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 通されたのは応接室? 賓客用の待合室かな? お茶も出る。さすがに兵士が持ってきた。ここでメイドさんとか来たらビックリするよ。一口、「強癒」も「心技体(オールステータス)」も反応ないので毒なし。


「警戒しすぎです」


「いや、待遇が気持ち悪くてな。疑ってしまう」


「焼き菓子、旨っ」


 サロワナが大人なのに子供に見える。頬張るな。そう言えば甘味なんて食ってねえな。俺も食っとこ。……甘ったる! これは品のない菓子だな。甘味を放り込めばいいってもんじゃない。一口だけでお茶の味が消えた。


「砂糖って、高級なの?」


「産地じゃないと安くはないですね。この国には産地がないので裕福な方のの嗜好品でしょうか」


 帰ったら『乱雑調剤』で研究しよ。この不要品の山(アーマーやシールド)が売れたら金銭的余裕もあるだろう。


 コンコン。


「ん? はい、どうぞ」


「失礼します。冒険者ギルドのルーク王都本部でギルドマスターを勤めているランバルトと申します」


 何故? 物腰に隙なし。うん、この人も結構すごい。立ち振舞いから中衛か後衛っぽいが、下手な前衛より動けるナイスミドルなおじさま。


「あ、失礼しました。俺はドライです。あと、奥さん達で、フィーリア、ロザンナ、ミーディイ、サロワナ、エフェロナです」


 みんなでお辞儀。


「こちらの門兵から、少々時間が空くのでお相手をとの相談を受けました。私もファースト領のマスターであるアリエッタから連絡を受けていましたので、いい機会ですからと引き受け伺いました」


 すっごく丁寧な対応。みんなが優しいと逆に怖い。しかも混沌とする王都で冒険者ギルドも暇じゃないだろうに、俺の暇潰しに自ら来るなんてホントにどうなってる?


「詳しくは述べません。一言だけ。王都は敵ではありません」


「あー、はい。とりあえず信じますので、席へどうぞ」


「ありがとうございます」


 対面の応接セット。先までミーディイ達が座っていたが、俺の後ろへと移動して立ってる。座ってるのは、俺を中心に、右にフィーリア、左にロザンナだ。


「どの様にお話を進めましょうか。オークションの話、王都の状況、ダンジョンにも興味がおありと伺っていますのでその話も可能です」


「時間が残るようであれば王都の状況は気になりますね。先に本来の目的であるオークションの話をお願いします」


「今回のオークションは明後日行われます。三日後には他国の国賓も帰られるのでお土産にと大々的に行う予定です。展示期間が一日設けられるため明日には商品の搬入となります」


「急ですが、大丈夫ですか?」


「ええ。当ギルドでも六枠ほど押さえております。元々、出品できる品に順位を付けておりました。属性のあるゴブリンフルアーマーはトップです。目玉の商品が高価値であるため私の方が幸いなのです」


 王都は護衛依頼が多く買い取りは少ないらしい。更に言えば、ダンジョンも存在するが定期的に宝部屋目当ての散策が行われており、ダンジョンは常に正常らしい。


 でだ、属性付きの宝部屋のアイテムは非常に優秀。ランバルトさんの探りでも、先ずこのオークションにも属性付きの装備は出ないだろうと言うことだ。新生ルーク王国としても、それほどの価値の物を他国に譲る(売る)ので評価が高くなるというものらしい。


「でしたら、こうゆうのはどうでしょう」


 俺は窓辺にゴブリンフルアーマーを立てる。謎仕様で未装着でも自立する。


「五点ですか? 六点だと伺いましたが」


「黒属性のゴブリンフルアーマーは今回見送ります。ですが、これです」


 ゴブリンフルアーマーにグレムリンカイトシールドを着けていく。何故か持てる謎仕様。うん。厳つい。


「そ、それは、グレムリンカイトシールド!」


「そうです。属性付きであり、半透明の能力もあります。火水風土をセットで、白を単品にして計六点です」


「か、確認しても?」


「どうぞ。試着もどうぞ」


 真っ先に白属性をセットで装着。謎仕様その三、触れて念じれば装着。着脱は意外に楽なんだよね。


「ゴブリンフルアーマーの白属性ですら素晴らしいのに、このグレムリンカイトシールドが破格だ! 視界を遮らない上に白属性……もう俺が欲しい!」


 あら、素が出てる。ナイスミドルなおじさまが無邪気に着替えてる。一通り装着して、また白属性のセットを装着して落ち着いた。着たままな。


「あー、おほん。失礼、取り乱しました。全てが一級品。消耗も見られませぬ。この白属性の万能感。誰もが惚れるでしょう」


「喜んで頂けて幸いです。あー、もしかしてオークションには婦人も参加されますか?」


「はい。しかし、婦人用の商品は宝石類であり、目新しいものはありませんね」


「ロザンナ。どうする?」


「良いのでは? ご主人様の物ですから」


「じゃあ、黒で」


「ランバルト様。こちらはご内密にお願いします」


 脱ごうとするロザンナ……だめぇー!


「ご主人様?」


「物だけでいいの! 見せないで!」


「うふふ。では、こちらですね」


 テーブルに、黒のランジェリーセットにガーターベルト付きのストッキング。上品ながらセクシーなのを選んでくれた。


「白属性の装備をセットにして、こちらを婦人用にどうぞ」


「申し訳ありません。サイズを問う物は好まれません」


「入手経路は伏せますが、真の装備です」


「…………はぁ?」



  ○  ○  ○



 ランバルトさんは兵士さんを使い走りに使って冒険者ギルドから二人の女性を呼び寄せた。受付嬢っぽいけど体格差は歴然。


「ここでの事は他言無用だ。いいな」


「「はい」」


「どうにか詫びるので、これを二人に着て欲しい」


「フィルはいいけど、マスター、それあたいには入らねえぞ」


 あたいさんは、うん、前衛を任せたい背もあるいい体格。確かに見た目のサイズじゃ入らないよな。


「私はロザンナと申します。まあ、ご主人様の商品を信じてこちらへどうぞ」


「あ、ああ」


 控え室に消えた。そして……「マジかよ! すっげー」と言いながら飛び出してきた。この人には羞恥心は無いようだ。


「マスター! すっげー着心地いいんだよ! 買ってくれ!」


「ザリー。オークションの商品なのだ。勘弁してくれ」


「マスター様、ザリーが着たら、伸びて商品価値が「フィル! こっち来い!」……えー、ザリーはいつも……」


 また、控え室に消えた。そして……「えー!? ぴったり?」と言いながら今度は控えめに隠しながら出てきた。フィーリアと同レベルのおむn……グフッ。な、なのに、ぴったりジャストフィット。


「これ、スゴいです! あと、マスター様はザリーと私に高級ディナーで許します」


「すまない。喜んで奢らせて貰うよ。ドライ様。枠を買いましょうか? 六点ではなく全て単品で売りましょう!」


「商売ならそうでしょう。でも、俺はある程度のお金で十分なのです。他国からの国賓に喜んでもらいましょう。で、ランジェリーの注意点ですが……」


 ダメージで色褪せること。護身用に最適であるがダメージ軽減でしかないことを伝える。速乾性も伝えておいた。洗濯もダメージだとも。


「これは、新旧ルーク王国としても最高のラインナップです。どの国賓にも満足いただけるでしょう。ランジェリーセットはダンジョンアイテムらしいという噂程度にさせてもらいます」


「それで構いません。よろしくお願いいたします」


「こちらこそありがとうございます」


 固い握手を交わすが、一人、下着姿で申し訳ない。



  ○  ○  ○



 ランバルトさんは最後まで白属性のゴブリンフルアーマーとグレムリンカイトシールドを外さなかった。「宣伝と防衛のため」らしい。確かに高級品であり一級品の装備だ。防衛には向いてるだろうよ。だけど、脱ぎたくないだけな気がする。フィルさんもランジェリーの上から服を着て帰った。


 入れ替わるように入ってきた兵士がランバルトさんを何度見かしてから、宿の用意ができたと伝えてくれた。気持ちはわかるよ。あれはない。


 移動した先は。


「これ?」


「はい。旧ファースト卿の屋敷です」


「旧?」


「はい。断罪されました」


 それ以上は教えてくれなかったが「私欲を出した」とだけ教えてくれた。うーん。欲に溺れてしまったか。残念な人だ。ファースト領の街や村ってどうなるんだろうな?


 特に何もある。広ーい豪華な屋敷。メイドさんの手配を聞かれたが、うん、嫉妬魔神が怖いので断った。しかしなぁ。


「もて余しますね」


「俺もそう思う。どう使えってんだよ」


 滞在期間は「遠慮なく」らしい。とりあえず散策しよ。

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