045
「………………遠慮は、ないのですか?」
「いや、ここのダンジョン、数多いですから」
山積みのコボルトの耳。血も抜いてるのでテーブルは汚れないが、数えるのも一苦労だろう。
「少し時間ください。ここって私一人なんですよ」
「食事したら戻ってきます」
「久々の仕事がこれですかぁ。……はぁ」
ギルドのお姉さんが呆れているが、知らない。冒険者証を見てまた嘆いている。
「三文字二重職? どこのお偉いさんですか?」
「勝手に生えました。俺は一般人ですよ」
「詮索しない方が良いと私が私に告げています。では預かりますね」
「お願いします」
○ ○ ○
夕食は豪勢に……とはいかないが、大皿3枚追加でいっぱい食った。話の話題は理想のワンピース。ここは各自が譲れない拘りがあるようで激論となったが、俺はフィーリア推しで話は流したよ。
夕食を終えて、再び冒険者ギルド支部。
「……次からもこの数ですか?」
「半日でこの数ですが、苦戦するのでその時折ですね」
「ここの金庫はそんなにお金置いてないんですよ。この倍が来たら褒賞金を分割しても良いですか?」
「貰えるなら大丈夫です。コボルトは初めてでしたのでもう少し効率あげたいですね」
「お姉さん、困っちゃうな」
「ダメですよー。恋人が睨んでますので」
「まあ、あの美人集団に勝とうとは思いません。無理しないでくださいね。はい、コボルト389匹分の褒賞金5835ルークです」
「久々の現金。ありがとうございます」
「いえいえ。お金にならないゴブリンを倒してまで、ここのダンジョンに籠ってくれるので助かります」
有効利用してるけどね。普通ならゴブリンソードしか金にならんからな。あの階層全てがモンスター溜まりの二層を越えようとは思わないよね。
「ああ、明日は休むと思います。では、失礼します」
「また来てくださいね」
○ ○ ○
「帰ってきました! 早速、作りましょう!」
妙にテンションの高いフィーリアだ。いや、達だ。お姉さん達も隠せてないですよ。でも、主人なので優先しないとダメらしい。今日は俺の服を論ずるのだろう。地味がいいな。
今日の戦果。ゴブリンが、こん棒82、ソード65、骨布441。骨布はアイテムボックスに女性ランジェリーにして仕舞ってある。かさ張らないので結構持ち歩ける。万が一に他人に見られると問題だからだ。こん棒とソードは物置をタダで借りて山積み。結構な数だよ。
コボルトの戦果。丸盾389、片手斧148、片手剣151、片手杖90、骨布1945。素材としては綺麗に回収できたが、最後の逃げの一手だけは拾えなかった。無限に湧くんじゃないかって錯覚するほど多いんだもんな。
「フィーリア、コボルトの骨布で何ができるんだ?」
「6種類です!」
リストアップ。
→パンツ(男性) 消費134
シャツ(男性) 消費142
ジャケット(男性) 消費311
パンツ(女性) 消費148
ワンピース(女性) 消費199
コート(女性) 消費403
デザイン変更 消費3
女性ものは高いなー。女性は優遇されているのだろうか? まあ、良いけどね。男性一式で607か。女性一式で750。女性の熱意の分だけ高いと言うことにしよう。
「あー、そっち優先でいいぞ。サロワナが怪我したしな」
「「「ダメです!」」」
「なら、主人命令だー。俺の戦闘用を3セット作れー」
「「「はい♪」」」
あちらの論争に巻き込まれないように、俺は戦利品の加工だな。
○ ○ ○
一気に四つの素材が増えた。一気にリストアップ。
コボルト丸盾の『武具創り』。
→ガントレット 消費103
グリーブ 消費124
ブレストプレート 消費308
コボルト片手斧の『武具創り』。
→ハンマー 消費96
アックス 消費188
ハルバード 消費290
コボルト片手剣の『武具創り』。
→ソード 消費131
ツーハンドソード 消費217
太刀 消費534
コボルト片手杖の『武具創り』。
→マジックスタッフ 消費99
マジックアミュレット 消費200
ふむ。突っ込みは何点かあるが、先ず盾で盾が作れないことだな。防具だけど盾も欲しいよな。斧に剣は無難。太刀のコストが高いよ! で、杖のアミュレットってお守り? 武器? 防具? いや、アクセサリー枠か?
とりあえず武器は保留。何が足りないか分からない。今でも十分に戦えているからな。
問題は丸盾だ。今回ので、ガントレットとグリーブか、ブレストプレートのみか悩む。が、すぐさま不格好と言うことでブレストプレートを選んだ。急所を守らんでどうする。
デザインか。昨今の冒険者の鎧は革鎧。ベストからジャケット、肩当て付きと進化して、金属製へと移るが金属製はあまり見ない。初心者の街だからだろうな。と言うことで、胸当てに肩当てが付いたデザインに。
オプションか。三つまで。色々あるから迷う。耐久力増加に、常態異常耐性に、んー、物理攻撃軽減と魔法攻撃軽減とダメージ軽減はどのくらい差があるだろうか? ダメージ軽減で。
「うっし。完成」
着てみる。意外に軽いな。オプションに重量軽減も考えたがこれなら不要だ。
「「「良いですね♪」」」
「あ、ありがとう。みんなも同じようなのを用意するけど、いい?」
「「「楽しみです♪」」」
真っ直ぐに誉められると照れる。照れ隠しに話題を反らしたがバレバレだな。いいお姉さんなのでちゃんと合わせてくれる。合わせた上で手のひらで転がす。
「この鎧に似合う服を作りませんとね♪」
夜が更けるまで延々と着せ替え人形にされた。いや、自分で着れるって! それ下着! 脱がさなくていいから! 手が滑りすぎ! 気持ちいいから触らないで! フィーリア、あ、止め……………………あっ!