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「アリエッタさん居ますか?」


 昼過ぎでもあり比較的閑散としている。職員はササッと奥へと向かったがアリエッタさんって受付じゃないの? しかしここは冒険者が居ないことが無いよな。儲かってるやつは違うよな。


「ご主人様ほど余力を残して戦ってないだけじゃないですか? あと、フィールドでの狩りは報酬に変動がありますからね。下見はしといて損はないですよ」


 そういえば、俺って街から出てないな。肉を自給できたら食費も浮くだろうか? フィールドって狩り場までが遠いからな。泊まりとかありそう。うーむ。経験値も美味しいだろうから悩むが、養殖育成が終わるまでは無理だな。


「お待たせしました。奥へどうぞ」


「奥?」


「はい。ギルドマスター室です」


 見事な出世。ギルドマスターって脳筋がするんじゃないんだ。


「アリエッタさん……新ギルドマスターは五文字職です。ある程度の実力がなければ氾濫の恐れのある支部へは就けませんよ」


 アリエッタさんって強かったのね。あの人なら苦戦するかも。脳筋とは違ってちゃんとこっちの手札を探ってきそうだからね。それとダンジョン横の支部は氾濫に備えて置いてあるのか。納得。色街の支部って無駄だもんな。


 案内されて入った部屋は結構な広さだ。なのに書類以外の飾りっ気が全くない。仕事するだけの場所に見える。


「ドライさん、いらっしゃい。ドライさんのせいでギルドマスターですよ。受付じゃないと物色できないのにね。責任取ってください」


「痛っ! フィーリアさん。アリエッタさんも冗談言うんだから、真に受けて蹴らないで。アリエッタさんもいい出会いがありますよ。職権濫用で囲えばいいんですよ」


「成る程。ドライさんに命じます。私を一生護衛して下さい」


「いったー! すね!? そこは不味い! 本気で痛い! アリエッタさん、その依頼は丁重にお断りします。なんならゴブリンフルアーマーあげるから嘘って言って」


「あら、それは美味しい提案ですが、チャンスは残すのでお断りします。依頼は継続的に発注しますね。特にベッドでの護衛は大歓迎です。ああ、依頼料は私の大切な処女でお支払ですよ」


「ん゛ー!? ぷはっ! 人前でディープに口を塞がない! あと、威嚇するならアリエッタさんにしてくれ。あの人、既婚者狙ってるんだから、このアピールは無意味だって。「次は私よね?」みたいな顔してんじゃん」


 何故かフィーリア以外の奥さん達がアリエッタさんに吹き込んでる。何を? アリエッタさんから余裕が消えてみるみる顔が赤くなる。


「拗らせた処女は(うぶ)よね。ご主人様の夜の護衛はスゴいって教えてあげたわ」


「若いから、荒々しい。もう、お猿」


「し、仕事の話をしましょう! そう! 仕事です!」


 攻めには強く、受けにはめっぽう弱い。フィーリアみたいだ。最近は攻めに技術が乗って反撃の隙を与えてくれないんだよね。アリエッタさんなら、痛っ! フィーリアー。


「ご主人様? 順番だとアリエッタさんは18番目の予約ですよ。全部、責任を取るんですか?」


 涙目で言うなよ。フィーリアが一番だよ。おでこに詫びのキス。


「うー。誤魔化されました。でも許します。夜にお説教です」


 許してないじゃん!



  ○  ○  ○



「「はぁ~」」


 結局ぶり返したフィーリアに愛を囁き続けた俺。アリエッタさんは元夜の蝶の経験談を囲われて聞かされ続けた。生々しい表現多数あり。処女の夢を粉砕レベルで粉々にした。


 もう収拾がつかないので、強権で奥さん達は退出させた。フィーリア以外。引き剥がせなかった。腕にへばりついている。


「なんの話でしたっけ?」


「あー、はい。これをどうぞ」


 袋が三つ。音からして硬貨、お金か。何故に三つ?


「こっちは元ギルドマスターの借金ですね。32万ルークです。それでも足りないのですが、ドライさん、あれを奴隷にするの拒みましたか?」


「フィーリア以外の奴隷は要らないよ。いや、フィーリアの奴隷解放も望んでいるから、奴隷は元々望んでいないな」


「奴隷とは所有者が居ます。本来ならその所有者が取得するのですが、所有権を放棄すると一定期間が経つと所有者不在の奴隷になります。財産のみが所有者に流れ、奴隷は自由売買可能となります。ここまでは良いですか?」


「要は俺が奴隷要らないって思ってたから、所有権を放棄したってこと?」


「そうですね。で、元ギルドマスターは2万ルークで売れました。なので32万ルークです」


 やっす! 六文字職が2万ルークとかやっす! あー、四肢が回復しなかったのかな? それなら戦力にならない肉人形か。となると高い方なのかな?


「あれの使い道は知りませんが、もう過去の話なのでいいです。この真ん中の袋はゴブリンフルアーマーの一時金の一部です。流石に予想額を全て負担するのは無理なので18万ルークです」


 ゴブリンフルアーマーの予想額の内訳は、白属性の方が100万ルーク、黒属性の方が80万ルークらしい。一割を負担してくれたらしい。


「明日にも王都に向けて運びたいのですが、問題が一つあります」


「問題ですか?」


「運搬を任せられる護衛がいません。物が高額です。盗賊も強いですから安心して任せられる冒険者はいないのです」


 初心者の街ファーストの欠点。上を目指すならこの街から去る。常に中堅手前までしか冒険者が所属してないようだ。元ギルドマスターはその点では使えたらしい。使いっ走りかよ。


「王都までどのくらい?」


「徒歩でも馬車でも七日程度ですね。村があるので野宿は不要ですが、冒険者崩れの野盗はどこでも湧きます」


「ご主人様?」


 長いな。自分で運搬すればいいかと思っていたが、往復で14日、王都滞在期間も入れるともっとだろう。悩ましい。


「明日、また相談に来るので一時金はその時に」


「やっぱり……はい、フィーリアちゃん。今日はもう言わないわ」


「うー! 盗賊より厄介です!」


 あえて突っ込まない。


「では、こちらは返しましょう。オークションの手配は私達冒険者ギルドにお任せください」


「助かる」


 ゴブリンフルアーマーが戻ってきた。素材に分解したい。マジックスタッフとかの方が俺には有意義だ。


「最後のお金はポーション代金です。予定通りの売値の三割、約2万ルークです」


「えー? そんなに?」


「調味料も人気で直ぐに売り切れました。自炊する冒険者も多いのでポーション効果の期待ができる調味料は高くても売れますよ」


「はい? 調味料で回復するの?」


「知らなかったのですか?」


 どうも擦り傷程度なら即座に、魔力も回復して、持病も快調に。各種ポーションを混ぜ合わせて薄めたような効果が期待できるそうだ。人気はハーブソルト。手軽で良いらしい。


 流石に直ぐには売り出さず、ギルドの酒場で提供したらしい。なら、食った奴等が見事にポヤッて光って微量に回復。購入希望殺到。即座に販売開始。で、完売。その結果、濃縮ポーションも期待ができると、保険に買う者が続出。で、完売。


「まだ、少量しか出荷してませんよね?」


「確かに少ないですが、想定の最高価格で売れるので儲けは十分です。インチキなポーションより、高価な聖水より、とっても信頼できますね。実際に体感してますから。百聞より一見ですよ」


 思った以上に優秀だった。今は少量なのに冒険者だけで完売。と言うことは評判が伝われば注文殺到か。価格設定は冒険者ギルドに投げる。その代わり品質管理は徹底させよう。悪どい商売で儲ける気はない。


「そうだ。うちの薬師男衆は研究熱心で色々と実験しています。まあ、現状はその副産物で信頼できるものを卸しているのですが、素材の幅を広げてくれませんか? 要は食べ物ならオッケーです。あ、あと猪の足の骨」


「先が明るいので出来うる食材は用意しましょう。差し入れのつもりでしたがポーション作成の副産物になるとは思いませんでしたね。えっと、骨が意味不明です」


「出汁ってわかります?」


「まあ、料理は不得手ですが、何となくは」


「時間を掛ければ出汁がとれないかなって。魚は難しいですよね」


「内陸なので川魚も怪しいですね。美味しくないですし」


 俺も詳しくはないが、泥臭いのかな? 清流があるなら井戸なんて不要だろうからそうだろう。飲み水は魔法らしいし、期待できないか。純正の豆腐の味噌汁は遠そうだ。


「何か面白いものはお願いします」


「分かりました」


 ちょいちょい話題話をこの後にしたが、フィーリアとアリエッタさんが火花を散らすだけだった。言わないとか言いながら二人で食事とかあからさまだ。フィーリアー、腕の感覚が麻痺ってるよー。


「最後に忠告を。冤罪でも奴隷ですから、その態度は人を選んでね」


「うー、分かりました」


 お財布が約34万ルーク足されてホクホクだ。女性関係は置いておいていい話ができたと思う。


 さて、薬師男衆への給与と、王都行きの相談だな。

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