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「装備が多いですね。後は貴金属。宝石もありますか」
「本来なら注目を浴びてもいいはずのミスリル装備が売れ残りそうです。いや、当ギルドもドライ様が持ち込まなければ、ミスリルのアックスが候補でした。昨日、鍛冶ギルドに流しましたよ。それが、これですね」
ん? どこかで見たような? まあいいか。
「宝石……原石なのですね」
「そうですね。加工してしまうと用途が限られます。加工の伝がある方々は原石を好まれます」
なるほど。好みに仕上げるのか。オークション以降も金のかかるのが宝石ってことだな。
「あそこ、少ないですが人が居ますね」
「商業ギルドのイチオシです。ですが、当ギルドが勝ちました! 本来なら人気の一番だったでしょう」
人が捌けたので見させてもらう。ハルバード? やけに装飾が多いな。でもどっかで見たことあるが、うちのハルバードのデザイン候補にはなかった気がする。どこで見たんだ?
「コボルトハルバードですが、残念なのが重量増加が付いております。腕力を問われるので使い手を選びますね」
「あー」
思い出した! ゴブリンフルアーマーにコボルトハルバードにグレムリンカイトシールド。八百万リリース初期の中堅装備だ! ゲームでは能力なしの装備達だったが、性能は良かった。
レアドロップなのだが、序盤のモンスターだ。パッチの度に価値を落として、結果はレアドロップ(笑)になったんだったな。いやー、あの時はお世話になりました!
「興味がおありで?」
「腕力に自信はないですが、触っても良いですか?」
「宜しいかな?」
「はっ! どうぞ」
ぐふっ、重っ。重量増加ってここまでウェイト上げんのかよ。両手でも振るのが怪しいぞ。キャンセル前提の『武具創り』。んー、作れるな。やっぱり合計で2000の素材がいる。スロットは3。
「重いですね。ありがとうございました」
「はっ!」
「もう少し軽ければ重さも武器でしたが、よくお持ちになられましたね」
「一応は冒険者ですから。基本は軽量武器で手数ですね」
他にも見て回ったが、特に面白いものなし。奥さん達に目配せしても無反応なので装飾品の貴金属は不要だったようだ。まあ、今の資産だと買える気がしない。
オークションの展示なのに、国賓に見えない。子供が欲しいおもちゃを片手に駄々こねてる感じだ。んー、あれは気になるな。展示品じゃないけど話せるかな?
○ ○ ○
昼食は王家負担で用意してくれた。個室も用意。仲間内で相談する場らしい。奥さん達にも食事が用意されてホッとする。
「今さら取り下げは止めてください」
「しませんよ。ランバルトさんが手放せるかが不安ですよ」
「何故、出品者なのでしょうね。全財産持ってきても入札できません」
本気の目だ。
「フィーリア。欲しいものあった?」
「ご主人様から頂いた指輪を越えるものはありませんね」
「みんなは?」
「ねえな。ゴテゴテし過ぎだ」
「舞踏会でも出ないと不要ですよ」
「行きたくも、ないから、不要」
「ランジェリーが欲しいですね」
「「「そうね♪」」」
いや、絶対に落とせないって。そもそも出品者だって。それに持ってるじゃん! 身に付けてるじゃん! あー、はい。グレムリンを狩ります。
「待ってください! 今、ランジェリーを取り下げたら戦争ですよ! 本気の貴婦人の目を見たでしょう!」
「ランバルトさん、冗談ですよ。しかし、値段の予想が付かないものですね。富裕層のトップでしょうから、財布の重さが量れません」
「ゴブリンフルアーマーとグレムリンカイトシールドのセットは国庫を開くでしょう。個人ではどうにもなりません。ランジェリーは個人の財布でしょうが、ハーベスの女王は国庫を開くかもしれませんよ」
税金でランジェリーを買う? マジかよ。冗談にしても笑えないぞ。
「女王ですから、性能を信じて護身用と言えば通るでしょう」
「そうだ。ランバルトさんに伺いたい方がいます」
「誰でしょう?」
○ ○ ○
特設ストリップショー……ランジェリー展示。そこには小柄の女性と似た顔の従者、他にも護衛がいるが挨拶したい。
「あのお方はハーベス王国の女王であらせられるフェミーナ・ハーベス様ですね。本当に行かれるのですか?」
「はい。どうも空気が変になりましたので、刺激をプラスしたいのですよ」
「……そうですね。大国は強いですね。少し交渉してきましょう」
「ありがとうございます」
昼食で黙らさせられた国賓も多くいるようで、オークションが成立しないかもしれない。裏で金動かす位ならオークションで使え! あー、新生ルーク王国の面子を潰したいのかな?
「出品者の力は強いです。挨拶なら伺うそうです」
「ありがとうございます。待たせては失礼なので行ってきます」
ランバルトさんと離れ、ハーベス王国の女王様に挨拶。ちゃんち奥さん達も付いてきてもらう。必要だからね。
「冒険者の身で女王様へご挨拶の申し出を受けて頂き有難うございます。私はドライと申します」
「よい。善き出品を提供した。誉めてつかわすぞ。妾はフェミーナ・ハーベス。次にこのような物が出土したならば、妾に直接持って参れ」
「その時は是非。なんとも立ち振舞いが『剣姫の舞』のようで美しく素晴らしい物腰、つい我が儘を申しました」
「なっ!? そち、もう一度申してみよ!」
「美しく素晴らしい物腰で「違う!」……『剣姫の舞』のようで、ですね。私の従者であり妻の冒険者証にご興味はありますか? 大変珍しい職業に就いております」
「許す。見せよ」
「サロワナ」
「はい。こちらをどうぞ」
護衛が手を伸ばすが、先に顔のよく似た従者が確認する。冒険者証と俺を交互に見る。サロワナではなく俺を。しかも従者が。女王は対応に困っている。
んー、影武者か。しかし、従者として本人が一緒じゃ意味ないんじゃないか? まあ、でも食いついた。
「少し長くなりそうですので、腰を落ち着けてお話をできればと思いますが、如何でしょうか?」
多分だけど双子。刹那のアイコンタクト。
「良い。着いて参れ」
「はっ!」
この交渉でオークションが荒れるといいな。