059
翌朝。
「あの格好だと目立つよな」
「ご主人様? 私達の服の方が目立ってるって知ってます?」
「流石に無視し続けるのも限界よね」
「私達の服、狙ってる」
知ってるよ。だって、老若男女問わず二度見するからね。基本的に無視してる。大分と浸透してきたから、商売人が声かけようと狙ってるんだよね。
売る気もないし、先ず足りなくなる。ワンピースくらいは早々に配りたいな。
「仕方がない。行くか」
「「「はい」」」
○ ○ ○
ランジェリーを回収後、ぞろぞろと従者ギルドに向かう。彼女達の契約書類を閲覧するためだ。問題ないなら所属変更だ。
「こちらには主人との面談の後に所属変更とあります」
読ませてくれない。うーん、繋がってそうだな。彼女達に書類の複写を申請させる。金は前払い。一枚100ルークとか高すぎだろ! 流石に本人の書類であるから断れない。ロザンナはどうやって前回調べたの?
「ご主人様が買う気満々ですから。売り手は搾り取ろうとしますよ」
俺は駆け引きも下手か。まあ、良いけどね。
「あら、複写に不備があるわ」
「なあ? 冒険者ギルドのおっさんの末路ってどうだと思う?」
「脅迫ですか?」
「ん? いや。世間話だ。彼女達に本書と確認させるのは問題ないだろ? 嘘の仕事で金取るなら、詐欺だよな。ほら、つーかまえた」
手を伸ばせば従者ギルドの職員があわてて手を引いた、弾みで転んだ。うん、日常的に行ってるな、これ。
「これが本書です」
「あら? ギルドの証明印がないわ」
今度は無言で捕まえて逃がさない。
「捕まえた」
「ひぐっ」
「職業を見せろ!」
冒険者証と同じ作りだが、所属が商業ギルドになってる。商売の統括が商業ギルドかな? 裏を見れば二文字の職業が「奴隷(詐欺・仮・ドライ)」となっている。
「俺の問いにだけ答えろ。本書はあるのか?」
「……ない」
「なら、何故、従者ギルドに登録されている?」
「……後から書くからだ。適当にサインさせとけばこっちでどうとでもなる」
「命令する。仕事しろ。ロザンナ、ミーディイ、サロワナ、エフェロナの本書を持ってこい」
「……本書はない」
「何故だ?」
「元々、従者ギルドは貴族以外を相手しない。契約書があれば好きなように脅せるからな」
「ふむ。なら、先の四名の従者抹消の書類を作れ。従者ギルド正式なものだ」
「……俺にその権限はない」
「どうされました、かぁ!?」
奥から出てきた太ったおっさんの首根っこを掴んで、先と同様に詐欺として捕縛。こっちの方が偉そうだ。
「ふむ。真っ黒なギルドだな。で、お前はなんだ?」
「……従者ギルドのマスター」
という訳で、フィーリア以外の全ての女性の従者ギルド登録を抹消する正式な書類を書かせた。これに関わる負担は全て従者ギルドが請け負うと。
「「公証人」はいるか?」
「……俺だ」
「これを全て認めろ」
「ご主人様。脅しであればスキルは不発になりますよ」
「そうなったら、冒険者ギルドで手続きするだけだ。脅しというより犯罪の裁判だよな。ほら。ちゃんと発動した」
「「「…………」」」
みんなは何に対して呆れているんだろう? まあいい、健全化は命令でも大丈夫だな。
「脅しに使うリスト。あるだろ?」
おー、いい数がある。リスト全てに対して従者ギルド登録抹消の書類を書かせた。リストにも全てギルドの証明印を押させる。最後に公証として登録。これで全ての者が解放された。これは俺が預かるっと。
「命令する。全うな仕事をしろ!」
「「……はい」」
「その命令ですと、寝ずに仕事しますよ」
「倒れたら誰かが気付くだろ。あー、黒いお仲間が先に来そうだな。命令を変更する。領主館に歩いていき、門番に商業証を見せて今までの罪を大声で全て白状しろ!」
「適当な命令だよな。まあ主人らしいけど」
従者ギルドは男が二人で運営していたようだ。歩いていく姿を確認して冒険者ギルドへ行く。あっちでも従者登録ができるって言ってたからな。
○ ○ ○
「…………はぁ。えっと、少数ですがこちらでも従者登録を管理しています。ええ、正式なものです」
みんなの従者ギルド登録抹消の証明証を見せて手続き開始。ちなみに先程の犯罪を列挙して「してる?」って聞いた後に握手した。「捕まえた」って言っても奴隷にならないので信じることにする。
「えっと、生活の保証だけですと認められません。月に1000ルークは追加で保証してもらう必要があります」
「その時点で従者ギルドは犯罪だったのか。登録抹消して良かったよ。では……払えるかな? でも、一人1000ルークで」
「畏まりました。契約内容は主人からの貸与品の譲渡禁止。主人の知的財産の漏洩禁止。あとは基本的な事柄ですね。『等価交渉』。双方に契約の不備なしとありましたので、問題ありません」
「そのまま公証してくれ」
との流れで、戦闘メイド21人と『公証契約』を結んだ。フィーリアは未だ奴隷。冤罪なのにな。まあ、奴隷以前に第一婦人だがらな。なんも問題ない。ロザンナ達は契約で縛ってくれとの要望で戦闘メイドになってる。賃金も一律でいいと。今は正直に助かる。
○ ○ ○
1人分150ルークと高い手数料を払った。高いよ。
「なあ、依頼って出来るか?」
「はい。本来なら採集などの商人との契約で私達がいますので。必要な物がおありですか?」
「いや、流布。これを公にしてくれ」
さっきのリストを見せる。多分、この街の雇用形態が揺るぐだろう。けど、弱者が弱者のまま終わるのはな。選択肢ぐらいは用意しよう。
「………………いかほどで?」
「あの騒がしいおっさんが下げたギルドの信頼ってのは? まあ、俺が本書を持っとくけど、手柄は冒険者ギルドにやるよ」
「私の一存では計りかねます。ですが、正直言って通ります。条件などは他にありますか?」
「冒険者ギルド所属のただの冒険者って程度なら好評を許す。理想はあれの後釜の手柄がいいね。俺は目立ちたくはない」
視線が痛い。目立った? ここじゃ今話題の有名人だぜ、ちくしょう!
「複写の許可を」
「いいぞ。じゃんじゃん写してくれ」
一声で全ての業務が止まった。最初は冒険者から文句が出てたが、察してくれて引いてった。昼が近いので「飯食ってくる」と言って後にする。と言っても離れるのは気が引けたので二階の酒場。
味は悪いが量はある。5ルーク定食で腹だけは膨れた頃に冒険者が動き出した。終わった様だ。みんなを置いておく。ゾロゾロとは迷惑だからな。会話はランジェリー談義で埋まっているので数日は持つだろう。そこまで放置はしないけどな。
「お待たせして申し訳ありません。あと、この女性職員の手柄にと思いますが如何でしょうか?」
そこには色街支所のお姉さんが居た。




