044
ん? なんかあった? 変な感じだ。職業にバグでもあったか? 元々がバグ職だからな。
……………………はぁ?
二文字職 村正
レベル10
二文字職 戦術
レベル10
三文字職 残具創
レベル12
三文字職 王太子(ルーク王国第一継承権所持)
レベル1
冒険者証がバグった!? 三文字二重職何て聞いてない。が、この職業は言えない。ここは誤魔化す場面だ。明日は必要な訓練所回ろ。次の日に休みとか疑われそうだけど、んー、悩む。
「どうしましたか?」
「い、いや、行こう! レッツ、コボルト退治!」
「「「怪しい」」」
○ ○ ○
ダンジョン一層の人気のない場所。
「「「おぉー!」」」
お姉さんにもみくちゃにされたら口も軽くなります。フィーリアも甘えた声で「お・し・え・て♪」何て言われたら逃げれないよね。
「すっげー。領主越して王太子かよ!」
「しかも次期国王ですね。私達に優しい国にしてください」
「待って! ご主人様が、困ってる。ヌイとく?」
いや、そっちも困って、んしょ、ポジション調整。ハマりが良くなったので本題に。
「そっちは間に合ってる。フィーリアだけだよ♪ って、違う! これ明日消すからね!」
「ご主人様、訓練所に冒険者証を見せる必要がありますよ?」
「フィーリア? 大丈夫だから離れていいよ。それは問題だ! 二文字職でも就いて消しとかなきゃ! 一回出るよ」
「「「はーい」」」
○ ○ ○
「リトライ!」
「「「おー!」」」
意味不明で唐突な三文字二重職に目覚めたが、「剣射」に就いて隠した。文字数の少ない方には問題ないので三文字職業欄に二文字職だ。違和感は拭えないが「王太子」よりはマシだ。
一層で慣らし運転。特に問題点は少ないな。
二層は密度は高いがこなせない数じゃない。各個撃破にて対応。骨布は大切なのでしっかり集める。こん棒とソードもな。狭いエリアなので練習に丁度いい。
「さて三層だ。初撃ロザンナ、追撃ミーディイ。俺は入口を見張る。他三方向の守りだ。モンスター溜まりであるだろう。初撃と追撃で衰えなかったら撤収だ」
「「「はい!」」」
「いくぞ!」
○ ○ ○
「『魔力増幅』! 『肉皮剥ぎ魔術』!」
転移魔方陣の部屋は狭かった。だが十分にコボルトが待ち構えていた。と言っても奇襲はない。お互いに「あっ!」と言う程度の間があった。コボルトは吠えたけどね。その間にロザンナがブーストして魔法を放った。
ゴブリンに産毛が覆うように生えて、耳の位置が少し上にある、青色の擬人モンスターがコボルトだ。ゴブリンの5~6倍は強いと踏んでいたが。
「数が少ないと効きますね」
肉離れで苦しむコボルト。立っているものは皆無。狭いので範囲も絞ったようだ。その分、威力が増して、ブーストもあるから過剰だったとも言える。
「ちょっと固いけど、剣通るぞ」
「そうですね。ゴブリンに比べれば固いですね」
「一匹で骨布五枚ですよ! お得です!」
「一匹に、武器と盾、こっちも、お得」
「青色は良いですね。あら混ぜれないのね。未使用はないわ。ご主人様の下着セットを作って」
「シンプルですが、どうぞ。青かぁ。議論が捗ります!」
いや、混沌とするだろ! 白に緑に追加の青。数日の議論が必要だな。明日は休みにしたし、コボルトの骨布でも何か作れるだろう。明日で足りるかな? あ、ちゃんと討伐証明を剥ぎ取ってくれてる。助かる。
盾は小さな木の盾。武器は三種類、片手斧に片手剣に杖。若干杖が少ないかな? どんなものが出来るか楽しみだな。
「ご主人様。大丈夫ですか?」
「ああ、思ったよりは弱い。大群に囲まれた二層の方が怖い位だ」
入口通路は若干狭い。『残虐創設』を張って弱ったのを倒す。『妖刀刺し』で首を突いて後ろに投げる。数が多ければ『魔力薙ぎ』と『魔力落とし』で弾く。入口封鎖はここでも一人で出来るな。
「今日はここで流れてくるやつを仕留める! 『残虐創設』で弱らせたのを俺ともう一人、サロワナかエフェロナ、交代で頼む。他は剥ぎ取って素材集めだ」
「「「はい!」」」
「いっちょ、かましたる!」
「ご主人様も休息を入れてください。交代制です」
「分かった」
正直、『残虐創設』で弱らせないとサロワナとエフェロナは苦戦する数が来る。俺の魔力が尽きたら撤収だな。ふむ。三文字二重職はあれでいこう。純粋に強いからな。
「聞いてください! 服です! ワンピースとコートです! 数が要りますよー♪」
「「「きゃー♪」」」
フィーリアが軽くチェックしたらしい、戦場が別の戦場となった。デパートのバーゲンセール。黙々と、嬉々と、鬼気と、コボルトから全てを奪い尽くす。
「くっ!」
「サロワナ! 大丈夫か!?」
「サロワナ、下がって。交代よ」
「すまねぇ! でも、そこまで痛くねえんだ! ん? 下着の色が少し落ちた?」
サロワナが読み間違えて、動きが鈍ったところで手を弾かれて初ダメージ。コボルトの剣撃だ、腕が落ちるほどではないと思うが、こっちも手が離せず横目でしか確認できない。
「ポーションだったよな。あ、うめえ。……おぉ!? 痛みが引いてく!」
「ミーディイ、俺らの後ろから一発撃ってくれ!」
「はい! 『肉皮剥ぎ魔術』!」
「ふー。サロワナ、大丈夫ですか?」
エフェロナが駆けつける。いや、抜けないで。心配なの分かるけどな。この辺はサロワナとエフェロナは衝動で動くよな。
「いや、痛かったぞ! でも、何て言うか、一枚上で殴られた感じだ。切れていないからな」
「あら本当に怪我がないわ。それに下着の色が薄くなってるわね。ご主人様はどう思われますか?」
俺は入口を見張っているので動けないが、『肉皮剥ぎ魔術』で範囲内のコボルトが倒れた。若干余裕ができた。
分析。八百万であれば部位破損なんて細かいダメージ計算はされていなかった。純粋にダメージを装備で軽減してHPバーが減るだけだ。真の装備とやらは装着部位以外も守るのだろう。
「分析後だ! 戦線を少し奥へ押しやる! 足元のコボルト武器を拾ったら撤収だ!」
「「「はい!」」」
三層の通路は狭い。二人で横並びだと接触の恐れがあったから、転移魔方陣の部屋は入口で撃退していた。それを奥へと追いやる。『魔力薙ぎ』と『魔力落とし』を全力で放って奥へと進み、スキルディレイは『妖刀刺し』と『正刀弾き』で牽制し繋ぐ。
「ロザンナ!」
「分かりました! 『肉皮剥ぎ魔術』!」
俺も追加で一枚張ってから引く。
「転移魔方陣を起動する。遠距離単体魔法で時間を稼げ! 移動先でもゴブリンに警戒!」
「「「はい!」」」
起動までは数秒。構えていたが、ロザンナの一発が効いて追撃はなかった。起動後、殲滅した筈の二層のゴブリンは少し湧いていたが脅威もなく倒せた。
「ロザンナ。腕の調子は?」
「ああ、済まねぇ主人。怪我は酷くもなくポーション一つで傷も消えたよ。まだ痛みは残ってるけど動かねえってことは無いな」
コボルトの攻撃はそこまで弱くはない。サロワナが貰った一撃は腕にクリーンヒットしていた。肉が削げてもおかしくはなかったと思うが……ふむ、本当に傷跡はない。下着の防御力で軽減、ポーションの回復、どっちも期待以上の働きだな。
「あのさ、心配なのは分かるよ。でもさ、汗臭いし、もういいだろ?」
「ん? ああ、済まん」
傷があったであろう場所を食い入るように見て、執拗に触ってしまった。距離も近すぎたな。意識すれば甘酸っぱい香りが鼻孔を刺激する。フィーリアとは違うな……はっ!?
「ご主人様ぁ。最後のはアウト!」
「私もよ、ダンジョンじゃなきゃ吝かでもねえよ。見るなら宿でたっぷり見せてやるよ」
「いや、誘ってない! フィーリア、信じて!」
ゴブリンは慣れたものでダンジョンの帰路は、俺の弁明とフィーリアの嫉妬とお姉さんからの誘いが響いた。あと、ゴブリンの断末魔な。
その流れで久々の冒険者ギルドの支部へと足を進ませた。