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 俺と奥さん達の朝食を終えた。聞けば、朝イチであっちに行って薬師男衆への調理指導を始めていたようだ。材料費はロザンナに預けたお金で。日が昇る前には順次露店は開くそうで買ってきたらしい。


「寝過ごした?」


「ご主人様ですから」


 主従の関係なのでこれが正しいらしい。薬師男衆は朝食後に湯で体を拭いて、昨日貸与したTシャツを着て、後は古着で、訓練所に向かったらしい。


「あ、ギャンブルのお金」


「他の訓練所で貰えますよ」


 うーん。早く給与支払いたい。自由度が断然違う筈だ。薬師男衆の午前の予定は埋まった。俺らは。


「戦闘メイドに服を与えよう。コボルト行くよ」


「「「はーい♪」」」


 引き伸ばしたからね。最初はワンピースとコートで。先は長いな。



  ○  ○  ○



 薬師男衆を放置しとくのも問題なので、コボルトは必要量の600ちょいで終えて一時帰宅、というか屋敷の三階。途中でギルドに寄って褒賞金をお願いしておく。数えるの時間かかるしね。


 骨布を奥さん達に預けていたし、優先順位を迷っていたので、コボルトの骨布のストックが大量にあった。更に追加で狩ったので、戦闘メイドにはワンピースとコートを配れた。遅くなってごめんよー。


「えっと、それでいいの?」


「「「はい♪」」」


 奥さん達は最近はデザイン変更の余裕はないが、普通に可愛くて高級感のあるファッション。だが、戦闘メイドの一張羅は。


「メイド服かー」


「ご主人様? 呆れてないですよね? 普通、企画統一されたようなメイド服を支給するのは貴族程度ですよ。それも接客に従事する可能性のある表を動くメイドだけです。こんな上質な作業着は無いですよ」


 確かにクラシックメイドなのに、フリルがふんだんでヒラヒラしてる。色を染めてないので真っ白だが、随所に色々とデザイン凝ってる。ベースはワンピースらしい。エプロンドレスがコートらしい。コートってエプロンになったんだ。スキルの柔軟性が怖い。


「あれ? 着替えるの?」


「ご主人様は午後からはゴブリンですよね。濃緑に染めた方が落ち着きが出ますので預かるのですよ」


 お披露目だけらしい。目の前で着替えるのは眼福ですが、フィーリアが蹴ってくるので止めて欲しかった。でも見る。うん。肌色が健康的になったかな。「強癒」は一日でも効果ありっと。


「ん? 食事の香り?」


「料理に関しては手際が良かったので、味付けの練習です。今朝の野菜で自分達のは作ってもらっていますよ」


 意外にハイスペックだな。今朝の指導でもう作れるのか。


「ご主人様にお出しできるとは思えませんね」


 頑張れ。



  ○  ○  ○



 昼食後、色街ダンジョン一層。全員参加。放置させてもやることが無いのと、ポーション作りは交代制になるので指導を一気にやる。


「あー、「乱剤」の『乱雑調剤』はポーションを作るスキルだ。しかし、俺の知識と薬効ポーションの作り方が少し違う。なので、材料を下拵えしてからスキルを使ってもらおうと思う」


 確か、『乱雑調剤』は素材を九割まで薬草を混在できるが、絶対に一割は別の何かを混ぜる必要がある。ゲームでは香草だ。ここでは何でも実験できるな。


「ここにフライパンは追加しても七つだ。順次交代でポーションを作ってほしい。基本的な流れは教えるが、このスキルは絶対に一部失敗する」


「「「えっ!?」」」


「戸惑うな! 失敗は折り込み済みだ。先ずは下拵えだったな。今回は薬草を半分、他の素材を半分だ。予想では2割しかポーションは出来ない」


「「「少ない!」」」


「いや、これでいい。失敗作にも意味はある。フライパン毎に担当を分ける。そっちの二つは香草を、そっちの三つは野菜の皮を、そっちの二つは豆を煮る」


「「「豆!?」」」


「あと、全てに塩を多めに入れろ」


「「「塩!?」」」


「薬師男衆の分担は、「剤治」と「村正」はフライパンに魔力を流して火の番だ。「乱剤」は適時『乱雑調剤』を材料にかけて頃合いを見極めろ。なお「強癒」は魔力枯渇であるから待機。しっかり学べ」


「「「うっす!」」」


 今日は戦闘メイドも薬師男衆も二文字職がレベル上限。急いで狩っても経験値が損する。なので宝部屋の散策で、明日に宝部屋を開ける予定だ。素材集めはその道中に出来るので動く意味はある。薬師男衆にボクサーパンツを与えたい。


 しばらくしたら色々な香りが立ち込めてきた。基本的には仄かに青臭い。どの鍋も薬草を煮ているからな。人も多く、野菜の皮も結構な量になった。今回はジャガイモやニンジン等の根野菜だ。果物も欲しいが高いそうだ。


「スキルに反応ありました!」


 薬師男衆の一人が叫ぶ。様子を見れば、薬草に香草だ。直ぐに煮解れるよな。葉っぱだし。


「許可する。俺はそのスキルを使ったことがない。スキルの要求に応えて実践しろ」


「はい!」


 その薬師男衆の声かけで他の者が動き、空の木製ポーション壺が床に並べられる。液体として出来るようだな。ちゃんとスキルのアシストで仕分けられるのか? この辺は未知の領域だな。ゲームだとポンッて出来る。


「『乱雑調剤』!」


 鍋からウニュウニュとポーション壺に小分けにされる。うん、便利。


「手の空いている「乱剤」は『乱視鑑定』で性能を確認せよ。なお、不発が多いと聞く。失敗しても気にするな」


「「「うっす!」」」


 できた数は24。ポーションあるかな? 成功率が低いので三個でも出来れば嬉しいかな。効果は妙に張り切ってる年上の方の薬師男衆の一人がまとめてくれている。


「結果を報告します。薬効治癒ポーション2、薬効魔力ポーション1、薬効万能ポーション2です」


「失敗も述べろ」


 俺はこっちを期待。


「はっ! ハーブソルト(低品質)9、廃液10です」


「上出来だ! そのフライパンを洗って貸せ」


 ささっと動いてくれる。俺の魔力操作は結構上手だぞ。無駄にフライパンの底だけ火を灯して演出までする。戦闘メイドに生肉を少量を小さなサイコロに切って貰ってから焼いて、ハーブソルトを少々まぶす。


「あ、低品質でも旨いや。みんな……は無理か。何人か食え」


 奥さん達、戦闘メイド、薬師男衆、と順番に小さな一口を食う。残念ながら薬師男衆全てには回らない。


「凄いわ。こんなに風味のいいハーブは初めてよ」


「「「これは美味しい」」」


「「「旨いっす!」」」


 評判は上々。「乱剤」スキルの『乱雑調剤』の失敗作は調味料と廃液。


 調味料が意外に飲食店で高値で売れる。ゲームの初心者にお勧めの金策であった。調味料と品質だけ表示されていたゲームとは違い、こっちでは商品名まで分かるんだな。


 廃液はアイテムとして存在しないがテキストには出ていた。舐めてみたら苦いだけの液体だった。分離されてるっぽいな。これは不要だろう。


「このように、ポーション以外の調味料も完成する! 薬師男衆に望むのは効率化と調味料の品質向上だ。旨いもん食いたいだろ?」


「「「おぉー!」」」


 野菜くずからはウスターソースが出来た。ジャンルも濃口と薄口、品質もあるようだ。濃口の中品質を野菜炒めに使ったら旨かった。


 時間がかかったのは豆。今思い出したが、水に浸けとくんだっけ? 出来上がったのは味噌と醤油、何故かお豆腐。うん、狙い通りだが、豆腐は調味料じゃ無いだろ! 醤油を垂らして食ったらこれも旨かった。なんか懐かしくて涙が出た。


「ご主人様!? どうされたのですか?」


「いや、故郷の味なんだ。郷愁にかられてな。ああ、旨い」


「「「………………」」」


 考えないようにしてたが、やっぱり恋しいらしい。ん? 妙な熱気を感じる? まあいい。しばし、豆腐を堪能した。


「ああ、済まない。ポーションの数も予想通りだな」


「報告を」


「頼む」


「ロザンナ様の指示の元、濃縮治癒ポーションを作り、『乱視鑑定』を実施しました。消費期限は最低30日です」


「それは嬉しいな」


 売れ残りが怖かったが、結構な期間持つのは正直に嬉しい。


「消費期限が過ぎると被膜が裂け液体になります。その液体は効果が半分になり消費期限7日で治癒の効果を失うと出ました」


「『乱視鑑定』すごいな。成功するとそこまで詳細に分かるのか」


「なお、薬効ポーションの状態ですと7日が消費期限です」


 そのまま、工夫して作ってくれと指示を出す。メモはとらせないのは証拠を残さないため。知的財産は結構な価値だ。漏洩は怖いよ。


 時間を食ったので、今日の狩りは中止。俺も……と言うかみんなが混ざって調味料研究が加速した。安定なのはハーブソルト。直ぐに結果が出る。一番苦戦しているのは味噌と醤油。豆をふやかしてないからな。


 研究者が出そうなのはウスターソース。どれもが風味が違う。完成品をブレンドして味の安定化も図っている。野菜の皮じゃ足りなくて、本体も入れたら中品質が増えた。


 作るのいいけど、夕食が不要なほど料理もしたね。あと、使いきれないね。アイテムボックスサイズの壺を用意しよう。ブレンドが良さげ。明らかに品質で味の細やかさが違う。


 うん。売れそう。ってことで。


「撤収! てっしゅーう! 日が暮れるぞ!」


「「「あっ!」」」


 食は心を豊かにするのは分かった。みんなが夢中だったよ。明日にでも試作を持っていくかな。

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