078
ここは領と領の間にあたり、ファースト領と……えっと、ダワス領だったかな、それらが協議して負担しあう街道となっている。だが、自領でもないのに経費をかけたくはないのが心情で現状だ。
だってなぁ
「へへっ。今日は祭りになりそうだな。なあ、お前ら!」
「「「ひゃっはー!」」」
このひゃっはーな群れが盗賊らしい。先に進んでいた商団がやられた様子で死体と馬車以外は盗賊のみだ。で、仕立ての良い服を着た美人集団が現れれば、遠くからでも臭うくっさい男どもには祭りなのだろう。
実現すればな。
思った以上にバカだった。伏兵の気配無し。見事にボロクソの装備を纏ってとっても貧相。ってか、換金手段あんのかな? 街や宿場町に通じてる人がいると考えるのが妥当だろうけど、興味ないな。
一応は警戒して囲ってはくるが、射程圏内であるし、「どう犯す?」みたいな雑談も交えてとても余裕をかましている。まあ、30に対して6では圧倒できると思うのだろう。あっ、火魔法も使うのか。『正刀弾き』を乗せた投剣で火球を撃ち落とす。
「おっ。中々やるじゃねえか。こいつの前で女どもを犯すのも一興か? それとも「うるさい。『肉皮剥ぎ魔術』」……ぎゃあぁぁぁーーー!!!」
「「「はぎゃあぁぁぁーーー!!!」」」
ミーディイが我慢を越えた。魔法を使うなら、使われることを考えればいいのにな。この手のやつらは「お約束」をしないと生きていけないのだろうか? さて、俺の出番は?
「「「『骨下拵え術』!」」」
「追撃します。『肉皮剥ぎ魔術』」
骨も筋肉もボロボロにされたな。これって治るのかな? 治すにしても、その価値はあるのだろうか?
痙攣も怪しいほど筋骨粉砕された盗賊。どうしよう?
「褒賞金が出ますよ!」
「これを運べと?」
「「「……触りたくない」」」
「だろ。放置だ、放置。誰かに漁夫の利をあげよう。お仲間が居るかもだけど放置だ。俺らは何も見ていない」
「「「賛成!」」」
「生きてるだけありがたいと思え。って、聞こえてないかな。行くよ」
「「「はーい」」」
○ ○ ○
えっと、ダワス領の関所。ちなみにファースト領でも関所はあったが、出領税は100ルークだった。入領税も同じらしいぞ。奴隷も同額。ここでは。
「一人500ルークだ。奴隷は商品だ。一つ1000ルークだ」
高いよな。まあ、にやけているので着服するのだろう。フィーリアだけ倍額なのも奴隷は置いていけって意思表示かな? 服も上質すぎると足元見られるんだね。3500ルークを手渡し。小声で「横領、捕まえた」と呟いてみた。
「ふぐっ!」
「正確な入領税はいくらですか?」
「……一律、100ルーク」
「では、これは返してもらいますね。はい、600ルーク。業務に励んでください」
「……はい」
とりあえず入領できた。悪人が多すぎて怖いね。この世界って直ぐに犯罪者になって、捕まりゃ奴隷なのにな。人の欲は怖いね。別の門番は何やら騒ぎに巻き込まれているようでこっちに気づいていない。
「行くよ」
「……はい」
「ああ、門番は一生真面目に業務に励んでね。これ以降の命令の変更はないよ」
「……はい」
「みんな、行くよ」
「「「……はーい」」」
○ ○ ○
「さっきの隣の騒ぎは盗賊から逃げた被害者ですね。領外の騒ぎなので対応に困っていました。ファースト領への武力牽制に取られないように動く必要があるそうですよ」
「フィーリアはそっちに意識してたのか。あの門番はフィーリアを狙っていたぞ」
「払えない額じゃないですし、ご主人様が許すとも思えませんでしたので情報収集に励んでました」
まあ、払っても良かったが、あの小物門番はちょくちょく隙を見ては弱者から搾取していたのだろう。今回だけだったら、多分、奴隷には落ちないよな。盗賊に繋がってたり、何てな。
「先ずは今晩の宿か。門番があれだと聞けなかったな。どこら辺が良いだろうか?」
「大概の普通の宿は門の近くですよね。街に着いたら分かりますよ」
関所から街には少し間がある。確かに街に入ったら分かるよな。不親切な場所に宿はないだろう。
「主人! 普通のダンジョンを見てみたいぞ!」
「普通ってのは冒険者が出入りする人混みのあるダンジョンってことか?」
「そうだ。あと、コボルトの布をおねだりしたいぞ!」
「見られたくないんだけど。どうして?」
「メイド服のまんまだ。あれは外じゃ着れねえよ」
「自業自得。ご主人様に、迷惑。素直に着たら?」
「えっ!? 着ていいんですか?」
「ダメだろ。余計に目立つ。離れて歩くか?」
「ぶー」
しかし、ゴブリンソードもだいぶん減ったな。ここなら売ってありそうだが、拾ってもいいかもしれん。……混んでると期待できないかな。
「じゃ、冒険者ギルドに寄ってダンジョン情報を聞こう。混雑なら止める。空いてるなら一泊多くとって半日程度はダンジョンに行こう」
「甘いですね」
「うん、甘い」
「ありがとう、主人! 今日はたっぷりサービスするぜ!」
あれ以上!? 明日、起きれるかな?
○ ○ ○
俺らは南から入った。もう一つの街道は西らしい。で、王都は北。ダンジョンとフィールドは東に集約されている。いや、街の発展が安全で人のいる街道の方に伸びてこの形になったのだろう。
で、街が賑やかだ。どうも、王都で大きな催しがあるそうだ。商人達は足早に王都へと向かおうとしている。詳細は不明だが噂では世代交代らしい。情報料は肉串60ルークなり。ああ、みんなでね。
「ご主人様が第一ですよね? どうなるんでしょう?」
「知らんがな。ギルドに寄った後にでも転職して確認しよう」
「放置、しないの?」
「んー、直感だが悪意を感じる。……先に転職するか。王都は荒れそうだから、ここに数日滞在しよう」
「「「はーい」」」
大きい街ならそこそこな数が存在する転職神殿。転職なんて本来なら一瞬なのでそんなに数は要らないと思うぞ。
「名残らしいですよ。訓練所の数だけ転職神殿はあったと聞きます。これでも減ったのではないでしょうか」
「まあ、いいや。転職っと」
手を合わせて「残具創」を「王太子」に転職。ふむ。変化はないな。
二文字職 村正
レベル10
二文字職 戦術
レベル10
三文字職 心技体
レベル14
三文字職 王太子(ルーク王国第一継承権所持)
レベル1
「あら? 「残具創」を転職したんですか?」
「そっち? いや「心技体」は護身用だし、戦闘に最近は使ってないからね」
「やっぱり次の国王様ですね♪」
「だから不自然なんだよね。噂は噂かな?」
「で、戦闘に使えんのか、それ」
「いや、はっきりとさせようと思ってね」
「意味不明」
ここの犯罪って「犯罪」の職になって捕まえ「奴隷」にするのと、一気に犯罪を暴露して「犯罪」を飛ばして「奴隷」に出来るってのがある。
前者は殺人やらの犯したら直ぐに「犯罪」になる場合。後者は詐欺や借金などが当たるだろう。ってことで意思を明確に宣言する。
「バグ職の転職方法の礼金をここまで待ったんだ! 関わった者は全て金を今すぐ払え!」
俺は明確に意思を主張した。