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第119話 三つの不気味な廃墟

 ギルド職員の話によると、べリスゼンの街の中では不審な人影が目撃されているらしい。それがもしかしたらゴブリンではないかと言っているのだ。


「それを見たと言った住人によると、人間の姿ではなかったそうです」


「魔物が街に入り込んだってことかよ。だったらもっと早くフォレストモアのギルドに依頼をだして、冒険者に来てもらえばよかったんじゃ?」


「それが魔物が街の中にいるという証拠が見つからなかったものですから。正式にギルドに依頼としてお願いすることが出来なかったのです」


「ふーん、そういうものなのか」


「はい。あの、これも正式な冒険者依頼(クエスト)ではなく私個人からの依頼で、報酬とかは少なくなってしまうんですけど、それでもいいでしょうか」


「ああ、いいよ」


「ありがとうございます」


 ユタが依頼を快く引き受けるとクレアは意外そうな顔をした。


「てっきりユタは()()()()()()()()()()()()。とか言うと思ったのに! ねえなんで?」


「べ、別にいいだろう。どうせ俺が嫌だっていっても、クレア達はやるって聞かないじゃないか」


「まあそうだね。ユタは私たちの事を考えてくれたの? なんか変に気が利いててらしくなーいっ」


「はあ? おいおい」


「わ、ごめんごめんっ へへへ、嘘だよ! ユタは本当は優しいもんね」


「…………ゴブリンなんてさっさと終わらせて、飯に行こう」


「うん!」



 その後、三人は目撃情報があったという街外れの廃墟まで来ていた。井戸の周りを囲むように、人が住まなくなって何年も経ったようなボロボロの家が三つ建っていた。


 ―こんな家なら魔物や幽霊の一匹や二匹くらい潜んでいてもおかしくはなさそうだな―


 ネーダはパーティメンバーにこう言った。


「みんな、万が一があるからちゃんと気をつけて進むんだぞ」


 時刻はまだ昼間で外は明るかったが、廃墟の中は日の光が一切差さない暗黒だった。


「手分けして探そう。何かあったらすぐに呼ぶってことで」


「うん。分かったよっ」


 三人は三つある家をそれぞれ選び探索を始めた。ユタが選んだのは一番右端の倉庫と思われる建物だった。


 倉庫の中は他の建物と同じく真っ暗闇だ。


(フレム)


 最下級の火の魔法を手元に灯すと、その明かりを頼りにしながら建物の捜索を始めた。

 もう片方の手には暴力の黒剣(バイオレンス・エッジ)を握っている。ゴブリンがいるならば目があった瞬間にすぐに襲ってくるだろう。気を抜くことはできない。


 しかしユタはすぐに捜索を中断せざるを得なかった。


 コツン


 ユタは何かに躓いた。足元を照らすとそこには剣が落ちていた。そしてその隣にも剣があった。また隣にも剣はあった。


「な、なんだってんだよ。どこもかしこも剣だらけだ」


 よく辺りを見ると、倉庫の中は乱雑に置かれた剣や斧、その他の金属製の武具で埋め尽くされていたのだ。

 しかもどの武具もなかなかの作りの物で、錆びているわけでもなく、普通に店で買えばいい値がするような物ばかりだった。


 ユタはすぐに二人を呼んだ。クレアとネーダも倉庫の中を見ると驚いていた。


「すごいんだぞ。これだけあれば、武器屋さんが開けるね」


「ああ、でもなんだってこんな場所に大量にあるんだ? しかもこんなに無防備に……」


 ユタ達は倉庫の中をくまなく探したが、他にめぼしい物を見つける事が出来なかった。

 他の建物でも魔物の姿はなく、その日は一旦宿へと戻る事にした。



 その日の夜。ユタは宿の自室で、倉庫から一本だけ持ちかえった剣をじっと見つめていた。


 ユタはなんとなくこの剣に見覚えがある気がしていた。その疑念を確証へと変えるべく、ユタは自分の暴力の黒剣(バイオレンス・エッジ)をとなりに並べた。


「うーん。やっぱり」


 二つの剣はどことなく類似していた。剣の刀身から束のバランス。微妙なパーツのデザインなど。


 つまりこの二つの剣は、同じ打ち手によってつくられた可能性が高い……。つまり魔道具屋キルシュの作だ。


「明日、確かめてみるか」


 ユタはそう呟くと二つの剣を異空間にしまった。そして藁のベッドの上に身体を預け眠りについた。

ご拝読いただきありがとうございます!


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この先もよろしくお願いいたします。

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