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「ご主人様ぁ~! これ、これ、持っときたくないです!」


 剣のお代を即金で置いてったらしい。なんで大金を持ち歩いてるんだ? ってか、昨日も結構使ったよね? 一国の王は金持ちだなぁ。


「おお、フィーリアは金持ちだな」


「これが私の金なら、ご主人様を買い続けますよ。ええ、朝から死ぬまでずーっとですよ」


「せめて晩で終わろうか。永眠は勘弁だよ」


「フィーリアちゃん、お裾分けちょうだいね」


「嫌です! 一生一緒で最後を遂げるのです!」


 フィーリアの病んでる闇のレベルが上がっていくなぁ。素直に回収しとくか。本気の目だったからな。しかし、俺は250万ルークで一生を買い取られるのだろうか? 仮にも「国王陛下」だぞー。ほんと仮だけどな。


「あ~。ご主人様を独占するお金がぁ」


「これっぽっちじゃ数日程度しか買えないぞ。俺の価値は無意味に高いからな。それとも愛のない愛し方をして欲しいのか?」


「嫌です。みんなと一緒でもご主人様が私を見てくれる方がいいです」


「なら、夕飯にしよう。お風呂で綺麗にしてくれよ」


「ご主人様のえっちぃ♡」


「終わりましたか? お夕食ですよ」


 肉野菜炒めのニンニクましまし。うーん。美味しいけど、ちょっとオーダーを間違えただろうか? 興奮して寝れるかな?


「抜きますよ?」


 絶対に鎮静させるらしい。どうしてみんなが肉食系になったのだろうか?


「子が、欲しい」


「私が一番先!」


「いやまあ、楽しいじゃん。愛のあるってのは」


「その先の女の幸せも欲しいのは事実ね」


「ホントに幸せなのよ。伝わってますか?」


 伝え方が夜の営みに朝のお摘まみなのね。俺も穴があったら突っ込む()少年だし、毎日でも嬉しいよ。でも、早々に枯らされそうで怖いな。


「お爺さんでも起こせますから、心配しないでくださいね」


 生涯現役らしい。頑張ろう。



  ○  ○  ○



 朝の倦怠感は「強癒」が寝ている間に癒すので、俺の朝の倦怠感はお摘まみの後に来る。朝からするって怠惰で背徳的だよね。


「おはよう。ご馳走になってるよ」


「ランバルトさん。おはようございます。奥さんの手料理は食べないのですか?」


「あー、財産を持ち出したのがバレてね。その、な」


 夫婦不円満。まあ自業自得だから放置の方向で。席に座ればステーキのニンニク盛りがスゥッと出てくる。んー、朝から重い。


「今日はどうしたんですか?」


「オークションの配当だよ。後は、依頼の相談だね」


「配当は貰いますが、依頼は聞いて考えますよ」


「回りくどいのは嫌だろうから、簡潔に言うね。旧ファースト領に新しい領主が就くのだが、ちょうどタイミングもいいから護衛依頼を出したいのさ」


「まあ、方向は同じですね。でも、ファースト領から兵士を呼べば来るでしょう?」


 そういえば、兵士が減ってるっていつか言ってたな。その関係で経費削減かな? いや、領主だぞ。無理しても来そうだけどな。


「ファースト卿は機密事項の箝口令を敷くのが遅くてな。兵士の一部が借金奴隷に落ちたらしい。しかも被害は上役が多くて、指揮や統率が取れてなく任せられないのだよ」


 あー、そうだったんだ。でも、俺の奴隷になってないよね。認識できてないから、野良の奴隷になったのかな?


「ランバルトさん。事情に詳し過ぎないですか?」


「これでも立場は強いのだけどな。情報は流れてくるよ。国の恥なので隠したいだろうけどね」


「俺たちって無名ですよね? 有名な冒険者は王都に居るでしょう」


「無名ですが有名なドライさん。ギルドの出品物が前日に総入れ替えのレアアイテムを持ってきた冒険者。名は公表してませんが、巷では有名ですよ。それに王家には名も知れています」


「指名ですか?」


「はい。指名依頼です」


 あれー。王家の人がファースト領の領主になるのか。ってことはファースト領は王家所有の飛び地になるのかな? まあ、実績が無い人よりはマシなのか? 政治はわからん。


 で、考えるのは王家は表向きは厚遇してくれている。しかし、「王太子」と「国王陛下」を奪った男である俺。情はコントロールできないものだと思うぞ。何かしらのちょっかいをかけて来そう。嫌だなぁ。


 ファースト領には守る者が多いのにな。


「深く推考されているところで水を差しますが、王家の末席の女性です。権力は無いでしょう」


「顔に出てましたか?」


「不満と不安、あとは、面倒だな。その程度しか漏れていませんよ。百聞より一見、この機会に見定められては如何ですか?」


 全部盛れてら。確かに、遠くからジメジメした虐めそうとか、暗殺者を仕込みそうとか、高圧的に接してくるとか、まあ多少は読み取れるか。末席とはいえ、私欲に溺れたのが二人も出てる家系だ。良く見よう。


 ちらり。奥さん達は……任せると。


「消極的にお受けします」


「はは。オークション配当には劣るけど、払いはいいよ。あ、これが配当で、合計が1634万ルークだよ。大きいお金だから白金貨とかでまとめてあるからね」


 確か、銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、白金貨、だったな。十の倍数で増えるから白金貨は100万ルークか。昨日は大金貨25枚だったな。ああ、大体の国は発行硬貨に「王級公証人」で価値を確定しているので、形の偽造は可能でもバレるぞ。


 この場合、白金貨16、大金貨3、金貨4。ん? 落札総額は1815万ルークだぞ。ちょっとどころじゃなく運営側が損してないか?


「なあ。半分でもいいんだぞ。割合がおかしくないか?」


「半分も取れないし、今回は国賓の接待オークションだよ。今回はハーベス王国とヴァロック王国に大きな利をもたらしたからね。そっちの方が()()()()()()()には得なんだよ。新王に感謝されたんだよ」


「そんなものなのか。政治は疎いからいいや。しっかし、これが利ねぇ」


 改めてゴブリンフルアーマーを出して見る。どう見ても強く見えない。いや、世界情勢を知らないけど、ゴブリンのレアドロップだよ。溢れてもおかしくないよね。まあ、こっちじゃ宝部屋からしか産出はないんだっけ。小太刀の方が万倍強いよね。


「そ、それは……う、売ってくれ!」


「財産が飛ぶぞ。ランバルトさんはいいけど、奥さんが可哀想だ。あとこれは面白いから駄目。チンピラ撃退にちょうどいいんだよ」


「くそぅ!」


 本気で悔しがるな。ナイスミドルなおじさまはどこ行った。ランバルトさんが戻ってくるまでお茶。お茶菓子は断ってる。買ってもいいが、甘ったるいだけの菓子なぞ俺は食えん。っと、戻ってきた。


「はー、すまない。夢にまでゴブリンフルアーマーの全能感を見るんだ。あれは中毒になるな」


「依頼の話に戻ってくれ。何時なんだ?」


「今日、了解を得られたから明日の朝になるよ。先方はオークションの終了を待っててくれたくらいだから、準備は万端だね」


「おもいっきり俺たちを狙ってたんだな。まあいい。ファースト領のみんなが心配だしな」


「宿も心配はいらないよ。宿賃も負担するそうだ」


 至れり尽くせりで怖い。しかし、ダワスのダンジョンがお預けなのがちょっと寂しいかな。女王様にランジェリーを貸し出してるから奥さん達のが減ってるんだよね。ファーストの中級ダンジョンでも狙うか。


「それでは、失礼するよ」


「ああ、明日の朝に冒険者ギルドに行くよ」


「いや、ここで待ってて欲しい。仮にも貴族だ。野蛮な場所での合流は避けよう。では」


 颯爽と……してない、未練がましく何度もゴブリンフルアーマーを見ながら去ってった。


「意地悪ですね」


「比較的安い白属性の装備ならあげたいかな」


「フライパンですか?」


 まあ鈍器だが、微妙だな。金に困ったら何か売ってあげよう。


 今日は帰る準備だな。

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