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 昼過ぎの冒険者ギルドの酒場。大体が作りは同じ。広く席の多いテーブルセットが並び、階段横にはポーション売り場がある。


 あえて、ど真ん中に陣取った。


 隅だと囲われたら身動きとれない気がしたんだよね。複数のグループが牽制しあえば騒ぎも大きくはならないだろう。まあ、騒ぎを起こす要素は美人の五人の奥さん達だがな。


 過度なのには介入するが、とりあえず転職を悩む。


 二文字職 村正

  レベル10

 二文字職 戦術

  レベル10

 二文字職 強癒

  レベル10

 三文字職 残具創(ジャンクリメイカー)

  レベル15

 三文字職 心技体(オールステータス)

  レベル14

 四文字職 妖刀村正

  レベル1

 五文字職 -

  レベル-

 六文字職 -

  レベル-


 とまでは暫定的だが決めた。五文字職や六文字職で有名なバグ職は「()()(ゴン)」シリーズだろう。「怒髪拳士」と「森羅聖霊師」と「権謀術策士」の当て字だ。


 この中で「怒髪拳士」と「権謀術策士」はもう得てたりする。


 「怒髪拳士」は、モンスター千匹を一撃連続討伐、という楽な職業だ。雑魚狩りに勤しんでいた俺には楽な条件だったな。


 「権謀術策士」は特殊なのだが、クランやギルドやパーティであり対人戦で圧勝する、というものだが元ギルドマスター(偉そうなおっさん)で判定があったのだろう。


 最後の未取得な「森羅聖霊師」は、土属性魔法で五千匹討伐、だ。先の話と思い全く触れていない。土属性の武器すらないが、デザイン変更で達成可能だ。五千匹かぁ。遠いよ。


 ここで気付くだろう「()()(ゴン)」シリーズは三文字だ。三文字バグ職には「()()(ゴン)」は存在しないのだ。三文字だと弱いからな。


 頭に二文字か三文字を追加される。それも面倒なんだよな。代表的なモンスターのドラゴンは六属性ほど存在する。それから強さが上下するが分類を分けるなら、火水風土と光と闇……こっちなら白と黒か……が存在する。


 何を狙うか。


 火の「(レッ)()」、水の「(アク)()」、風の「()()」、土の「(サン)()」、この二文字が追加されて五文字となる。


 光の「()()()」、闇の「()()()」、この三文字が追加されて六文字となる。


 ここで色々なファンタジーゲームのドラゴンの価値観について述べよう。基本的なファンタジーならラスボスや裏ボスにもなってもおかしくはないだろう。それでなくても上位モンスターになるだろう。


 俺の愛したVRMMORPG八百万は、中級の敵で落ち着いているのだ。しかも群れる。体長二メートル程度の中型なのだ。結構な数のドラゴンバスターが存在するが、この称号には、まあ意味はない。


 そう、群れて仲間思いなモンスターが八百万(このゲーム)のドラゴンの位置付けだ。


「そうなんだよなぁ。パーティに影響があるんだよなぁ」


「ご主人様ぁ。ヘルプですよぉ!」


 おっと、取り巻きが奥さん達のパーソナルスペースを犯してる。けしからん奴等だ。一番対応が甘いフィーリアが涙目だな。


「おい! 俺の奥さん達に触れたら命がけの決闘をするぞ!」


 強く威圧する。が。


「優男が美人五人の旦那だぁ?」


「おい。こいつ殺ったら未亡人だぜ!」


「「「賢いな!」」」


 受諾された。一応、掛け金も用意させる。一万ルーク。この辺で結構な数が脱落。最近までは人のことは言えんかったが、この貧乏人め。


 残ったのは五人。一対一。俺だけ連戦。不戦敗でも掛け金は支払う。生死は問わない。職業(手札)は見せない。以上のルールがロザンナの仕切りで決まった。


 冒険者ギルドの職員は一部は暇。「交渉人」も「公証人」も暇していたので公証で契約してスタートとなった。



  ○  ○  ○



 ふむ。とっても面倒だな。かといって無駄に手札を見せたくはない。こちらの世間一般的な最高品質の装備で挑むか。


「「「えぇえーーー!!!」」」


 ゴブリンフルアーマー(黒属性)で登場。演出のため、魔力を通して黒いもやを纏っている。なお、武器はゴブリンソード。


「ちょ!? 90万はする黒属性のゴブリンフルアーマーなんて聞いてないぞ!」


 もう、一人目から戦意が見られない。


「ハンデにゴブリンソードにしてやってるだろ。ほら、奥さん達を未亡人にするって気合いはどうしたんだ?」


 フルフェイスのゴブリンフルアーマー。声が隠る。逆に威圧的に聞こえたようで、完全に沈黙している。後ろに控えてる順番待ちもそうだ。


「一万ルーク。足元に置いて降参しろ。それ以外の動作は試合開始ととる。さっさと選べ」


 ちょい強めに黒オーラ。


「「「ひぃ!」」」


 慌ててアイテムボックスからお金を出して数えて置いていく。小銭が多いな。両替しといてもらえば良かった。


「返事が無いぞ」


「「「こ、降参だ!」」」


 よし、五万ルークゲット! 実際、この鎧って俺には向かないんだよね。動き辛い。むしろ、着ている方がハンデだな。


「あ、あの! 買い取りは無理でしょうか?」


 ギルド職員が言ってくる。商魂逞しいな。


「なんぼだ?」


「55万ルークで如何でしょうか?」


「ふむ。値切りたいようだな。この鎧と110万ルークを賭けて決闘にするか? 勝てばタダだぞ。負ければ倍額だがな」


 執拗に黒オーラ。


「ひぃ! し、失礼しまし「お、いいな!」……マスター?」


「商品になるんだ。脱いで勝負だろ?」


 女……だが、脳筋じゃないな。強い。下手に煽るんじゃなかったか。


「即金110万ルークだ。用意して公証の契約をしろ」


「あー、立場的に死合うのは駄目だ。何処かのバカはそれでギルドを混乱させたって聞いてる。降参でいいなら、戦おうぜ」



  ○  ○  ○



 サクサクっと話が進んでしまった。引き返せないので手札を一枚切るか。殺さないって難しいんだよね。大体が致命傷だ。


 鎧を脱いでいつもの装備になる。うん、動き易い。


「珍しいな。カタナってやつか? 聞くより短いんだな」


「小太刀だ。片手用なんだよ」


「なあ? なんで左なんだ? しかも右には舐めたようなゴブリンソード。本気なのか?」


「決闘は始まってるよな? まあ、これはこう使うんだ」


 俺と女マスターとの空間にゴブリンソードを投げ付ける。女マスターは一瞬身構えたが、咄嗟に、そして全力で後方へと跳んだ。


 シュゴォーン!


 へぇ、黒属性の威力マシマシだと、音はくぐもった爆発音になるんだ。


「すまんな。この攻撃に耐えられる武器は少ないんだ。だから使い捨てのゴブリンソードにしている。決して舐めている訳じゃないんだ。あと、命を奪わないようにするが、後遺症は責任取れんぞ。こっちを振るうと最低でも致命傷だからな」


 左手の小太刀から黒オーラを発する。ついでに右手にはゴブリンソードを追加。


「ははっ。化け物か? 技量的に同レベルだと思って楽しみたかったのに、この決着か? 普通に打ち合わないのか?」


「済まない。諸事情で攻撃を食らうとあんたが傷付くんだ」


「何だ、それは?」


「どこぞのバカはそれで負けたんだよ」


「あー、三文字バグ職ってお前か。あのバカの全力の一撃を無傷で防いだってのは聞いたが、()()()()


「自分が放つ必殺の一撃が自分の命を削るんだ。実力が拮抗していると当ててしまう。いや、当たってしまう。命をかけるならいいが、手加減できない以上は無事を保証できない」


「それで、この結末か。隠し手を二つも晒して私に配慮したんだ。潔く敗けを認めよう」


「いや、引き分けでいい。一時いるから、ここのバカ達に奥さん達にナンパはしないように言ってくれ。決闘を汚したしな」


「惚れていいか?」


「あっ、駄目だ! いや、フィーリアさん。これ、ナンパ、違う。ねえ、聞いてる?」


 むちゅ~ぅ♡


「っ、ぷはっ! いや、人前で嫉妬しないで。ちょ、みんなも止m……ぷはっ! やめっ。これ以上は駄目だって!」


 フィーリアのディープな口封じの応酬を繰り返してると、女マスターがロザンナと話し出した。


「あれ、どうなんだ?」


「若いわよねぇ。ねえ、本気なの?」


「ああ、結構な。あの強さなら文句なく私の代わりになる。それで私は夢の専業主婦だ」


「ですって、フィーリアちゃん。やっぱりナンパよ」


 ロザンナ!? 煽ってどうすんの? いや、こんな場所じゃヤらないよ! ズボンから手を離して! 下げちゃ駄目だって!


 やーめーてー!


 落ち着くまで暫しの時間を要した。日が暮れそうだ。

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