第21話 旅立ち
クレアが村を旅立つ日が近づいていた。クレアが上級魔法を覚えて村の外でもやっていけると、ビアードは判断したのだ。
「じゃあ、行ってきます!」
「ちょっと、ちょっと待つんだよー」
「なにぃー?、まだ修行しなきゃダメなの?」
「うんうん、だけどお母さんの居る場所の目星はついているのかい」
「へ? 目星??」
ビアードに聞かれるとクレアはわけが分からないといった顔になった。
「やっぱり、何も考えてなかったでしょっ」
「あー……へへへ、実はそうなんだ。 とりあえず探しに行けば何とかなるかなって……」
「はあ、やっぱり心配だょぉ」
情けなくヘタヘタ笑ってごまかすクレアをビアードは心配そうに見た。
「一応、このロケットがあるから。ロケットの中のお母さんの絵を手がかりに探そうとは思ってたんだけど」
クレアは金のロケットをビアードに見せた。
「おや、このロケットには変わった紋様が刻まれてるね。これを調べれば何か分かるかもしれないよー」
「ほんと?」
「うん。わしゃあ、いくつかそうゆう本を持ってるから、調べられるかもしれない。その間、ロケットを預けてくれないかい」
「分かった お願い、おじいさん」
そしてビアードはクレアからロケットを預かった。
しかし後日、調べるための本が必要だと分かり、グロッチ村まで必要な本を取りに行くことになった。
「助かったよー。わし一人だったら何往復もしなきゃダメだった」
ユタはビアードに頼まれ手伝いをしていた。
「いや、これぐらいはいいよ。それにしても収納魔法は荷物運びにピッタリな能力だな」
「うん。それにユタは元もとは魔力が多かったからね、収納魔法の容量もたくさんあるんだろうね」
「へえ、そういうもんなんだな」
村から本を運び終えると、ビアードはユタに本を部屋に運ぶように言った。
そしてビアードはたくさんの食料を持ってくると、そのまま部屋に閉じこもった。
「三日ぐらいは出てこないと思うけど心配しないでね、終わったら呼ぶよー」
…………そして、既に今日でビアードがこもってから五日が過ぎていた。彼はまだ部屋から出て来ていなかった。
様子を見ようとクレアとユタは部屋の扉を開けようとしたが、コロッパ村の村長のトルマが二人を止めた。
「心配しなくても大丈夫よ」
「でも……もうとっくに五日も経ってるよっ」
「あの人は昔から熱中すると周りのことなんてお構いなしなの きっと
あなたのロケットを調べるのに難航してるのだわ 邪魔しちゃだめよ」
「そう、だね」
クレアはそう言うと渋々ドアノブから手を離した。
ユタはトルマに尋ねた。
「トルマさんはじいさんとはお知り合いなんですか?」
「ちょっとだけよ 昔、私もあの人に魔法を教えてもらった事があるの 若いころは結構有名な魔法使いだったそうよ」
―きっと悪名だな……―
髪の毛を抜かれたり植木されたり、散々いたずらされたユタはまだその事を根に持っていた為、そういう風な想像に至った。
「出てきたらわたしが知らせるから、あなたたちは出かける準備をしておきなさいな」
たしかにこれからの旅はとても長いものとなるだろう。道中で仕入れるにしても食料や衣服などは欠かせないし、他にも用意するものはたくさんある。
「いこうクレア 俺も手伝うから」
「う、うん じゃ、またあとで」
二人はそうしてその場を立ち去った。
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