062
朝です。お金がないです。二階の十部屋は明日の分までは昨日払った。三階の二部屋も明日まで払ってる。宿賃一日1300ルーク。金がねえ!
「ご主人様? お腹空きすぎて、お腹痛いのですか?」
「いや、お腹じゃなくてお財布が痛い」
「今日はダンジョンですよね。大丈夫ですよ」
残りが3444ルーク。延長してももう二日。本格的にヤベェ。サクッと飯食って、ダンジョンだ。
○ ○ ○
「「「ご馳走様でした!」」」
俺ルール。飯は奢りたい。財布が軽くても頑張るぞ! そういえば色街ダンジョンに入る前には、冒険者ギルドの支部に寄らないといけないのか。ゾロゾロと移動。
「承ってます。ドライさんは大丈夫です。ですが、二文字職の方々も三層に行かれるのですか?」
「様子次第ですね。基本的にはゴブリンで戦闘訓練です」
「畏まりました。お気を付けて」
今日はまだ誰もダンジョンには入ってないそうだ。あと、配属変更で来た職員もお姉さんだった。「ここの環境に男は合いません」とまあ、連れ込んで遊んでいた職員も居るらしく、女性が担当になることが多いそうだ。
金稼ぐぞ!
○ ○ ○
「やぁ! 『剣姫の舞』!」
「はぁー! 『運命の一閃』!」
まあ、金稼ぎの前に訓練だ。サンドバッグなチンピラだけじゃ訓練には程遠い。一匹に二人から三人で挑んでもらう。
マジックスタッフを殴れる警棒にしたからと物理攻撃に強いわけではない。ゴブリンでも数手は必要である。ステータス補正が大きくなれば一撃も可能になるが、それじゃ練習にならない。
一層なら待機する方が多い数しかゴブリンは居ないので援護も容易に可能だ。ロザンナとミーディイがスナイパーのように睨みを効かせている。初動が二人の方が早い。だから、ロザンナとエフェロナは残りに指導してる。前衛の先輩だしね。
「んー、ポーションが大量に欲しいですね」
ダメージは少ないが痛いのは痛い。それでも健気に頑張ってくれる。この訓練はステータスの低い今でないと実りが少ない。ランジェリーセットも緑カラーに統一しているので耐久値の回復はすぐに可能。でも軽減であってやっぱり痛い。
フィーリアは俺の指示でポーションを投げる。今は投擲ポーションを二つ消費してる。あと三つ。確かに少ない。昼にでもポーションを補充しよう。ポーション……お金ないな。夕方だ。服用の方で対応しよう。
これだと二層は無理っぽいな。三文字職をある程度育ててからだ。それまでは奥さん達に頑張ってもらおう。
○ ○ ○
少し早いが昼飯。さすがに二文字職もレベル上限でないので疲労が濃い。十分にゴブリンを堪能させたので今回の訓練は良しとしよう。昼からは遠足気分で着いてきて欲しい。
「ゴブリンって怖いのね」
「そう? ここまで準備されてるから気合いで大丈夫よ」
「いや、あんたは上手よ。私は殴るのは、ねぇ」
とまあ、個性が表れてきた。途中で「ランジェリーの模様替えが出来そうですね」なんてフィーリアが言うから、ゴブリンがバーゲンセールのように捌かれていったんだよね。そしてスタミナも魔力も早々に切れたと。
「濃緑がいいわぁ」
「努力が実るって素敵♪」
とまあ、ゴブリンがランジェリーの素材にしか見えていない。こん棒も見てあげて。撲殺用の杖になるんだよ。そのうち誰かは剣にも興味持つんじゃない?
さて、戻ってからは奥さん達が先導する。見学の時間です。今日のお題は近接戦なのでサロワナとエフェロナが先生です。俺のは参考にならん。
「「「……瞬殺」」」
あら、こっちも参考になってないか。両手剣のサロワナに二刀流のエフェロナ。共にオーバーキルだしね。サロワナに至っては手加減しないと潰してしまう。
「二層に行くけど、最初は動かないこと。転移後に慌てるとゴブリンに囲まれて襲われます。観察は横目で優しくですよ。いいですかー?」
「「「はーい」」」
このノリも馴染んできたな。全員で乗ると転移魔方陣も狭いな。起動。
「行きます! 『肉皮剥ぎ魔術』!」
「私が入り口塞ぐぜ!」
「私、狙撃で、止め刺す」
「じゃ、回収します」
「そうね。手分けしてやりましょう」
「私は止めも刺しながら回収するわ」
「「「…………すごっ」」」
二層は一気に密度が上がるからな。ゴブリンの痛みと強さを弱いうちに体感していれば、この状況も理解しやすいだろう。十数を一気に殲滅だからな。
「主人よぉ。三層は少しやらせてくれ」
「ん?」
「私らでも手こずるのを見せとく」
「なら、ホールの殲滅は頼む」
「「「はい!」」」
二層の厚さを体感したら、三層だ。転移。
数は7、フィーリアが心配だが。
「各個撃破! 俺が二匹殺る!」
「「「はい!」」」
『肉皮剥ぎ魔術』に頼らず一対一。しかも二文字職スキルで対応する。結果的に興味を引かれたのが、長期戦で堅実にこなすフィーリア。「村正」のみで対応するため一進一退の攻防を繰り広げた。
次点でミーディイとロザンナ。狙撃で足を狙っての攻撃の後に止め。こちらは前衛に不向きな娘に興味が集中した。でも、フィーリアの戦闘時間が一番長かった上に武器も一緒。一番参考になった。
「支援でも頑張りますよ!」
とまあ、支援職アピールしてる。
「ちょっとだけ時間をやる。現場での意見聞いとけ。俺は入り口の封鎖しとく」
「「「ありがとうございます!」」」
危険な場所だと認識したようだ。端的に聞いていくのが聞こえる。人気は前衛と後衛で半々か? やはり前で戦うのは怖いかな。
「ご主人様って何をしてるのですか? 意味わかりません」
「ご主人様ですから。別格ですよ♪」
うん。俺は参考にならないな。時々、白属性の『妖刀刺し』で飽和攻撃してるだけだしな。パアッって光れば通路で倒れるコボルト、後処理が楽な血抜き済み。
「行くよー」
「「「…………は、はーい」」」
流石に圧倒されたか、ノリきれていない。残念。
分岐は一発撃ってから、奥さん二人で封鎖。回収が甘くなるが、今日中に500匹以上を狙う。三文字職に就いて欲しいからな。人の痕跡も気配もないので周知は徹底されたようだ。
「ご主人様。勿体ない!」
「安全第一。また湧くから」
回収できない分岐の奥まで倒すから勿体なく感じる。戦闘メイドには討伐証明の耳の剥ぎ取りにとスローイングナイフを貸している。躊躇わずに剥いでくれ。進軍が遅れる。
「あれ? レベルが10になった?」
「あっ! 本当だ!」
「初めて意味ある職業を得たけど……これっていいの?」
ふむ。流石に育成だと感動は薄いか。スキルを使ってるときは嬉々と喜んでいたのにな。
「目標達成! 撤収する! ダンジョン出るまで気を抜かないように!」
「「「は、はい!」」」
俺らの後を着いてこれるくらいにはなって欲しいからな。育成でもしないと追い付かないよ。
時間に余裕はあるな。帰ったら説明だ。