073
やっぱり帰る前に転職神殿へ向かわせる。
戦闘メイドには、前衛組は「杖術」、中衛組は「剤治」、後衛組は「術射」。これをレベル上限で五つ目だ。前衛は計算ミス。メイン武器はマジックスタッフの警棒なので意味はあるが、一日ロスしてしまった。
薬師男衆には、「剤治」→「乱剤」→「村正」→「強癒」→「剤治」の流れで網羅してもらう。これで誰かが「剤治」と「乱剤」を所有することになる。四肢が不自由な者が「強癒」でどこまで回復するか不安であるので戦闘からは除外。
転職をさせている間にギルドへ報告。
「はぁ。未開封の宝部屋が七つですか。もう、悪魔の囁きですね。道中の安全は確保されているのに、開けたらゴブリンが想定で200。明日にでも処分をお願いします」
「独占していいの?」
「もう、しちゃってください。そうすれば一層は誰でも呼べますから」
「呼んで来るの?」
「……暇でしょうね。ここは色街。ダンジョンの宝部屋より優しくて怖い誘惑しかありませんよ」
欲って怖いよね。宝部屋がゴロゴロある色街ダンジョン。他のダンジョンってどうなってるんだろう? コボルト素材が不要になったら中級ダンジョンに言ってみようかな。
「そうです。明日には暫定で鎧の一時金を用意します。一緒に元ギルドマスターから徴収した30万ルークも用意できるそうです。明日の夕方にでも本部にお願いします」
「分かったよ。金欠だから助かる」
○ ○ ○
薬師男衆の指導はすんなり終わり、宿でみんなは落ち着いていた。今日は朝から夕まで頑張ってくれたし、ご褒美が必要だよね。食堂にて。
「みんなお疲れさま。今日の最後の労働を頼みたい。薬師男衆にボクサーパンツを二枚ずつ配布したいから、その作成を頼む」
「「「はい」」」
「その労いに一人につきランジェリーセットを一つのデザイン変更を許可する。ケチ臭くて済まんがご褒美になるかな?」
「「「なりまーす♪」」」
「頼むよ」
「「「はーい♪」」」
ふむ。二階はバーゲンセールになるな。どうも研究に余念がない。汚れはきれいに落ちるし、サイズは装着者に合わせてジャストフィット。盛んに交換されている様子。
やはり不人気のデザインも存在するし、ちょっとの差で不満がある、らしい。定期的にデザインも変更しないと飽きもくる。奥さん達も混ざっているようなので交換は混沌としている。奥さん達に一日の長があるのでデザインも洗練されているのだ。
「退散」
おっさんには注意しない。ラッキースケベを楽しめ。食堂でもう始まっているからチャンスだぞ。
遠くで野太い幸せな叫びが聞こえたが、気にせず整理。と、言ってもゴブリンこん棒はマジックスタッフへ。ゴブリンソードはロングソードへ。
ストックがマジックスタッフが17本か。薬師男衆の武器が全然足らないな。ロングソードもストックは19本か。統一させたいが、木製の警棒は目立たなくていいんだよね。
全員に持たせるにはゴブリンこん棒7100か。遠すぎる。買い取ると不審だしなぁ。悩む。何せ、刻一刻と変化するし、先に戦闘メイドだな。フライパンのせいでハルバードが遠い。悩ましい!
「ごっしゅじんさま~♪」
「ヤりに来たぜ!」
何と!? 口と服装が合っていない! 何故、メイドに?
「ご主人様。私はご主人様の資産を勝手に使った悪いメイドです。どうかお仕置きしてください」
「いやー、ちーとばっかし羨ましくてな。着服した」
くっ。正直、似合ってる。フィーリアは幼くも頑張ってるメイドさん。対してサロワナはサボり常習犯っぽい雰囲気でお仕置きしたい。
「……人が素材計算で苦労してるのにな。お仕置きじゃー!」
「「きゃー♪」」
純白のランジェリーをめっさ汚した。
○ ○ ○
また寝坊した。どうも俺は気を使われているようだ。夜のお誘いも熟睡させるためだろう。
「まだ駄目ですよ。ご主人様の負担が大きいです」
「そうか。無理言ってるのは分かるんじゃが、どうもな」
おっさんとロザンナか。何話してるんだろ?
「おはよう。どうした?」
「………………んむ。確かに、ちと早いな。いや、余裕ができたら話そう。聞いてから断ってもいいぞ」
「話が見えんが、余裕はないぞ。金もない」
「がっはっは。大金払った後に金が溢れとったら引っ越せ。邸宅の方がメイドは似合うぞ」
ふむ。金銭的な話じゃないのか。断ってもいい話なら急いでないのかな? やること多いから許容量オーバーしてますからね。これ以上は落ち着いてからにしてほしい。
「ご主人様。朝食を用意しますので、汗を流してきてください」
「ありがとう。フィーリア」
「はい♪」
お風呂から朝食へと流れて、ダンジョンへ。
○ ○ ○
「ゴブリンは湧いてはいましたが、優しいものでしたよ」
奥さん達は宝部屋への進路を確保してくれたようだ。ちゃんと七つの宝部屋の無事も確認してくれてた。
「行ってくる」
「「「はい」」」
「「「うっす!」」」
薬師男衆も作る者は変わったが、相談し合って流れるように作ってくれている。フライパンの数に限度があるので量はお察しだが、それでも絶え間なく作り続けているのは過剰な人数のお陰だな。
宝部屋のゴブリンの数に変化はないが、俺の小太刀二刀流が猛威を振るう。一撃は無理だったが、ほぼ殲滅。初撃で数が激減しているので新規追加のストック武器に血を吸わせる余裕のある。
倒すより奥さん達の素材集めの方が大変そうだ。こん棒やソードは拾うのを手伝うが、処理はお任せ。薬師男衆へ貸与のボクサーパンツが次々染まっていく。まあ、全部染めるには数が足りんな。
「いやぁ、大量だったな!」
「着たいの?」
「もういいって!」
ゴブリンフルアーマー、計4つ。面白いので、火水風土と属性を揃えておいた。ネタ装備の重量増加があって笑ったよ。書き換えたけどな。
「時間に余裕があるな。三層行っとく?」
「はんたーい!」
「そうね。ご主人様はゆっくりするべきよ」
「ああ、夜に必死なのは気が急いてる証拠だよな」
「荒々しいご主人様も好きですが、夜限定でお願いしますね」
「今日、お金が入る。ゆっくりでいい」
何と!? 全員否決。下ネタがが入るのはどうかと思うが、自覚するほど焦ってるしな。経験値は十分ではある。戦闘メイドの二文字二重職に至ったし、薬師男衆は交代制で癒されてもらうか。
「なら、戻るか。鎧の追加もあるし、本部に行こう」
「「「はい♪」」」
みんなのところに戻って、様子を伺う。
「平和ですよ。私達で十分です」
「ポーションは親方に満足してもらえるよう精進するっす!」
戦闘メイドも薬師男衆も優しい。好意に甘えて、昼をみんなと一緒に済ませる。程好いところで切り上げて、戦闘メイドにも薬師男衆にも今日の転職は「強癒」で統一するように伝える。明日から休み。
「私達は大丈夫です」
「そうっす! ポーションを作るっすよ!」
「いや、済まないが医者にかかれる程の金がないんだ。これは俺の我が儘だからしっかりと休んでほしい。俺が焦っていたから、みんなにも無理させていた。先ずは体を癒すことが仕事だ」
大人数に「甘い」と言われたが、笑顔でもある。色は染まりきっていないが薬師男衆にはボクサーパンツを配る。今後は戦闘メイドにゆっくりと染めていってもらう予定だ。ゴブリンが減ったから無理はないだろう。
「「「ありがとうございまっす!」」」
「お、おう。じゃ、適当に切り上げてくれよ」
「「「はい」」」
「「「うっす!」」」
冒険者ギルド本部へ。