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第56話 魔の元凶

 ボントルべの街に、とある冒険者の一団がやってきた。彼らはボントルべで起きた季節外れの異常気象を調査すべく、街の外に出ていたパーティだった。


「今帰ったぞ」


「お帰りなさい! それで、どうだったすか?」


 ギルドに大きな体の隊長と背の小さな冒険者の二人が入ってくると、ギルド職員は隊長に調査の成果を尋ねた。しかし隊長は無念そうに首を横に振った。


「相変わらず、すげえ雪だって事ぐらいしか、分からなかったよ」


「そうですか……」


「あ~……だがな、ハンザと違ってこっち側は人狼が出現した形跡が全くないんだ。魔物の狙いとなる人間は、ボントルべの方に集中しているというのに。やはりあっちに何かあるのかもしれないな」


「その何かとは?」


「ああ?……そこまで知るか!とりあえず俺は宿に戻って寝るわ。おいっ新入り!報告書はお前が書いておけ!」


 隊長は大きな声で新入りと呼ばれた小さな冒険者に怒鳴りつけた。しかし新入りは隊長のいう事を聞こうとしないで、その場でぼんやり立ち尽くしたままだった。


「おいっ聞こえてんのか新入り!さっさとこっちに来て働きやがれ」


 再びどなるが新入りはまだ動こうとしない。


「彼、どうしたんですか?」


「あいつ全然使えねんだ。魔法はそこそこ上手いが、いまいち何考えてるか分からん不気味なやつでな。こうなったら直接分からせてやる!」


 隊長はそう言うと新入りに近づき頭を鷲掴みにし、放り投げようとした。


「我に触れるな!カスめ!」


 次の瞬間、新入りを投げ飛ばそうとした隊長は逆に、新入りが放った魔力の波動によって吹き飛ばされてしまった。そして絶命した。


「ひぃぃっ お助けをっ」


「おいカス! 我の前に、ここに冒険者が来ただろう?」


「は、はい! えっと、フォレストモアから来た冒険者のパーティです……」


「女はいたか」


「へ? あ、はい。一人いたと思うっす」


「そうかそうか。ひっひっほ。この魔力の残り香、やはりあ奴じゃ」


 新人冒険者は不気味な声で笑った。そして満足そうに笑みを浮かべながら式句を唱えた。


超超光魔(エルエルルルルルラ)空間転移(テレポレジア)


 すると冒険者の前の空間が歪みだし、魔力の輪による空間転移の門が作られた。


 ―待っていろ。今我が直々にお前さんのとこに出向いてやるからノォ―


 そして彼は魔力の輪の中に入ると、同時に輪は消え始め、輪がなくなった時には新入りの姿もどこにもなかった。



「そもそもだ。人狼がなんだかお前らは知ってるか?」


 ユタ達はジオと共に彼が知る人狼の住処へと向かっていた。


「えっと、ガルリカントていう動物系の魔物の進化種。だったはずだぞ」


 チニイと共に先頭を歩くネーダがそう言った。兜を深く被って顔さえ見えなければ、ジオはネーダが本当は女の子でも気にせず会話できるのだそうだ。


「そうだな。さすが団長さんだ。……ただ、それは普通の場合で、このボントルべは違えんだ。ここで出現する人狼は進化種じゃない」


 それを聞くとパユは尋ねた。


「それはどういう事ですか?少なくとも私には普通の人狼に見えますよ」


「そうだろうな。……だが普通じゃないんだ」


 ジオのいう事はいまいち要領をえなかった。まるで何かを言い渋っているようにも感じた。するとクレアがこう言った。


「そう言えばさ、ジオって誰かを探して旅してるんでしょ?それって誰なのさ?」


「そうだ。なんでそいつを探す事が人狼退治に繋がるんだよ」


 二人の言葉を聞くとより一層深刻な顔になったジオはこう言った。


「一応言っとくが、覚悟してきけよ」


「あ、ああ。」


「オレは妹を探してるんだ。言っとくが人狼に攫われたからじゃない。人狼は取った子供はすぐに食っちまうからな。オレが人狼が現れた場所を転々としているのは別の理由だ」


「じゃあその理由は?」


 ユタが聞くと、ジオは少し黙ってから意を決してその名を口に出した。


魔軍団長(ゾディアック)キプラヌス。あいつが魔法の実験のために、希少な魔法を使える妹を連れ去ったんだ。ここの人狼はあいつが生み出した魔法生物なんだよ!」


 ―は? 今こいつ、なんて言った???―


 今にも卒倒しそうな最悪な気分だ。ゾディアックと聞いた途端、しばらく忘れていたヌダロスと対峙した時の恐怖がユタの身体に震えとなって蘇ってきた。


 しかしジオの言葉を聞いて誰もが危機感を抱く中、一人だけ何故かはしゃぐ者がいた。


「やったぞみんな!冒険団の名を上げるチャンスなんだぞ!」


 ……なんだそりゃっ!

ご拝読いただきありがとうございます!


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