067
「「「行きます!」」」
魔力枯渇で辛いだろうに、元娼婦ギルドへ行く許可が降りた。奥さん達も良いようだ。いい思い出のない建物だろうが、使えるものは使わないとな。
今日は外食ってことにしてみんなで移動。
やって来ました、元娼婦ギルド屋敷。ギルド崩壊で色街の結束力は弱まったかと思えば、抑圧され続けていたので改善に向けて結束は強まった様子。このギルドは今や不要である。
「個室多いな」
広い玄関の奥は厨房や小さな食堂、それ以外が全て個室。そこまで広くはない。これが一階。
二階はベッドが大きいが小さな個室ばかり。物置もあるが、アパートみたいだ。
三階はうって変わって広い部屋が多い。会議室っぽいのや書斎や無駄に広い寝室。幹部用なのか広めの個室もいくつかある。
「ここは新人教育の場よ。若いほど好まれるから特別な客に初物を宛がわしたりしていたの。誰もが通る場所よ」
「ん? なら、被害者も巻き込んだのか」
「いえ、さっき言った通りに初物だけを使うのよ。全て確認したわ。タイミングが良かったのか幹部は揃っていたけど、女は全く居なかったわね。厨房にいた娘は逃がしたわよ。その程度だったわ」
推測として、真っ黒雇用の暴露、その対策会議中だったのかな。それで過剰な人数のチンピラが守っていた。多分、筋は通る。
「二階と同じのがもう一階あると男女で別れて個室対応できたかもな」
「男女が同じ階でもいいのでは?」
「その辺は人数次第か。数十とか言ってたしな」
「入りきりますか?」
「ベッドも広い部屋が40も二階がある。二人で寝て、最大80まで対応可能だろう。男同士で寝るのは俺は勘弁だがな」
「ご主人様の隣は私ですよね♪」
笑顔で軽く病んでる娘がいる。無言で答えたら蹴られた。まあ痛くないけどね。
「思ったよりも綺麗だな」
「書類や小物は押収されているけど、生活は直ぐに出来るわね。掃除よりも不足物品が何かを重点的に調べないといけないわ。私物は少ないのでしょう?」
「奴隷当然らしい生活だったようだ。んー、明日では足りないか?」
「その辺は私達を使って。魔力枯渇も「強癒」は動けないほど減らないわ。先ずは食事を与えたらいいと思うわよ」
やることが多すぎる。そして情報が少な過ぎる。もういっそ、数日かけるか。あー、悩ましいが。
「撤収! みんな呼んでー。飯食って寝るよー」
遠くから「はーい」とこだまのように響いてくる。うん、この屋敷、広すぎる。
飯食って寝る。骨布での作成を期待していたようだが、せめて下着は用意してあげたい。状況が分かるまで保留。勘弁な。
ちなみに戦果。
ゴブリン、こん棒152、ソード109、骨布783。
コボルト、丸盾921、片手斧350、片手剣341、片手杖230、骨布4605。
狩ったねぇ。戦闘メイドの三文字職がレベル1からレベル11とか狩り過ぎたかな。
○ ○ ○
翌朝、フィーリアに昨晩はねだられたので朝風呂。アピールのためと言いつつロザンナを呼んだが見事に遊んで遊ばれた。三人で朝風呂。
お風呂の道中に食事の支度をしている戦闘メイドを見て、慌ててフライパンを二個追加しといた。これで様子見てほしい。
お風呂上がりにそのまま食事。早朝から手分けして食堂も綺麗にしたそうだ。16人収容な食堂なので二班に分けて朝食。うん。美味しい。二班の食事を終えるのを待ち、今日の流れを考える。
「俺は支所で金貰ってから直ぐに本部に行く。状況次第だが現状を直ぐに伝えたいと思う。離れられない事を考えて連絡要員に二名連れていくって感じかな」
「私達は残りましょう。連絡だけなら、んー、フェロナとノーメラ、お願いね」
「「はい!」」
ロザンナの采配で後衛の二人が抜擢される。ロザンナがそのまま続く。
「フェロナ、人数確定したら連絡に来て。その時にどの程度の時間がかかるかも分かるといいわ。ノーメラはその予定時間が過ぎそうなら教えて
「「はい!」」
「フィーリアちゃんはずっと一緒?」
「必要なら動きます!」
「いえ、ちゃんと話を把握しておいて。ご主人様の代わりに私達に教えてほしいの。今日はご主人様の秘書をしてね」
「はい!」
「そっちはどう動くの?」
「先ずは食事と寝所の支度ね。情報から必要に応じて物品補充。私達のも足してもいいかしら? 買い物はまとめた方がお得なの」
「ん。ロザンナに1万ルーク預けよう」
「多いわよ」
「ケチらずに商人も使え。できる限り迅速に環境を整える。遅れれば遅れるほど逆に浪費するからな」
「分かったわ」
「行動開始!」
「「「はい!」」」
○ ○ ○
コボルト921匹分の褒賞金、13815ルークゲット。その足で本部へ。行ったはいいが、なにこれ?
「多いですね」
「早速、連絡の必要がありますよ」
フェロナとノーメラの言うとおり。冒険者っぽくない一般人が多数いる。数が多すぎて、多分酒場にも避難しているだろう。本当に薬師ギルドの被害者だけか?
「あ、おはようございます。連れて帰ってください」
「アリエッタさん。おはようございます。ゆっくり話しましょう。どう考えてもおかしな人数ですよね?」
「88人ですね。話は終わりです」
「酷い! 俺をなんだと思ってるんですか?」
「そうですね……救済者。うん、格好いいですね」
酷いなー。とりあえずフェロナには人数を伝えに言ってもらう。ついでにエフェロナと戦闘メイドを4人追加してもらう手筈を整える。
「雇用契約をしないと駄目ですよ。「はい、書類」……うん。最低基準ですね。戦闘メイドと同じだ。全員が薬師兼戦闘員兼雑用。好きに解釈できますよ。先ずは引っ越しですよね。荷物は?」
「アイテムボックスで収まってますよ?」
二文字職はアイテムボックス二つ。30センチメートル四方の箱に収まる量。全く物資が足りていない。
「フィーリア。ジャンプスーツかオーバーオールってやつ男性用パンツにあった? 急いで確認」
小声で問う。
「ちょっと化粧室に行きます!」
ゴブリン骨布でのタンクトップはまず足りない。先に一張羅だがオーバーオールでも履かせる。戦闘メイドには悪いが、数が多すぎる。今日にでも狩りに行かないと不味いな。服がない。
「契約はこれでいい。急いで公証手続きだ」
「はい。頑張ってね」
「……魔力が持ちませんよ。……はい。頑張ります」
愚痴ってるが「交渉人」に「公証人」頑張れ! 次は状況把握だ。みんなバグ持ちか?
「はい。年齢は下が15、上が36ですね。この契約で通ってますが、まあ拒みませんよ。バグ体質の方を軟禁して使ってましたからね」
「88人もなんに使うんだ?」
「「薬剤師」のスキルは下処理がされているほど楽なのです。後は連れ立って薬草採集ですね。冒険者ギルドから買うと高いのでしょう。自主的に採集してコストを浮かせていたようです」
「狩りが出来るのか? フィールドは安全でも無いだろ」
「犠牲者のご冥福をお祈りしました」
酷ぇな。よく観察すれば、手足を不自然に庇って動いている者もいる。四肢は動くが無傷は少なそうだな。「強癒」でどこまで回復するだろうか? したくもない実験の機会を得てしまった。
「…………はい…………終わり…………ました」
死にかけてるやん! 「交渉人」は机に伏してる。「公証人」は明後日の方向に書類を差し出してる。激務過ぎる。俺は自分用の濃縮治癒ポーションを二つ出し、死に体の二人に差し出す。
「…………これは?」
「濃縮した治癒のポーションだ。濃い効き目があるが疲労に効くかは定かじゃない。服用するものだ。試してくれ」
勢いよく口にした。相当、参ってる。服用後にすぐ全身が光り、血色が少し良くなった。
「「生き返ったー!」」
だが、疲労の半分は魔力枯渇だろうな。っと、フィーリア帰還。
「オーバーオールなら男性用パンツにありました。ジャンプスーツはジャケットのようです」
理想はジャンプスーツだが、オーバーオールで我慢してもらおう。あと下着をセットで渡せば、『皮飾り魔術』の保護で一晩で乾く服の完成だ。一着しかないし、夜は古着で我慢してくれ。
「ノーメラ。ロザンナに男性用の古着の手配をさせてくれ。サイズは成人用でいい。大きくても着れたらいい程度だ。下着も88人の3セットで。あともう少しで食事に帰るとも伝えてくれ」
「はい!」
入れ替わるようにエフェロナと戦闘メイドを4人が到着。早いな。さて、詳しくもない説明だがとりあえず連れて帰ろう。確か、一階にも個室があったな。同じベッドに二人だが、勘弁してくれ。
指示を出して。エフェロナを中心に戦闘メイドがグループ毎に分けて案内する。88人の大行列だ。小分けにしないと連れても帰れん。
とりあえず、俺とフィーリアを残して屋敷で食事をさせておく。
「今のポーション、詳しくお願いします」
ほら、まだ残ってる。