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 一泊余裕があったがキャンセル。王都でどのくらい時間を食うか分からないからな。


「今日が最後ですね♪」


「明日から禁欲?」


「「「うふふ♡」」」


 俺、早く「強癒」がいるかも。奥さん達が「強癒」で元気に回復するのに追い付かない。元々連戦連敗。見えぬ勝ちが、勝つことすら諦めさせる状況になった。


「まだ、イケますよね?」


 悪魔やー!



  ○  ○  ○



 翌朝。昨日の戦果を確認。


 グレムリン、銛1699、双翼1699、骨布11893、カイトシールド6。


 この数、薙刀が三本追加出来た時点で終了した。残りが少しは奥さん達に頑張ってもらったよ。サロワナ以外に配ってる。属性は白と黒と水。属性は散らしてみた。


 双翼からヘルム……と言う名のファッションアイテム……を14。カチューシャとバレッタを七つずつ確保。現状は共有財産。奥さん達、と言うか、世界共通で女性は髪が長い。両方使っても違和感は少ない……と思う。


 骨布はランジェリーセットをストック17から、グローブとソックスに移行する。黒ランジェリーセットは戦闘メイド達へのお土産だ。グローブとソックスは各221と大量なのだが、薬師男衆にも配るので問題はない。嵩を減らさないとアイテムボックスの空きが不安だ。


 空きが不安なのにカイトシールドがアイテムボックスを六つも占拠した。売れなかったら辛い。


 キリがよく、奥さん達の三文字職がレベル16に。やはり経験値がグレムリンは多いな。と言ってもゲームだと11で繰り上げを狙うなら五人パーティが推奨だ。結構損してる。まあ良いけどね。


「あ゛~。飯が旨い」


「ご主人様、「強癒」、期待」


「むー! ミーディイさんが正妻を狙ってます!」


「痛い! 違うよ。狙ってるの、子供。みんな、一緒に産む」


「「「良いわね~♪」」」


「一番は私だー! ご主人様、早速!」


「あ゛~。飯が旨い」


「むー。みんな、搾りすぎです! 私のが減ってる!」


「……なあ、遠慮は? 禁欲日は?」


「「「うふふ♡」」」


 今日の転職、「強癒」だな。



  ○  ○  ○



 名残惜しい高級宿と別れ、一路王都へ。


 商団が先を走るので楽な道中だ。俺はとっても暇。だって。


「おかしいわ。黒属性で付いただけで四散するわ」


「意外に、属性は難しい」


「私なんて凍って砕けたわよ」


 ロザンナ、ミーディイ、エフェロナ、三人が稀に出てくるウルフで試し切り。どうもスキルに乗せない直接攻撃は威力が強すぎるようだ。俺の飽和攻撃は広範囲に分散しても、強くなってる筈のグレムリンでも一撃だからな。一点集中は弱いウルフなら爆散する。


 かといって、人が居る可能性のある街道で範囲攻撃はまずい。被弾させれば殺人になる。多分だけど、俺の小太刀も、みんなの薙刀も、素の攻撃力が高いんじゃないかな? この辺りが数値化されない異世界は不便だ。


「主人よー。私だけ仲間はずれだ!」


「あん時にもう500ほど粘ればよかったか?」


「あー、無理だな。疲れてた」


 結果的にウルフを肉として狩るならサロワナが一番上手だ。加減に慣れてるからな。まあ、薙刀になったら四苦八苦するだろうけどね。



  ○  ○  ○



 特にイベントもなく、ウルフは全て放置で宿場町に到着。


「荒れてます?」


「いや、賑わってんじゃない?」


 どうも、王都からの帰還者と合流している様子。早馬で帰っているのだろう便がここでぶつかってしまった。王都までまだ二つの宿場町を越える筈なのにな。早いよ。宿が空いてるかな?


「宿が空いてません!」


 宿場町は狭い。祭りなんて想定して無駄に広くは作っていない。通常の流通しか考慮してないんだ。


「空き家があるそうですが高いですね。固定資産税を上乗せされます」


 宿場町の苦肉の策で空き家を解放しているらしいが、持ち主が便乗して固定資産税の一部を上乗せしている。宿賃も本来なら上乗せしているのだが、空き家は宿ではない。お祭り相場ともいうべき比率の上乗せだ。


「飯無し、布団無し、それで1000ルークか。妥協してやるか」


「野宿より、いい」


「そうですね。では、仲介を頼んできます」


 宿から家主へ。家主の案内で空き家へ。


「簡単には掃除をしております。お好きに使ってください」


「分かった。早朝には出る。そのまま空けるがいいか?」


「はい。宜しいですよ」


 家主が去って物件探検。と言っても普通の農家の民家だ。広いが特質するものはない。広いだけ。納屋があるので住居スペースが広いのではない。俺達には無駄が多すぎる。


「ご主人様、もう夕食でいいのですか?」


「ああ、明日は夜明けと共に出る。徒歩半日ちょいの道のり三日分を越えて王都に突っ込むぞ。早めに食って寝る」


「あのー、今晩は?」


「もちろんお預けだ。準備頼む。俺は転職神殿に行ってくるよ」


「うー、お供します!」


 と言っても冒険者ギルドの支部の側に一つある転職神殿でサクッと「強癒」になるだけだ。付いてくるならまあいいけど。


 折角の台所、今日は手料理だ。と、奥さん達で相談しているのを置いて、俺とフィーリアで転職神殿へ。



  ○  ○  ○



 ギルドもごった返している。正規の護衛が不足しているようだ。早馬での移動についていく冒険者はいまい。先ず馬を所有してないだろ。よくここまで戻ってこれたな。


「おい……ガキか。いや、いい」


 とまあ、口説かれたのにフラれた。それも三件目。宿場町に要求するくらいなら、ダワスで見繕え。


 転職も終えて帰って来たら借りた空き家に馬車が横付けされていた。駆け足で戻ると、ロザンナとおっさんが口論していた。ロザンナは物腰柔いからいいけど、おっさんが失礼だ。


「おい、一緒に泊まるだけだ! 売女崩れが文句言うな! ちゃんと買ってやるから贅沢言うんじゃねえよ!」


 ゴブリンフルアーマー(黒属性)装着。ついでにグレムリンカイトシールド(黒属性)も持つ。そして乱入。


「なあ? 俺の女を買うって? いい度胸だな」


 黒オーラ発動。


「ひぃ! 黒属性のぉ!? し、失礼しました!」


「まあ、待て」


 逃げるおっさんの襟首を掴む。触れただけで黒く焼けるおっさんの肌。黒オーラも抑えても火傷(?)はするようだ。


「いてててぇ! 何だよ!」


「俺の女に詫びが足りん。全く詫びていない。あと、外の奴等が勝手に準備しているがどういう了見だ? 詳しく話せ」


「すまないって! ここの家主が2000ルークで貸したんだよ! もう金輪際手は出さねえから、離してくれ!」


「了見は分かったが、罵声に対しての詫びが不十分だな。商人なんだろ? ちゃんと正当な対価を払えよ。詐欺でもしてんのか? 先ずは自身の慢心を取っ払おうか。土下座だ」


 少し体制を崩させて手を離す。それだけで地面に崩れ落ちた。渋々な態度に黒オーラちょい増し。


「ひぃ! た、大変無礼を申し上げました。こ、この土下座にて許していただきたいと思います」


「ふぅ。これ以上は許しませんが、先程の暴言は流します」


「あ、ありがとうございます」


「さて、次だ。家主を呼んでこい。ああ、馬車はその後に動かしていいぞ。従業員は大人しくさせとくからな。まあ、逃げても責任は取れんぞ」


「酷すぎる! 横暴「どっちがだ?」……うぐっ!」


「反省が足りないなら体に教えてやろう。なに、そっちが売った喧嘩だ。おまえが始めた交渉ルール、どっちが強い立場で弱者を一方的に押さえ込むかだ。おまえが悪い」


「わ、分かった。従業員には手は出すな」


「手は出さんが、一方的に嫌われる容姿だ。勝手に逃げるのは知らんぞ」


 おっさんがあわてて外に出て指示を出す。その後に家主を呼びに行ったようだ。


「大丈夫か?」


「ええ、交渉が加速しそうなときに帰ってこられたので、被害はありませよ」


「料理は?」


「はい、もうすぐ出来上がります」


「先に一人前だけ用意してくれ」


「はぁ、分かりました」



  ○  ○  ○



「ひぃ」


「何か? そうだ、食事を馳走しよう。入れ」


「い、いえ。お代をお返ししますから「食えよ」……はい」


 家に招き、食事を与える。熱いのに流し込むように食う家主。ああ、従業員は勝手に減ったが、おっさんは帰っていったよ。


「なあ、家主。この食事にどのくらいの価値がある?」


「えっ? 5ルーク「はぁ?」……30「聞こえんぞ!」……1000ルークでございます」


「ふむ」


「……ご馳走のお礼にこちらを」


「それは申し訳ないな。お心遣い、感謝しよう」


「……では、お邪魔ですので失礼します」


「善き家主であった。これからも()()()()()を望むぞ」


「ひ、ひぃ!」


 これでタダだな。いやいや、一食も食わせたからいい交渉だっただろう。ふむ。因果応報な取り引きとでも言おうかな。


「あー、疲れた。ゴブリンフルアーマー、これだけ残すかな」


「盾も、いい味、出してるよ」


「威圧するには面白いな! 王都にはそれで入ろうぜ!」


「必要以外使わないって。さて、飯にしよう。明日は早いよ」


「「「はーい」」」


 食後の攻防は、俺が勝った! 禁欲です。じゃ、板の間は寝心地悪いけどおやすみ。



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