075
「なあ、時間が出来たし、金も出来た。欲しいものある?」
「旅支度ですかね?」
あら? 相談前から確定?
「盗賊って言ってもよ、四文字が精々らしいぜ」
「私達もだと危ないですね。どうでしょう?」
連れてって。エフェロナはそう訴えてるよね? みんなも同じ目してる。んー、索敵に難があるんだよな。大体が普通職にその手のスキルがある。だからバグ職には変則的なものしかないし、四文字職からだったかな。
「ご主人様? 奴隷は不要ですか?」
「それは、卑屈。むしろ、奥さん置いてくな、でしょ」
うぐっ。確か、俺のゲームの記憶でも王都は繁盛している。この微妙に田舎なファーストの街よりは刺激的だろう。これは、「新婚旅行よね?」と言われているのだろうか?
「ご主人様。欲しいものはありますよ」
「何?」
ロザンナからの会話の軌道修正、ありがた「この指輪です♪」……おう。これで万が一を防げと。物理には一応固いんだよね。ランジェリーが物理防御のみだからね。魔法もまあ、グリーブとガントレットでそこそこ。危険なのは状態異常か。だが。
「コボルトの片手杖が足りんよ。あと300弱はいる」
「それなら、売ってる。捨て値」
「マジで!? あ、いや、300も買うと怪しまれるぞ」
「聞いたことあるわ。コボルトの片手杖は媒体として魔法を少しだけ強くしてくれるけど、すぐ壊れるから量を買うって」
何そのご都合。
「おっし。行こうぜー!」
○ ○ ○
「マジだ。ゴブリンソードより安い。ワゴンセールになってる」
コボルトの片手杖は小さいんだよね。元々コボルトが小さいのにワンドなんだよ。鉛筆くらいなのだが、束にして売ってあった。消耗品扱いか。前は気付かなかったよ。
「全部買おうぜ! 私も両手に欲しいぞ!」
ちゃんと要点は濁しているので、人に聞かれても意味不明だ。
えっと、20本で150ルークか。安いな。他もあれば欲しいが……無いな。何故にゴブリンソードとコボルト片手杖だけなんだ?
「脆い。装備として、信用がない。これは、使い捨てるもの」
ゴブリンソードって投剣に丁度いいのにな。あー、コボルト片手剣って刃が潰れてるな。コボルト片手斧もか。切れないや。コボルト丸盾は論外だな。でも何で中級ダンジョン産はないのか?
「この街はコボルトで卒業ですよ?」
「何で?」
「この街は、新人多いし弱いもんな。熟練でも嫌なモンスター溜まりには行かねえよ」
何と!? ここの中級ダンジョンは奥が放置かよ! 勿体無い。記憶が確かなら経験値が7以上あるから6人パーティでも繰り上げで2になるから繁盛していると思ったのにな。
「買い占めましょう♪」
「お、おう」
酒樽に大量の鉛筆サイズの片手杖。どんだけの値段になるだろうか?
○ ○ ○
流石に買い占めは止めた。必要量のアミュレット8個分。1600本で12000ルーク。店員に「こいつバカか?」と思われたが、気にしない。消耗品なので勘違いはしてくれている様子。
「早速だぜ!」
宿に戻って早々、待ちきれない奥さん達。護身用なのに目が新たなファッションアイテムを求めている。んー、両手に指輪ってのはセンス無いな。っと、その前に。
「なあ、盗賊ってどんな奇襲すると思う?」
「男は即座に殺して、女は遊んでから殺しますね」
おぅ。
「魔法は使うようですね。消耗品の調達が怪しいので弓矢は好まないようです」
「遠距離は魔法だけ? 毒矢とか使わないの?」
「盗賊なんて崩れだぞ。あるもの使うしかねえよ。二文字職が犯罪の職に強制転職してるから、街には入れねえよ」
そういえばそうだった。自首して捕まるか、犯罪を暴いて捕まえるか。そうすれば奴隷に転職だったか。盗賊なら殺人が多いだろうけど、悠長に捕まえるなんて無理だよな。殺しに来てるし。
脱線。
「なら消耗の少ない攻撃が多いと。もしくは消耗しても回復できる攻撃手段か。毒の心配は少ないかな?」
「私達は女が多いですよ。狙われてもご主人様だけじゃないですか? あと、即死するような毒って少ないのでポーションでいけますよ!」
そうだな。フィーリアの言うとおり、ポーションを多めに用意しよう。
「いやな、オプションなんだが、二つなんだよ。一日一回までなんだけど、選択肢が、魔法ダメージ完全反射、状態異常攻撃完全反射、物理ダメージ完全反射。悩んでるのはこれなんだ。不意打ち対策」
色々と想定を考えたが、万能投擲ポーションを皆が持つことでダメージ反射に片寄ることにした。
予想できる状態異常が物理攻撃に塗布しての毒攻撃だからだ。状態異常のみを与えるとしても魔法であるため、反射するか範囲指定であれば離脱する方向でいいのではとなった。
「「黒術師」って厄介ですか?」
「「黒術師」より「黒魔術師」が怖いが、全てのスキル魔法はダメージも一緒に与えてくるな。魔法ダメージ完全反射で対応可能だろう」
まあ、隠密系統のスキルが無いなら気配くらいしそうだよな。隠密スキルでも注意すれば居るのは分かる。何処に居るかは分からないけどな。この辺は妙にゲームで鍛えたプレイヤースキルが活きる。
「なあ、デリカシーないけど聞くぞ。フィーリアとロザンナは正妻だ。ミーディイとサロワナとエフェロナは妾と言った。正直、差が分からん。どうしたらいい?」
「ご主人様の思うままで良いのでは?」
「そうそう。特に不満ねえよ」
「ご主人様は、デザインで、差別をする気。いいよ」
「大丈夫ですよ。変な事をするのでは無いのでしょう」
ふむ。一応の分別だ。先にフィーリアとロザンナの指輪をオプションだけ変更。物理ダメージ完全反射と魔法ダメージ完全反射だ。
続いて作成。ミーディイには緑の石、サロワナには赤い石、エフェロナには青い石の石一つなシルバーリング。オプションは一緒。
それぞれに俺から左手の薬指に付ける。
「おぉ、いいなー」
「綺麗」
「うふふ。落ち着いた色ね♪」
次はリングじゃ面白くない。ってことでシルバーネックレス。石はみんなに合わせた石で、フィーリアとロザンナは三連、ミーディイとサロワナとエフェロナは一連でこれもオプション一緒。シンプルだけど良いかも。気に入るかは相手次第だがな。
「どうやって付けるの?」
ん? あら、継ぎ目のフックがない。ってことは伸びるのか? うん、伸びた。金属なのにゴムみたいに伸びる。装着状態になればちゃんと金属である。この真の装備、本人が拒絶すると外せないんだよね。不思議。
差をつけたが、数が多ければ良いと言うわけでも無さそうだ。それでも豪華さは石が三つの方が良いので、オッケーらしい。派手なデザインを選んでないしね。
「なら、お返しといきましょうね♡」
「「「うふふ♡」」」
ハーレムの醍醐味を味わったが、全て受け身。もう、お姉さんの妙技が炸裂して天国から帰ってこれなかった。フィーリアへの情操教育がパない。
あー、夕飯、逃した。zzz。