093
オークションは無事に終わり、国賓は城で夕食らしいが俺らは帰る。夕飯は出ないしな。ランバルトさんとも別れるが「私の白アーマーが」とぶつぶつと未練を垂らしていた。あんたのじゃない!
やっとこさで屋敷に帰る。日は少し残っているが、昼からのオークションが熱くて時間食ったな。最後の白が長かった。血管が切れそうなおっさんが多くて運営も大変そうだった。
ああ、夕飯が振る舞われてる理由は商品と代金の引き換えだからだよ。大体が一括ニコニコ払い。だが、ツケは大歓迎な新生ルーク王国。国賓に恩を売るのも仕事らしい。面倒な。
「お食事の用意をしましょうね」
「あー、ありがとう。みんなも疲れただろうに、済まんな」
「いえ、醜い争いは楽しかったですよ♪」
「あれからなんぼか引かれるんだろ? なんぼになるんだ?」
「さあな。まあ大金は入るだろう」
ぶっちゃけ半額でも入ったら大儲け。どっかに家が買えそうだよな。この屋敷ってなんぼだろう? まあ、100人も住む計算じゃないから買わないけど。新築を建てるのか? んー、薬師男衆に相部屋させたくないんだよね。帰ったら考えよう。
のんびりと夕食。俺に盛られたステーキ。うーん。
のんびりとお風呂。明日には湯を入れ換えよう。
そして訪れる夜の営み。加減はない。やっぱりずっと立ってたのストレスだったんじゃん! 灯りはスローイングナイフが照らすほんのりとした空間に、奥さん達が舞い踊る。俺は踊らされるぜ! だって気持ちいいんだよ。
○ ○ ○
「おはようございます♡」
あれ? やっぱり、朝も? いつの間にか、大きな寝室の一角に四つのベッドが。一緒の部屋で寝たのね。お湯で綺麗に拭かれて、汚され、また拭かれて……ギリギリの体力を残されて朝が始まる。
「無理してないよね? 強要してる?」
サービス過剰で不安になった。
「「「楽しんでます♪」」」
あー、はい。
朝食を終える頃、俺が野菜多めでと次のオーダーをしていた。精力をつけるのは肉らしいが、いい肉でもちょいと山盛りステーキは飽きてきた。そうしたら、来客らしい。ドアノッカーって響くんだな。
「はーい」
みんなが片付けをしているので俺が対応。オークションが終わったから退去かな?
「どちら様で「来たのじゃ!」……借家ですが、どうぞ」
本物の女王陛下と従者なお姉さん。護衛の二人も女性。遠くの門の外に馬車があるが、あっちは昨日の男性護衛だな。
○ ○ ○
掃除が行き届いてて良かった。無駄に豪華な応接室に案内。ロザンナが。部屋の配置なんて覚える暇が無かったよな? ロザンナ、寝てる?
「率直に言う。交渉が不平等になったのじゃ!」
「足りなかった?」
「違うのじゃ! 昨日のオークションでランジェリーに高値が付いたじゃろう。そちのランジェリーに対する評価額が低すぎなのじゃ! 今回ので価値は高値で浸透したのじゃ! たかが「入札してくれ」と言う条件じゃ切れ端すら貰えないのじゃー!」
女王がまくし立て声を荒げる。うーん、だってな。いっぱいあるよ。バーゲンセールとはいかないが、普通に店舗に陳列できるくらいは用意できるんじゃないかな?
「どうにかするのじゃ!」
「いや、交渉の条件でいいって」
「それは不味いのじゃ! 妾もすっ飛んでおったが「公証人」を挟んでおらんのじゃ! 価値の流動前なら押しきれたのじゃが、交渉とは流動するものじゃ! じゃから借金になるのじゃー! 国庫は使えんのじゃよ! どうにかしておくれ! 欲しいのじゃよ! このままなら前払いですら返却じゃよぉ。これは脱ぎとうないぃ」
今度はソファーに沈み混んで身を抱きしめる。うん。ここで代案出さなかったら、女王の脱ぎたてランジェリーが手に入るのか。双子美少女さんの脱ぎたて……あっ、フィーリア? いつの間に?
「ご主人様ぁ? 今朝のでは足りないのですねぇ?」
「お腹いっぱいです!」
「では、私達のように貸し出してはどうですか?」
所有権は俺。でも使っていいよってか。まあ、色褪せの定期メンテも必要だし、確かにフィーリアの案はいい気がする。
「ってことで、条件が平等になるまでの数の貸与でどうでしょう? 縛りは姉妹以外への又貸し不可。定期的な代替え品との交換義務。後は期限ですね」
「ふむ。縛りを入れることで価値を下げるのか。しかし、一生着たいぞよ。ミエナ姉様もそうじゃろ?」
「私はむしろ期限を一年にして大量に借りたいよ。下着だよ。着替えは要るよね。すぐ乾くといっても同じのをずっとはちょっと抵抗があるよ」
「一年後は?」
「対価を払えばいいのよ。ドライさんが無理難題を言う方には思えないし、多分だけど、私の救いになる願いをしてくれるわ」
流石影武者お姉さん。女王の代わりをしてるだけあって俺に、お願い事はバグ職の救済に使ってくれると嬉しい、と言うことを伝えてきた。よく頭が回るじゃん。
「分かったのじゃ。妾達以外への使用禁止、一年後に返却。『王級等価交渉』。ランジェリーセットが26じゃ。着替え放題じゃ!」
「ご主人様。生理用も含めると妥当だと思われます」
「なんと!? あの日のもあるのかえ?」
「あります。実証済みです。不快な蒸れもないそうですよ」
「「欲しい!」」
この流れだと、お祭りになるな。先にお姉さんを救いたい。これなら裏ワザっぽく扱えるかな?
「ランジェリーの選別とは別に売りたいものがあるんだ。両手持ちの剣だがどうだろうか?」
「ミエナ姉様に、かの?」
「そうですね。細やかな応援しかできませんが、どうでしょう。性能は保証するので250万ルークでお願いしたいです」
「うっ。痛い出費じゃの。でも、妾の小遣いが一時は無いだけじゃ。受けて立つ。今日はちゃんと「公証人」も連れてきておる。先に『王級等価交渉』……本当に高いの。成立したのじゃ」
護衛だと思われる女性が書類にまとめている。ロザンナに声かけて、その書類に一筆足してもらう。あと、サロワナには詫びておく。
「いいって。次の武器が楽しみだ!」
ありがとう。
「失礼します。先ずは、ランジェリーセット26点、女王フェミーナ様と特殊侍女フェミエナのみに貸与、猶予期間は本日より一年」
「うむ。良い」
「続いて。ツーハンドソード「運命の一閃」の売買契約。ドライ様へ250万ルークを支払い購入」
「ふむ。痛いが良い」
「二点の書類に『公証契約』。無事に成立しました」
ロザンナからツーハンドソードを預り、テーブルに置く。
「この剣「運命の一閃」には、黒属性・属性増加・重量軽減の三点の能力があります。特殊加工で耐久値もあげた俺の自慢の逸品です」
「属性増加? 黒属性が更に強くか。しかも重量軽減とミエナ姉様に誂えたかの性能じゃな。姉様、どうぞ」
「これが『運命の一閃』……あぁー! 謀りましたね! 酷い人です!」
「姉様? この者が粗相を? しかし、契約は……」
「違うわ。この剣には、今、名前を付けられたのよ。そう、ミーナちゃんが私のために探していたものよ」
「それは……そちよ! 貰いすぎじゃ!」
「何の事ですか? 闇属性の属性増加の一撃は、戦局すら揺るがす一振りになるでしょう。俺のネーミングセンスも悪くないですね。スキルアシストなしで『剣姫の舞』を体得している努力家に、大きな火力は幾千の敵を震え上がらすでしょう。いや、剣を持つだけで閃く天性の才も持ち合わせてるのですね。素晴らしい」
「くぅ。女王の妾が誑かされた。リスクなしとは。対価もしっかり払っておるしな。ただの剣の名前じゃから価値はないと言うことか」
「今後ともご贔屓に」
「女王フェミーナ・ハーベスの名において、真摯な交友を保証する!」
「ありがたき幸せ」
今回は双子の努力があってこそのものだ。少しきっかけを与えただけで、本人が閃いただけだ。なんのリスクも無いだろう。
「さて、ここからは女性の時間ですね。うちの奥さん達はその手のプロになってますよ。そりゃもう。時間の許す限り、選んでください」
「そうじゃー! 祭りじゃー!」
退室。絶対に長い。
○ ○ ○
昼食までは、馬車の前で休んでいた護衛さん四人を馬車ごと庭に入れて談笑した。遊びもしたぞ。魔王ごっこ。黒属性のゴブリンフルアーマーとグレムリンカイトシールドを装着して、如何に威厳ある悪を演じるかを競った。
護衛の仕事もしっかりするぞ。いざってときは着たまま戦っていいと告げていたからな。警戒は怠らずに、威厳ある魔王を演じたぜ。意外にバカっぽいけど面白くて昼からも継続した。
練習も兼ねてたぞ。どうも帰路は四つの戦利品を着て凱旋するようだ。ハーベス王国の民にアピールするため、魔力制御の練習になったと喜んでいた。コツは害意なく発すること。これで被害は減るんだよね。
最後の方は、忍んでいた隠密さんも呼んでコンテスト。一位は老齢の隠密さん。深く重い重圧の魔王は圧巻だったよ。害意のないオーラの出し方は隠密さんがすごく得意で、護衛さんもたいそう勉強になったようだ。
「終わったのじゃ!」
との一声で解散。隠密さんの素早いこと。護衛さんもピシッと姿勢を正す。んー、フランクな護衛さんもいいのにね。
「満足いった?」
「うむ。この様なことを想定しておらなんだろうに、快く提供してくれようた。使っていると言われても、緑に青は捨てられんのじゃ。デザインも素晴らしくて、年甲斐もなくちょっとはしゃいだのじゃ」
「俺と同じくらいだろ? 年相応じゃね?」
「これでも女王なのじゃぞ。子もおるし大台は越えておるのじゃ」
えっ? 子持ちの奥さんだったの? いや、十代中くらい……美魔女ってやつか? 美魔幼女? 女性の見た目が信じられなくなった。
「またなのじゃ」
「このお礼は必ず致します」
嵐が去ってようやくオークションは終わったかな?