086
まだまだ王都には遠いのだが、高級宿を金払ったのに蹴る気もないし、昼から出ると次の宿場町も怪しい。夜道を歩きたくもないし、野宿の準備は考えすらない。ちょっと異世界道中を舐めてるかな?
「と、暇になったが、ダンジョンと観光、どっち?」
「「「ダンジョン!」」」
「黒はいいぞ!」
「メリハリ、出る色よ」
いや、ナイスバディなお姉さんにメリハリ出ると見るのも困る。見るだけじゃ終わらない俺のハーレム。連戦連敗で毎日が戦いだぜ。ふぅ。
「メイド服はやっぱり黒と白ね」
「そうよね。あれは良いわね」
「みんなでお揃いです!」
あら? フィーリアとロザンナがメイド服を戻す予定だったろうに、みんなでメイド服なの? 仮にも「王妃」なのにな。名前だけだけど。
「じゃ、久々にハズレの5ルーク定食も食ったし、行くか」
「「「はーい」」」
出る間際に店員に睨まれた。だって、芋だけで腹膨らますのはどうなのって言いたい。冒険者ギルドの側はハズレが多いな。
○ ○ ○
一層、二層、完全無視。一気に突っ込んだ三層。人気なし。
「「『肉皮剥ぎ魔術』」」
二重の範囲状態異常に大半が撃沈する。いや、この肉離れの状態異常は酷いよな。体の一部じゃなくて、重ね掛けしてったら心臓麻痺をも引き起こす全身への筋肉への不全。食らいたくない。防ぎ方が全く分からないな。
「「「『骨下拵え術』」」」
本来なら『骨布変化術』を通し易くする魔法だが、骨を軋ませ、過剰だと折れる。これも当たれば状態異常になる魔法なんだったが、リアルだとエグい。食らいたくないな。
俺は土属性の範囲攻撃で入り口からの援軍封鎖。いつものパターンだ。どうもこっちの世界じゃバグ職の生産職が異常に価値が高い。そこまで狙ってなかったのにな。この小太刀も『妖刀刺し』という近接単体攻撃が、属性乗せたら直線広範囲の波動砲だよ。異常だが助かってる。
「終わりましたー」
「今日は調子に乗って良い?」
「いつも、ご主人様の、独壇場」
「いや、この階層を攻略する勢いで殲滅したい」
「その前に、アイテムボックスの空きを作ってほしいです」
あ、忘れてた。入り口封鎖に久々の『残虐創設』を地面に設置。飛んでても判定あるはず。二枚とも設置して継続ダメージで死んでくれ。
○ ○ ○
さて、『武具創り』だが、双翼で一つのモンスター専用の装備アイテムだった。飾りなのかよ! グレムリンなら自前で羽生やせ!
→ヘルム 消費117
ベルト 消費228
シールド 消費339
デザイン変更 消費3
ここで盾か! だが、使うか? 使うな。両手に杖とかおかしい見た目なんだよな。頭装備も捨てがたい。んー。みんなの頭を保護してから盾だな。空いてるとことは埋める。
なん……だ……と!? カチューシャやバレッタもヘルムだと? 他にも王冠やティアラもある。いや、普通のヘルムやフルフェイスもあるよ。ネタに走らぬようにカチューシャとバレッタ。シンプルな小さな花模様のシルバーアクセになった。
「どっちが良い?」
「「「どっちも!」」」
「頭装備って重複すると効果がないんじゃない?」
「とあるお伽噺です」
「なんと! ここでロザンナのお伽噺?」
「戦争中の国の怖がりの王様は、国の財を全て使ってゴブリンフルアーマーをいっぱい買いました」
「この話は説得材料ね」
「もう! ごほん。王様は騎士に与えるのではなく、全て自分に着せてしまいました」
「あれを重複!? ある意味根性あるな」
「着膨れした王様にはどんな刃も魔法も受け付けませんでした」
「なるほど、重複するのか」
「そして受け付けないのがもう一つ、食事でした。王様は植えて死んでしまいましたとさ。おしまい」
「酷いオチだ! 飯の時くらい脱げよ!」
「なので、両方です♪」
オプションは、カチューシャにダメージ軽減、バレッタに状態異常軽減。デザインは細かく変えて、カチューシャ2、バレッタ3、と用意した。盾はお預け。
「素材が足りないのですね。頑張って拾います!」
「いやいや、待って。銛も考えるから!」
→ランス 消費144
ハルバード 消費288
薙刀 消費576
デザイン変更 消費3
ロマン一択の薙刀で。ちょっと幅広でひどく反りのない刃と、持ちやすいシンプルな長い柄。刀身三尺と柄三尺の全長六尺らしい。何故か尺の単位で作成。
やはりロマン武器はスロット4。むっ! 嬉しい誤算。杖扱いらしい。杖のオプションも選べる。やはり武器なら、風属性と属性増加。ここで杖のオプションである、MP消費軽減に範囲増加を足す。
この薙刀、属性の有能性能に、杖の魔法補助を良いとこ取り。先ず持たせるのはフィーリアだろう。嫉妬で矛先が俺に向かないことを祈って貸与。
「なるほど。ご主人様のバカみたいな火力に近づけるのですね」
「ディスるな。モンスターに温情はないよ」
「試していいですか?」
「どうぞ」
『残虐創設』のエリアを越えれないグレムリンが無謀にも突っ込み続けている。土属性を乗せたから威力増大してるんだよね。でもグレムリンも強いよ。一枚なら越える。フラフラだけどな。
「風属性の範囲マシマシ、『骨下拵え術』!」
風を纏ったほぼ無色である魔力の砲弾。サッカーボール位の弾が一番近いグレムリンに着弾。そこを中心に荒れ吹く暴風。周囲のグレムリンも巻き込んで落とした。おー。骨砕きが乗ったかすら不明だが威力強いな。
「ご主人様! ご主人様の真似事が出来ました!」
「うん。思った以上に強いな。偉いぞ」
頭をなでなで。
「えへへー」
「「「いいなー」」」
「えっと、頭撫でる?」
「「「それも♪」」」
何故かお姉さん達の頭も撫でた。方向性として、前衛であるサロワナもエフェロナも装備することになった。もちろん、後衛のロザンナとミーディイもだ。「術射」を辞めて「杖術」に移行するようだ。
「さて、狩るぞ!」
「「「はーい♪」」」
○ ○ ○
はい、俺無双。いや、多分だけど適正レベルの遥か格下を相手してるからね。土属性の『妖刀刺し』波動砲。敵が萎れて死ぬ。空いた左手にはフィーリアに渡した薙刀。吸血で強化しときたいんだ。
「あー、やっぱりあったか」
「宝部屋ですね♪」
サクッと仕留めて検分。一発目でゲット。
「ゴテゴテしてるな。使いたくはないな」
「オークションの商品で良いのでは?」
グレムリンの階層の宝部屋のレアアイテムである、グレムリンカイトシールド。無駄な装飾で羽を模した物もくっついてる。えっと、あれだ、クリオネみたいな形だ。大きさはフィーリアが隠れるから150はあるだろう。
「あっ、作れるようになった。だが不要だ! 消費が合わせて2000もいるのにスロット3。ええい。白属性を付けてやれ! ついでに無意味に半透明もだ!」
「豪華ですが、荷物ですね」
その後も順調に乱獲。宝部屋は溜まっているので楽だな。追加でグレムリンカイトシールドが六色揃ったよ。
「ご、ご主人様ぁ。もう、無理ぃ」
「確かに疲れたわ。お開きにしましょう」
「む。五千匹はお預けか。残念。帰ろうか」
「半日で五千は無理だろ!」
「拾う方が疲れますね」
「ご褒美、求む」
アイテムボックスは特別役職枠分ほど増えているが、加工しないと持てなかった。なので作りながらになった分だけ、奥さん達の疲労が濃い。
オークションへの土産が増えたから良いんじゃないかな。帰ろ。