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第40話 作戦会議

 そのうちに作戦会議が始まった。

 部屋の中央にある大きな台の上には街の周辺を含めた地図が広げられ、ユタ達はその周辺を囲むようにして集まった。


「ではまずモモさん、あなたが見た予知の内容を皆さんにお話ししてもらえますか?」


 パユがそう言うと、モモが少しもじもじしながら前の方へと進み出てきた。


 その様子を見ていたカトラが、緊張しているモモに向かって声援を送ると、モモは頷いてみせてから予知について話しだした。


「え、ええと。私の予知によると魔物の襲撃があるのは明後日のちょうど日没です。それと数は二百以上です。小鬼(ゴブリン)やブルー粘態生物(スライム)などの弱い魔物が多いですが、中には人喰い鬼(オーク)三つ角(トライホーン)などの中位の魔物も現れるので気を付けてください!」


 すると、モモの話を聞いた冒険者の一人が手をあげこう尋ねた。


「それほどの大群ならば、群れのボスのような魔物がいるんじゃないか?」


 その質問に一瞬冒険者たちはざわめいた。大勢の魔物を引き入るボスの魔物は、熟練の冒険者たちにとっても脅威であったからだ。


「分かりません……。でも何か強い力を感じるのは確かです」


 冒険者たちは静まり返ってしまった。


「なるほど。ボスが現れる可能性があるなら、私は攻めじゃなくてフォレストモアの守りに徹したほうがいいかもしれないね」


 トリーナは沈黙を破りそう言った。するとパユもそれに賛同した。


「そうですね。本来でしたら団長には攻めとして参加してもらう予定だったのですが、もしもの時の為にも砦で最後の要としてお願いします」


「ああ。私に任せろ」


「頼りにしてます」


「う、うん…… お前もな! だがみんな何かあったらすぐ呼ぶんだぞ」


 すると冒険者たちが口々にこういった。


「心配する必要はねえぜ団長!」


「そうさ! トリーナは俺が守る!」


「は? てめえ!! 一人だけなにカッコつけてやがるんだ?」


 喧嘩を始めた冒険者たちをほっといてパユはトリーナにこう言った。


「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。こいつらは普段はこんなだけど、一応つわものぞろいですから、ちょっとやそっとじゃやられません」


「そうだぜ団長!」


 今まで会議の話が退屈で半分寝ていたラッツは、目を輝かせながら二人の間に飛び込んできた。


「ボスってことは強いんだろ? ケッ今からわくわくが止まんねーぜ。オレがいるんだ。団長は安心して後ろにひっこんでな」


「ふっ あいかわらず脳筋ですねぇ」


「はあ、なんだとー??」


「ですが今だけはそれが助かります。戦場での活躍期待してますよ」


「フン、言われなくても!」



 その後細かい作戦の詳細など聞かされた後、ユタたちはその場で解散した。しかし街のバリケードが出来る明日の昼にはまた集合しなくてはならないらしい。



 ユタは再びクレアを探し出した。


 トリーナから冒険者たちに、戦場では必ず二人以上で行動するようにと伝えられていたのだ。

 少しでも魔物と戦うときのリスクを減らすためである。だからクレアと一緒に行動するつもりだったのだ。



 しかし探しているときに、カトラが話しかけてきた。


「ねえねえ、あたしと組まない」


「……組むって?」


「戦場で組まないかってことよ。ほら、いっしょに剣の修行もしたしさ。結構いいコンビネーションができるとおもうのよね。あたしはさ、いつもトリーナかモモと戦ってるんだけど、今回二人とも後衛だからさ」


「ああ……わり、無理だわ!」


「なんでよッ!」


「俺、クレアといっしょに戦うからさ」


 すると、ちょうどその時クレアの姿を見つけた。ユタはさっそく声をかけようとクレアの側に近づいて行った。


「クレア、ここにいたんだ。なあ、ちょっと話があるんだけど…………」


 しかしユタはそこで言いよどんだ。クレアの隣には会いたくなかったネーダの姿もあったからだ。


「あ……ユタ」


 ユタに気が付いたネーダがこっちを見た。二人の間に気まずい空気が流れる。


 彼女は何か言いたそうにも見えたが、ユタは思わず目をそらした。


「どうしたの? わたしに何かよう」


 すると、クレアは見かねてユタにそう言った。


「ああ、戦いが始まったら俺と組んで戦おうぜ」


 絶対いっしょに戦ってくれると思っていたユタはニコニコしながらそう言った。


「う~ん、ごめん無理!」


「ええ! なんでだよ!」


 ユタは驚いてそう聞き返した。


「わたし、もうネーダと約束しちゃったんだ。だから無理なの。それとユタ、女の子にはもうちょっと優しくした方がいいよ? じゃあまたね」


「そんな……」


 するとクレアが去った後、ユタの前にネーダがやってきた。


「な、なんだよ、クレアならもう行っちゃったゼ」


「ボク……だから」


「え? なんだって?」


 最初はうつむきながらボソボソ喋っていた為よく聞き取れなかったが、ユタが一度聞きかえすと顔を上げ大きな瞳でユタの顔を真剣に見つめながらこう言った。


「今度は、ちゃんと戦う。ボクだって魔法剣士なんだ。だからボクがちゃんと戦うところを見ていてほしいんだぞ」


 ネーダの目があまりに真剣に自分を見ていたので、ユタは気負され頷いた。


「ああ、うん……」


「約束だからな」


 そう言うと、ネーダはクレアの去った方へと駆けて行った。


 ―戦いを見ろって、どういうことだよ。第一、チームになるわけじゃないし、戦場で偶然出会うとは限らないじゃないか―


 ユタはそんな事を考えていると、再びカトラがやってきた。


「ふふふふ、残念。振られちゃったわね! でも、これであたしと組むしかなくなったようですなー」


「ああ……最高だよ」


ご拝読いただきありがとうございます!


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この先もよろしくお願いいたします。

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