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寝るのも早ければ起きるのも早い。今日は寝坊していない。体が怠いけど。最後の一滴まで搾られたからだ。お姉さん達もパねえよ。
さて、やることやるか。
先ずはお風呂。戦闘メイドが居るから沸かしてくれた。ありがとう。
次に食事。用意されてた。ありがとう。
そして、相談。
「休養後には一層で無理なく狩りをしてお待ちしております」
あれれ? おかしい。説明不要で理解された。ロザンナかな? 根回しありがとう。でも、休みが無いのは不味いし、ここらでシフト制にしようと思う。
「三つのパーティが組めるよね。その一つはお休みを取ってくれ。でないと俺が帰って来るまで休まないだろ? 一日おきに「強癒」に転職して交代で休みだ。休みも仕事だからね。あと、食費の負担が大きかったでしょ。早いけど給与払っとくね」
「「「はい?」」」
「薬師男衆の食費。結構負担したでしょ。ロザンナに預けたお金は必要物品に消えただろうし、補填だよ」
文句言わさず配ってく。困惑しているが、受け取ってくれたので良いだろう。ロザンナ達にも配ったよ。フィーリアには申し訳ないが、欲しいものは買ってやろう。
「「「ありがとうございます!」」」
これでオッケーかな。
○ ○ ○
「なんじゃ? どっか行くんか?」
「ちょっと王都に」
「まあ、気を付けろよ」
往復で14日。余裕をもって30日分の宿賃を払っておく。お金があるときに払っとかないとね。
「気前がいいの。死なん限りは待っといてやるからの」
ありがたい。
○ ○ ○
「「「お気をつけてっす!」」」
こっちも説明不要だった。なので遅れたが給与を払う。あとシフト制も。毎日転職して「強癒」の時は休み。これで三勤一休になる。
「「「大丈夫っす!」」」
「いや、休めよ。帰って来て病気だったら解雇な」
「「「ま、守るっす!」」」
脅しにはなったが、勘弁してくれ。体が資本だ。
○ ○ ○
「大丈夫ですよ。あの方達が無理されないのは理解してますので」
ギルド支部で一応報告。ついでに一層は駆逐したとも。
「助かります。まあ、暇ですけどね」
ここにはホントに冒険者が来ないな。頑張れ。
○ ○ ○
「これが紹介状ね。オークションの段取りをつけてくれるわ」
おう。ありがたい。ゴブリンフルアーマーの六色セットだ。巷じゃ高いらしいから、得意な人に扱ってもらわないと損しそう。
「伝書鳩で荒くは伝えてあるから大丈夫よ」
「それは、ありがたい。さて、行くよ」
「お土産は指輪をお願いするわ。薬指が寂しいの」
「痛っ! 無理言わないで。あいつらをよろしく」
「ええ、あっちはビジネスで付き合うわ」
このお姉さん、どこまで本気なんだ?
○ ○ ○
駆け足気味に用事を済ませた。たぶん抜けはない。ロザンナ達は手分けして旅支度してくれたが、特に用意するものって昼食の支度くらいの安全道中らしい。それでも盗賊の危険はあるらしいけどな。
なので、フライパン鈍器……鈍器を主張しないと忘れそう……を一つ借りて、ストック武器は戦闘メイドと薬師男衆とで共有してもらう。ついでの調整でフィーリアとロザンナにマジックスタッフ(魔法威力増加・範囲増加)を新調。範囲が欲しいからな。
この辺はロザンナ達が配分してくれたので良いだろう。こう考えてみると、自分の旅支度と言うよりお留守番への準備要素が強いな。
「初のフィールドだな」
「気分は観光旅行ですけどね♪」
ごもっとも。全く警戒していないし、宿場町が近距離であるため馬車も徒歩も速度違えど泊まる場所は一緒になる。早馬でないと一足飛びは無理だろうけど、野宿とか大変そうだよ。
「さて、王都行くか」
「「「はい♪」」」
徒歩の旅。誰も馬車使えないしね。今日は歩くが、明日から乗り合い馬車があれば利用する。準備で時間食って、今日の便はもう出立してるらしいからな。宿場町で追い付く予定。
さあ、行きますか。
○ ○ ○
「ご主人様、暇ですね」
「歩くだけだしな」
「しっかし、モンスターがあんなに大損とはなー」
「私達のスキルが全滅ですね」
宿場町が近い理由、まっすぐ歩けない。
フィールドは獣タイプのモンスターが主流だが、これが潰えた試しがないそうだ。モンスターとは何故か人間には襲ってくる。まあ、これで野生の獣との区別は付けているのだが、無駄に襲ってくる。この辺はゲームのご都合仕様っぽい感じがするな。
道中は常に護衛が必須。野宿も戦闘を生業にしてないと危険な行為。真夜中でも平気で襲ってくるらしい。安全に寝るには囲われた街や村が必須であり、結果的に往来の多い街道は宿場町が存在する。基本は農村を兼ねる。
で、獣タイプのモンスターに生産系スキルが全て不発。ゲームとの仕様の差をここでも感じることとなった。得られるのは肉なんだが、解体の技術があるわけでもないのでどこかに持ち込むしかない。
結果、吸血だけはできたので、血抜きしたモンスターをアイテムボックスの空きに埋めるだけだ。アイテムボックス一つに一匹。直ぐに許容量を越えそうだよ。
「狼タイプが多いよな。食えるの?」
「一般家庭の主食ですよ。ウルフは潰えませんからね」
安い肉はウルフだと思えば間違いはないらしい。今まで食ってた肉は大概ウルフ肉らしいな。
この街道は馬車がゆったりすれ違える幅がある。真ん中を歩けば襲われる前には気付ける。そして吸血投剣の餌食だ。初撃はフィーリアが練習に投げているがよく外す。ゴブリンソードって投げ難いかな?
「難しい!」
「慣れだよ、慣れ」
「おっし! 当たった!」
「距離があると狙うのが大変ですね」
ロザンナとエフェロナは、命中率が半々ってとこだ。明後日の方向に投げられると探せないので、襲われる度にゴブリンソードが減っていく。90本あるけど、王都まで持つかな?
当たりは猪タイプのモンスターだが、まだ一匹。巨体なのにアイテムボックス一つに収まる不思議仕様。俺のアイテムボックスに空きがないので、みんなの空きが埋まったら、捨てるしかない。ゴブリンフルアーマーが枠を取りすぎ。
暇なのだが油断できない旅。こっちの世界じゃ気ままに外を歩けないようだ。ウルフが溢れてる。生態系がどうなってるのか不思議で仕方がない。まあ、ダンジョンにモンスターの時点で元の常識より、ゲームご都合の方が常識っぽいよな。
そんなこんなのぬるぬる道中。空きアイテムボックスはいっぱいだ。徒歩の半日ちょいで宿場町が見えた。昼食は無し。落ち着いて料理なんて出来なかったよ。調味料が無駄になりそうだ。
初めての別の集落。何かあるかな?