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 外側が見えないほどの木の壁に囲われた宿場町。門番に冒険者証を提示して通り抜けた。門番はバグ職で三文字なのに驚いていたが無視する。


「小さい村だな」


「こんなものでしょう? 寒村なら外壁の外に畑があって危ないですよ。ここは作りのいい方です」


 みんな、田舎出身のようで故郷と比べているようだ。そこそこの広さであるのに半分以上が畑になっている外壁の内側。寒村なら外壁の外らしいが、この壁ってどこまで信用できるの?


「モンスターは目視で人間を判断してると言われてます。なので見えなければ襲ってきませんよ」


「へー」


 街道に沿って宿場町は店を構えているため、建物の並びは長細い。家の裏手が畑って作りだ。とりあえず宿の確保、それから乗り合い馬車か? 馬車いるのか?


「歩くの疲れる?」


「むしろ、戦闘を、見られたくない」


「血抜きが特殊ですよね」


 乗り合い馬車は却下らしい。一度は乗ってみたいが、快適でもないのだろうな。馬車の乗り心地のイメージは悪い。朝はゆっくりと出て、今日のように狩りながら進むか。


「ここでいっかな?」


「空いてれば良いですね」


 一番大きな宿。下手な宿だとフィーリアが入れない。ゴリ押しで一緒に寝る。まあ、この手の宿は代表だけが身分を見せれば良いらしい。


「いらっしゃいませ」


「六人一泊。頼めるか?」


「あいにく、貴賓室しかあいておりません」


「なんぼだ?」


「えっ? 550ルークです」


「その部屋なら六人入るなら、一泊だ」


「少々手狭ですが、従者の控え室もありますので、何とか」


「はい、550ルーク」


「……承りました。身分を証明するものと……」


 宿ゲット。次は飯……の前にモンスター売却か。日が落ちるまで時間があるし、散策するか。



  ○  ○  ○



 冒険者ギルドの支所があった。管轄はファースト領っぽい。初めて褒賞金狙い以外で買い取り出すな。


「あいよ。ここに出せ」


 愛想の悪いおっさんが担当。奥さん達は調味料やらを抱えているので空きアイテムボックスは各三つ。持ってこれたのは15匹だけだ。血抜きはバッチリ。テーブルを汚さないぜ。


「状態が良いな。こんな丁寧な仕事するならここで売るのは勿体ないが、荷物になるだろうな。すまんが、ウルフに70ルーク、ボアに200ルークだ」


「それでいいぞ」


「ウルフが14、ボアが1、1180ルークだ。街なら1500ルークにはなっただろうよ。ほれ」


 宿賃にお釣りが出た。善き善き。


「飯だな」


 支所から出て、やっぱり腹が空いているのを自覚した。


「さっき、あそこ、いい匂いした」


「いや、あっちじゃねえか?」


「まあ、その二択ね。食堂も少ないもの」


 奥さん達が偵察した結果、男臭い方は却下で静かな方を選んだ。もう酒で出来上がった客があっちにはいたようで、静かな方しか選択肢になかった。注文は一人10ルークのお任せらしい。


「肉だな」


「上品に盛り付けている努力は見えますね」


「お野菜が少ないです」


 この小さな宿場町では肉の供給は過剰なのだろう。歩けばモンスター()が来る。卸す数が多いから安値で買い取り、旅人に消化させるんだろうな。


「薄味だな。ロザンナ」


「ハーブソルトが合いそうですね。どうぞ」


 みんなで分け合って好みで振りかける。


「ありがとう。そういえば、みんなは酒飲むのか? 遠慮してるなら無用だぞ。明日に響くほど飲まれると困るがな」


「おっ! っと言いたいけど、いい思いがねえよ」


「嗜む程度なら良いのですが、酔わせて乱暴されていたのでいい思いはないですね」


「あんなもの、不要」


 酒と言うより、エピソードが痛い。遠慮じゃなくて忌避していたのか。無理強いはしない。


「あと、この生活で酔うとご主人様が心配ですね」


「俺が?」


「日々の営みはご主人様の限界を配慮してますよ。たかが外れたら……」


「おおう。明日動けないのは俺か」


 出立前でも配慮されていたか。あれでか? 最後の一滴まで搾られたが、その先があるのか?


「私達を、なめないで♪」


「限界は越えるためにあるんだぜ!」


「飲むのは王都で落ち着いたらにしようか。いい酒だと酔いも悪酔いじゃないと聞くしな。楽しむ酒を振る舞いたいね」


 こっちの世界じゃ娯楽が少ない。女性陣はファッションという娯楽が出来たが、娯楽も一つじゃ足りんだろう。薬師男衆も考えないとな。気持ちよく働いて欲しい。


「私、飲んだことないです! 楽しみです!」


「俺もないぞ。本当に酒って旨いのか?」


「酔い方を覚えれば楽しいものですよ。王都への楽しみが増えましたね」


 王都なら初心者に優しいお酒もあるだろう。なんたってこの国の首都だ。物が集まるはずだよな。楽しい旅行にしたいものだ。


 宿に戻れば部屋に案内された。今までで一番広くて品のある部屋だろうか。キングサイズのベッドが二つ。あと小部屋の従者用が二つ。護衛用かな? どうも貴族や豪商が使うっぽいな。


「「「うふふ♡」」」


 用意されたお湯で身を清める……清めてもらうが、手つきが怪しい。とっても丹念に拭かれる箇所がある。


 あ、あー! 酔ってなくても天国行きやー!



  ○  ○  ○



 次の日の道中も平穏だった。いや、ウルフが襲ってくるが、控えめなのは商団が先を進んで的になってるから。警戒は程ほどに、雑談が猥談だが楽しく進む。特に変化もなく次の宿場町へと到着。


 特に特色のない宿場町で農村だ。宿場町は富裕層用の一室は持っているらしく、高値だが一泊する。まあ、いっぱい汚すけどな。最近は遠慮がなくなっていい傾向なのだが、それが夜の営みだけ突出する。完敗やでー。


 朝夕がボリュームのある肉料理だ。昼を抜いてもそこまで苦痛ではない。苦痛なのは朝の気怠さの方が強い。


「宿の人に聞いたら、次の街は少し大きいそうですよ」


 どこかの街道との交流点であり、初級だがダンジョンも一つあるそうだ。どうも文化的にダンジョンを囲ってレベリングする歴史があり、ダンジョンは街の中にあることが多いそうだ。


「次はファースト領を越えるので税がかかりそうですね」


 小さな領らしいが、王都も近く、そこそこ賑わっているそうだ。どこか物足りないので過剰には発展していないらしい。


 まあ、今日行くから楽しみにしよう。

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