第36話 起死回生の魔法
ズドーン、ズドーン
フォレストモアの街を守る城門が、先ほどから大きな地鳴りと共に悲鳴をあげていた。動物のサイのような三つ角という魔物が防衛線の奥まで侵入して、街の城門を今にも破ろうとしていたのだ。
そのすぐそばで門にぶつかる音を聞いていたカトラは、どうにかして門に近くにいる三つ角達を倒しにいきたかった。だが門の傍にもたくさんの魔物が集まって来てしまい、すぐに駆けつけられそうになかった。
すると、そこに龍のアギトの防衛線ガーターがやってきた。
「このままじゃまずいわ。何とかしてあそこまでたどり着いて阻止しないと、魔物が街の中に入ってくるわ」
あせるカトラにガーターは何かの袋を差し出した。
「……コレを使え。さっき倒した魔物の素材から作った爆薬だ」
「え、すごっ さすがガーターね さっそく使わせてもらうわ」
カトラはそれを受け取ると、袋ごと門の辺りにいる魔物の集団目がけて投げつけた。
「みんな! 離れて!!!」
カトラの声と突然頭上を通過する爆薬をみると、近くで戦っていた団の他の冒険者たちは目の前の魔物も放って一目散にその場から逃げ出した。
「おりゃあああ 超火炎!」
カトラの放った上級火炎魔法超火炎は、直前に投げた爆薬に引火すると、そこにいた魔物をすべて爆風で粉みじんにした。
「おい、カトラ! いきなり味方に魔法打ち込むのやめろっていつもいってるだろが!」
危うく巻き込まれそうになった龍のアギトの団員の一人が駆けつけてきたカトラに向かってそう叫んだ。
「ごめんごめん 次から気を付けるから! でも今は急いでるの!」
カトラの目の前にはまだ数体の三つ角が爆風から逃れて生き残っていた。
今はまだ爆発の影響でひるんでいるせいか動いていなかったが、そのうちまた門を破壊しようと突進を再開するだろう。
―三つ角の弱点は……たしか脇腹だったわ―
カトラは三つ角達の胴体の横に素早く回りこんだ。
「やァっ!」
ぶしゅうー……
魔物が動けないうちに剣でとどめを刺すと、すべての三つ角を魔力霧へと変えた。
「はあ、はあ、これで一旦は難を凌げたかしらね」
カトラが門を破壊していた三つ角達を倒すと、そのことはその場にいる冒険者たちにも伝わった。
「うおーー! 龍のアギトのカトラが、街を守り切ったぞ!!」
「おお! やったな!」
「うおおおおおお」
冒険者たちは届いた朗報に大いに沸き立った。
「みんなっ 喜ぶのはいいけど、まだ戦いは終わってないわよ? 気を抜かないで」
「そうだったな」
「おう! 分かったぜ」
冒険者たちは士気を高めると、再び魔物に立ち向かっていった。
その様子を後方の城壁から、ガーターと防衛班の龍のアギトの冒険者は見ていた。
「なんとか持ちこたえましたね。さすがのガーターさんです。あの短時間で爆弾を作ってしまうとは」
「……俺はただ俺の役目を果たしただけだ。俺よりもカトラが素早く機転を利かせた成果が大きいだろう」
「ふっ ご謙遜を。 しかし、ここまで魔物に押し込まれるとは。作戦では前線の方でほとんどの魔物は食い止められる手はずだったのに。何かあったのでしょうか」
するとガーターは少し考えるような素振りを見せてから、横にいる冒険者により小さな声でこう伝えた。
「……う、前線からの報告によると、どうやらイレギュラーが起こったそうだ」
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