081
「すまん。ルームサービスは昼からにさせといて。昼まで寝る。フィーリア、抱き枕になって」
「はーい♪」
「分かりました。ごゆっくりお休みください」
昨晩と今朝、二度も搾られたら眠気がひどい。フィーリアも満足したようで俺の胸に寄り添って二度寝に付き合ってくれる。
○ ○ ○
「ご主人様。時間ですよ」
フィーリアが起こしてくれる。あれ? 寝てないの?
「これは幸せです♪ 寝るのが惜しいですね♪」
寝ずに抱き枕をしてくれていたようだ。感謝。二度寝も熟睡。あー、二文字職は「強癒」にしよう。こんだけの職があれば魔力枯渇は考えないでいいと思うからな。「村正」は保留で。
三文字職はこのまま、「残具創」と「心技体」でいいな。普通の四文字職と特別役職枠は別物みたいだしな。このまま育てる。
特別役職枠の四文字職は「妖刀村正」でいい。五文字職に六文字職か。悩むな。
っと、思考が寝惚けて明後日向いてた。みんなは?
「この宿は昼のサービスは無いそうです。屋台で調達してくるそうですよ。あ、部屋の清掃は外出中にするそうなので気にしなくていいそうです」
「助かる。……ん」
「どうしましたか?」
「手つきがお上手ですね。でも外出予定だから止めようね」
「えへへー。病み付きなんです♪」
微かに残る賢者タイムの名残をきれいに吹き飛ばしに来るフィーリア。次は理性との勝負か。最近、性活が乱れてるからなぁ。一日中とか本当に不味いって。
しばらくイチャイチャと攻防を繰り広げていたら、奥さん達が帰って来た。テーブルにはパンに串焼き。定番だね。落ち着く。
「この部屋で調理は出来ないので」
「いいよ。お代は?」
「貰った金を使ってねえよ。使わせてくれよ」
「……疲れた」
「商人のナンパ多いですね。女性の衣服を狙うなんてどうなのでしょう」
ふむ。色々と揉まれたようだ。王都に向かってるっていう商人かな。さすがに身ぐるみを要求するのはどうだろう? バカじゃね?
昼飯を食いながら外の様子を聞く。
「明後日の王都での祭りの詳細です」
情報をまとめ、俺なりに推測も交える。
元国王陛下から第二王子が王位奪還の臣民決議を行う予定らしい。継承権のあるものが異議を申し立て、臣民の票を得られれば王位を奪えるそうだ。
特別役職枠で言えば「王子」が臣民の票を得られれば「国王陛下」を奪えるらしい。うん。両方持ってる。と言うか、この国に俺以外は特別役職枠が無いよね。さすがに一般市民に落ちた王子は奪えない……と思う。
どうも、王様は「欲しいものがある」と言って、国内全ての特別役職枠を奪ったらしい。欲しいものってバグ職情報かな? まあ、昨日の俺の宣言で貰えたようなので、何かしらの契約が勝手に作られていたのだろう。「公証人」がいないと契約って拘束力が怪しいからね。
契約が成立したのかな? その王様は正式にバグ職情報を買い取ったのだろう。対価が国内の特別役職枠全て。でも、明後日には新王が誕生するよね。ここら辺に逃げ道ありそうだが、これ以上の推論は無理。タイミング的にギリギリだったかなって感じ。
対価で貰った物だ。それを都合よく奪えるとは思えない。奪ったら王子でも泥棒だろう。捕まえにいこう。そうなったらね。
「ありがとう。ちょっと高いけど、ここを定宿にして王都の祭りが終わるまでのんびりしよう。俺も転職して役職消したい」
「ご主人様。「国王陛下」の職は直ぐに消すのですか?」
「推測だけど、「王太子」を消している間に物事は動いた気がする。権力は職に就いていないと意味がないのだろう。今、「国王陛下」から離職すると「王子」じゃない王子に奪われるかもしれない。残念だけど、直ぐには動かせないね」
「「王子」じゃない王子? 「王子」も奪ったのかよ?」
「「国王陛下」のスキルで唯一残っていた特別役職枠が「王子」だったんだよ。不審に思ったから『王命』で奪った。この場合、無理矢理返上させたってのが正しいかな」
「職業が物言う世界で「王子」じゃない王子の政権交代劇。明後日はどんな混乱が待ってるのでしょう」
「と、言うことで転職が出来ない。「貴族」も「王太子」も「国王陛下」も終わるまで弄れないな。狙うなら五文字職か六文字職か。必要な文字が足りないな」
「昨日聞いた限りですと、四文字職の条件はモンスターを倒すのですよね。ダンジョンですね」
「ちょっとゆっくり考えさせて。今から頭ん中で整理する。買い物とかなら付き合うよ。ボーッとしてそうだけどね」
「じゃ、出ようぜ!」
「……嫌」
「商人のいないところが良いですね」
「冒険者ギルドの酒場くらいですか?」
「そうね。出ないと汚した部屋を掃除して貰えないわ」
消極的な結論でギルドの酒場となった。ナンパはお断りだが、情報は欲しいね。狩場の情報大事。職業の習得条件にモンスターの指定もあるからな。
「よし、動こう」
「「「はーい」」」
冒険者ギルドへ。