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 やって来ました冒険者ギルドの本部。正確にはファースト領本部だ。総本部は王都にあるらしいぞ。ゲームじゃ、支所もなければ冒険者ギルドに差なんぞなかったからな。


「けっこう混んでますね」


「仕方がない。並ぶか」


 んー、男性比率の高い冒険者だ。俺以外が美人のハーレムパーティは目立つな。多分だが、昔の客も居るのだろうな。


「おぉ? ロザンナか? べっぴんになったな。今晩いくらだ?」


「私は戦闘メイドとして、この方に仕えています。もう売女ではありませんよ」


「へー。よう、坊主。ロザンナはいくらだ?」


「売るわけないだろ? 分かれよ」


「んなっ!? そうやって稼いでるんじゃねえのかよ!」


「少なくともお前よりロザンナの方が強い。分かれよ。ロザンナ、順番だ。アイテムボックスを開いてくれ。みんなもだ」


「「「はい!」」」


 今日はなんぼだろう? 600以上はあるんだけど、数えるようなペースじゃないしな。んー、あれ? 買い取りが反応しないな。


「なあ? 数えてくれないのか? 支部じゃ払えないっていうからこっちまで持ってきたんだが、こっちも金欠か?」


「お、おい?」


「なんだ? ロザンナは売らないって言ってるだろ」


 このハゲ面のおっさん、しつこいな。


「そんなに溜め込んだら怒られるぞ! 何日分だよ!」


「半日だよ! これくらいちゃちゃっと狩れるぞ! こんな数を数日掛けてたら意味ないだろ! バカにしてるのか? ん? そういえば、支部のお姉さんから手紙だ。はい、職員さん」


「………………あっ、はい。…………えっ? 連日持ち込まれて支部じゃ対応が無理? あ、サインは本物だ」


「「「マジか!?」」」


「大の大人が揃って何言ってんだよ。このくらい出来なきゃ養えないだろうが。男なら甲斐性見せろよ」


 んー、注目が集まって落ち着かん。買い取り、早く! んー? こっちも厳ついおっさんだな。それで職員とか詐欺臭いな。


「おい、どうしたその山は? 溜め込みは腐るからと何度も注意を……ん? 手紙? …………マジか!?」


「そんなに溜め込んでたら次が狩れないじゃん。早く褒賞金くれよ。後ろがつっかえてるぞ」


「おい、こっちこい。手の空いてる奴、数えるの手伝え!」


「「「分かりました!」」」


「坊主。見ない顔だな。冒険者証を見せろ」


 偉そうだな。命令してるし偉いんだろうな。はい。


「三文字二重職!? しかも全てがバグ職業?」


「「「はぁ!?」」」


「おっさん! 偉いからって個人情報を漏らすな!」


「おい、この職業にスキルはあるのか? なんぼだ!」


「聞けよ! 先ず、この話は聞かれてもいい話か? 続けていいなら話を続ける」


「早く!」


 うるさいな。これはもっと上の権力者の名前を出せば引くか?


「その情報はファースト領主が買った。そっちに聞け。この情報の値段を領主より安く売ったら怒られるだろ」


「「「あっ!」」」


「おっさんが責任とれよ。ギルドの偉い人に脅されて喋っただけだからな。俺に責任はない」


「ま、マジか!?」


「ここで話せといったのはおっさんだ。領主様の名前だして嘘ついたら怒られるだろ。それより買い取りだ。褒賞金を早くくれ。ん? そうだ。クランを作りたいんだ。どこで作れる?」


「あ、ああ、あっちの空いてるカウンターだ。なあ、嘘だろ?」


「領主様は正当な額で情報を買った。未払いだが、いい値段だと思うぞ。それでも買うか? ここで聞いてるやつらはみんな買う意思があると判断する。それも領主様の提示する額でだ。言っていいか?」


「「「止めてくれ!」」」


「先にあっちのカウンターでクラン作ってくる。並び直すの面倒だからあっちに持ってきてよ」


「そ、そうだな。そう対応しよう。皆! 流したら自分の身が危ないと知れ! 領主様の名を汚す行為だ! 最悪、犯罪者になるぞ!」


 簡単に犯罪者になる世界だな。正直に生きよう。



  ○  ○  ○



「このギルドの「交渉人」です。クラン長とクラン名と、あと、いかほどの枠が必要ですか?」


「後日に追加できるなら今は四枠で。確かパーティが四つ重なるんだよな」


「そうです。別名パーティ拡張です。クラン長とクラン名をお願いします」


 みんなに案を募るが俺に託された。バグ体質集まれとかはバカっぽい。だからと言っていい案は浮かばないな。適当にゲーム名でいっか。


「クラン長はドライ。クラン名は八百万(やおよろず)ですね。はい。では『等価交渉』……4000ルークです。手数料に400ルークの4400ルークのお支払をお願いします」


 手数料が地味に嫌らしい。が、まあ払うさ。


「おーい。公証頼む」


「はーい。……書類はいいですね。ドライのクランである八百万の四枠を認めます。『公証契約』」


 変化を感じないな。何が変わった?


「パーティ設定が最大24名まで弾かれません。これで完了です」


 なんか呆気ないが、まあいい。ついでに聞いとこ。


「従者の仲介ですか? 時折、パーティメンバーの脱退や合流が従者である場合ですが移籍されるのに使われますね。従者ギルドより手数料は高いですが、承りますよ」


「ありがとう。近い内に相談する」


 思った通り、戦闘メイドが存在するから、ここでも手続きが出来ると思ったんだよね。


「どうしてここで?」


「従者ギルドって黒いんだよ。暗黙の奴隷契約を許してるし。胴元と繋がってると厄介だからこっちでね。従者ギルドにも「交渉人」が居るだろうけど、スキルを目の前で見た感じでは嘘をついても分からないんだよ」


「第三者は必要、ですか」


「警戒する方が安全だと思うよ」


 あ、そうだ。情報が金になるなら、あの偉そうなおっさんがバラした情報には、どのくらいの価値があるだろうか?


「なあ、もういっちょ交渉してくれ」


「はい。何を?」


「バグ職に価値がある、という情報にだ」


「えーっと、バグ職に価値がある『等価交渉』……えっ!?」


「なんぼだ?」


「それだけの情報で10000ルーク? 何で? 私も? そんな!?」


 「交渉人」の男が慌てて、偉そうなおっさんのところに走っていった。まあ、もう一人に用事は完結させよう。


「そこの「公証人」さんよ。今の聞いた人全てに頼むよ。仕事しろ」


「あっ、はい。バグ職に価値がある『公証契約』……対象は69人? えっと、手数料は6900ルークです」


 ボーッと仕事している間に、ほい。


「……成立しました。えっ!? 私も?」


 再び「公証人」の男が偉そうなおっさんに走っていった。ふむ。一時的にお財布が軽くなったが、直ぐに増えそうだな。支払えば自分の情報になるようだが、その先が大変だね。文字列確定方法に、スキルが何なのか。口止めにはいい具合だろうか。


「おい。どういう事だ!」


「おっさんが悪いってことだ! 守秘義務を怠ったからだろ?」


「あの時は興奮して……」


「その興奮のツケが総額69万ルークだ。払えよ」


「……直ぐには用意できん」


「明日にでも用意できた分だけ色街の支所に持ってこい。あそこの受付嬢はちゃんと守秘義務守ってるから信用できる。情報漏洩の原因のおっさんが一番危ないんじゃね?」


「……くっ! とりあえずこれだ。723匹で10845ルークだ」


「仕事が遅い。支所に金もって行っといてくれ。ここじゃ目立ちすぎる」


「対処を考えておく」


 騒がしいので退散しよう。人の口には戸が立てられない、か。もう流布されてるがこの場合どうなるんだろうな? 金額設定したから借金になるだろうけど、あんな借金奴隷はいらないな。

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