勇気を振り絞りパユに理由を尋ねた。
「俺達、合格なんですか? てっきりダメかと思ってたけど」
「そうですね。まあ、順当に点をつければ不合格でした。上官のいう事を聞かない命令違反。他にも危険な規律違反が多すぎましたからね」
「だったら、どうしてだよ」
「不本意ですが。あなた達は、C級程度には留めておけないほどの実力を、既に秘めている事が分かりましたので。冒険者間のバランスの維持の為にも、B級に上がってもらう必要があるのです」
それを聞いて、間接的に自分たちが強いのだと褒められていると察したネーダは、口元を緩ませてやや照れながらこう言った。
「へへへ、そうかあ。ボク達そんなに強いのかあ。いやあ、困るんだっぞ♡」
「ごほん!あまり調子に乗らないように!」
パユはニヤニヤしているネーダにそう言い放った。慌ててネーダは小さくハイと返すと肩を縮めた。
「もちろん。何か問題を起こしたら、責任をとってもらいますからね。分かりましたか?!」
「「は、はい……」」
おっかなびっくりしながら、ユタ達三人は声をそろえて返事をした。
「全く、とんだ災難でしたよ。じゃあ私はこれで。先に帰らせてもらいますよ」
そう言うとパユは部屋から出て行った。
「パユさん、大丈夫かなっ。なんか迷惑かけちゃったみたいだし、わたし後で会いに行ってみようかな」
「うん…………あんまり刺激しない方がいいと思うけど」
きっとパユはB級の任務の付き添いの楽な仕事だと思っていたのに、思いもよらぬハードワークに巻き込まれイライラしているだけだ。ほっといてもしばらくすれば機嫌もよくなるとユタは思っていた。
パユが出て行った後、コリンズは金貨のつまった袋を取り出すとユタ達に対してこう言った。
「予想外の事態が起きて大変だったと聞いています。はい、皆さんもゆっくり休んでください。こちらが今回の三人の冒険者依頼の報酬になります」
「どれどれ……うわっ 凄い大金だぞ! これ、何マジカあるんだ?」
「はい、昇格祝いも含めて100万マジカあります。」
「ええ?! やったー!!! よしっ さっそくこれで宴会しよう!」
そう言うとネーダは100万マジカの袋をコリンズから受け取った。そして次の瞬間には、あっという間に部屋の出口まで移動していた。
「ユタとクレアも早くするんだぞ」
「いや、待てよ。まだ昼間だゼ。こんな時間から飲み食いする気かよ」
「たまにはいいんだぞ。リーダーのボクが許可する…………遅れるなよ!」
そう言うとネーダは宴会の準備のために、黄金果実亭に向かって駆けだした。
「リーダ―が言うなら、仕方ないか」
そう、たまにはいいだろう。色んな事を忘れてただバカ騒ぎするのも。
ユタはクレアの手を取るとネーダの後を追いかけ走り出した。
「俺たちもいこうゼ。早く行かないとネーダに大事な報酬金を全部酒に変えられちゃうよ」
「へへへ、それは困るねっ」
何はともあれ、俺たちはB級冒険者になる事ができたんだ。
少しずつだけど、先に進めているハズだ。
その後、ユタ達は黄金果実亭で一晩中宴を続けたのだった。
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