049
朝起きたら、やっぱりフィーリアは帰っていない。主人権限で女性部屋へと侵入。ベッドの上に綺麗に散乱する服。それを避けるように床で寝る女性。
凝ったのだろう。工夫が随所に見られる服だ。ワンピースはスカートが極端に短い。股下ギリギリの下着が見え放題だ。って言ってもパンツ似合わすためだろうな。合わせた細身のパンツは動きやすそうである。ワンピースってより、裾の長い上着だな。
静かに退室。
うん。暇になった。おっさんに聞いて洗濯場に移動する。ちゃんと床は石造りで排水の勾配も考えられたいい作りの一室だ。シーツとかの洗濯作業場であるためかそこそこ広い。埃はすごいけどな。
うん。これはいいな。
エフェロナ愛用の剣に魔力を流す。温度はいい、水を勢いよく出るように念じる。剣先から細いが勢いよく水が出る。殺傷能力は皆無だが、水遊びするくらいには楽しめそうな勢いだ。
排水溝に水が流れるのを確認して、床を水圧で磨いていく。明かり取りの窓の開けて換気もする。掃除。人数増えたら井戸の周りが女体だらけだし、そこまで視界を遮る裏庭ではない。専用の部屋があれば嬉しいだろう。
欲を言えば水を汲み置きする大きな樽……おお、樽風呂いいじゃん! この辺の巨大貯水設備って樽くらいだよな。それ以上は池とかの地面に掘るタイプになる。どのくらいまで大きな樽があるだろうか?
「おっさん、樽って売ってるか?」
「何するんだ?」
「水に浸かる。と言うか洗濯場で行水する。女が増えるんでな」
「体が入るほどの樽か。樽屋に注文すりゃ買えるだろ。中古の樽なら酒蔵行ったら安いじゃろ」
ここは色街。酒も大量に出回る。言えばタダかもしれないらしい。が、水漏れ不安。まあ、とりあえず実験用に一つ欲しいので酒屋を紹介してもらって足を運ぶ。
酒屋は夜に商品が捌ける。だって色街は夜の蝶との交遊だ。需要は夜だ。なので補充は日中にされるがタイミングがよかった。丁度、仕入れのタイミングで店に来たらしい。空の酒樽を一つ買う。100ルークは高いと思うが新しい方らしい。本当か?
抱えて帰ったらおっさんに「中身はねえのか?」なんて冗談を言われたが、こんど奢ってやろう。迷惑掛けてるしな。
んー、強度に難がありそうで風呂は無理っぽいな。まあ、湯を溜めるにはいいだろう。エフェロナ愛用の剣に魔力を通してゆっくりと水をためていく。勢いは不要だしな。水量に難あり。数本欲しいな。
時間節約に井戸からも何杯か汲む。使いすぎると枯れては困るので水汲み専用の武器が欲しいな。
樽からの漏れはなし。今度はサロワナ愛用の剣を樽に突っ込んで魔力を通す。お湯にする。こちらも時間がいるな。専用が欲しい。
酔った。そりゃワイン樽を暖めりゃ酒臭いわな。
「ご主人様~。大丈夫ですか~?」
「フィーリア、起きたの? みんなは?」
「着替えを取りに行ってます。湯浴みしたいそうです」
「俺も濡れたしさっぱりするか。でも、これで流すと酔いそう」
「えへへ~♪ いい香りですよ~♪」
フィーリアの目が蕩けてる。もう酔ったか? と、お姉さん達の到着だ。
「いい香りね」
「酒臭いだけだぞ」
「いや、これはいいワインだ。香りが上品なんだよ」
「ホットワインを、思い出す」
「こちらの部屋も掃除が必要ね」
洗濯場の隣はリネン置き場。おっさんは外注にしたので何も物がない汚れた部屋だ。丁度、脱衣所に使えそうだ。いい案配で部屋が使われて無かったな。
「さっさと入ろう。お湯を汲む小さい桶も欲しいな。樽ももう少し数が欲しい。あと、いつになったら酒臭いの抜けるかな? 酔う」
「えへへ~♪」
上機嫌にベタベタしてくるフィーリアのせいでお姉さんの視線が一部に向く。恥ずい。
○ ○ ○
寝過ごしたお詫びにといっぱい洗われた。フィーリアの嫉妬がストッパーなのに酔っててむしろ煽る。お姉さんと一線越えるところでした。ミーディイが異様に食い付いてきて危なかったよ。
「女の、誇りが、汚された。責任、取ってよ!」
「えー。フィーリアが素面に戻ったら尻肉が削がれるよ」
「今のうち。大丈夫、天国を、見せてあげる♪」
「えへへ~♪」
遅い朝食。いや、もう昼食にしよう。大皿も三つ頼む。フィーリアの酔いはまだ抜けておらず幸せそうだ。この浮気しない俺を擁護するお姉さんは皆無で、俺が悪いみたいだ。いや、錯覚だろ?
「しっかり反応するのに抱かないのはヘタレだぜ!」
「ご主人様の好みではないのかと不安になりますよ」
「紳士は時として女を苦しめますよ。大丈夫です。痛くしませんよ。極上ですよ。先ずは一番メイドの私から使ってください」
そりゃ、熟練の夜の蝶のテクニックは想像できないほどの極楽だろうよ。でも俺としてはフィーリアとの初々しい……か? えんらい色々な事を覚えてるよな? 本当に生娘14歳だったのか?
「教育は欠かせません。間接的にご主人様への奉仕ですよ♪」
犯人はロザンナか。それはフィーリアにノックアウトさせられる訳だ。弱点があるとすれば、フィーリアは打たれ弱い。攻勢に出れば俺主導になれるというバランスが楽しいのだ。
「なあ、正直、抱いて欲しいぞ!」
「真面目に何言ってんだよ」
「新しい娘に示しがつきません。フィーリアちゃんもその辺は理解しているのですが、感情が昂ると嫉妬になるようですね」
聞くに、あの従者ギルドでの契約は主人の好きにできる契約だ。一方的な解雇もあるが、肉体関係も好き放題。奴隷ではないが暗黙の奴隷契約。それなのに求められないのは、そっちでは不要と言われていることになる。らしい。
その状況で新しい娘に真実が伝わると同列になる。契約上は同列なのだが先輩として面目が立たない。更に言えば、俺の寵愛を受ければ一躍出世。関係が泥沼な女の戦いが始まるとのこと。
「ですので、形だけでも抱いていただけると、私達が統率出来るようになります。一度ついた序列はご主人様の意思でない限り崩れません。ご主人様が私達を含めた21名の女性に言い寄られ続けるのはフィーリアちゃんにも不快だと思います。ご一考をお願いします」
ハーレムって難し! 俺の横で泥沼な女の戦いなんて嫌過ぎる! 平和的に笑って過ごせないものかな?
「無茶いうなよ。客取れなきゃ明日も怪しいギリギリだったんだぞ。私らだって好き好んで客の取り合いしてねえが、我が身がかわいんだよ」
「そうね。可哀想だけど田舎に追いやった娘もいるわ。なるべく選んでいたけど、その娘は怨んだでしょうね。田舎に居場所はないもの」
「私達は、争いを強要されて、染み付いているの。良い居場所は、自然と欲するわ。フィーリアちゃん、奴隷よ。一番、立場が弱いわ」
「……どうしろと?」
「一度で良いわ。今後は定期的に寝室に呼べば良いわ。行為は不要よ。それで誤魔化せるわ。フィーリアちゃんはご主人様の物でご主人様の命令だから大丈夫よ」
味を覚えて、抜けられる自信なし! フィーリアを愛するというのは俺の望みでもあるが、俺の自制心を保つ言い訳でもある。根底から崩れたら全てに手を出す自信あり!
理由がいる。俺を律する理由がいる。
「ロザンナ」
「はい」
「ロザンナは第二婦人だ! そして、ミーディイ、サロワナ、エフェロナ、お前達は序列のない妾だ! 受け入れろ!」
「いいの? 直ぐにおばさんになるわよ?」
「いい。俺のためだ。理由がないと俺はダメになる。こんな理由でも俺の枷になるだろう。フィーリアには悪いが、これ以上、俺が助長しないためなんだよ。俺って男だから、歯止めがないと立場で強要する最低な奴になってしまう。フィーリア、いいか?」
「あっ、気付いていましたか。正直、流して「ご主人様の命令」で済ましてくれる方が親切ですよ」
「フィーリアが嫌な男になりたくない。が、フィーリアの様に助けを求める人が救えるなら、俺は動きそうだ」
「私が嫌と言ったら?」
「これ以上は手を出さない。今回もだ。当初の目的はフィーリアが身重になった時の支えだ。フィーリアが望んでいない支えは不要だよ」
「酷い人ですね。私があの人達を、ロザンナさんを知らなかったら引き返せましたよ。でも、知ってしまいました。ご主人様は救う力がある。私が拒んだら私を捨てればいいのに」
「俺のこの世界での恩人を見捨てたら、俺の生きる価値を見失う。出会った時間は短くても、俺は救われたんだ。俺は独りが怖い。フィーリアが居ないのがとても怖い。代わりは居ないよ」
「私に判断しろと? 嫉妬しますよ」
「ああ」
「愛してって、いつも言います」
「ああ」
「だから、傍にずっといます」
「俺も約束する」
「なら、世界を救いましょう。さすがの私も全てのバグ体質の人達に嫉妬はしきれません。いっぱい救ってください!」
「分かった」
「これ以上、女を増やさないで!」
「早速、嫉妬!? でも、許してくれてありがとう」
今日、正式に五人の女を抱えるハーレム野郎になった。